Close Up: リチャード・シフ 「ザ・ホワイトハウス」
March 29, 2007
リチャード・シフ Richard Schiff
【ザ・ホワイトハウス トビー・ジーグラー広報部長役】
1955年5月27日メリーランド州生まれ。ニューヨーク・シティで育った彼は幼い頃から演劇や映画に触れていたそうです。Manhattann Repertory Theaterを創設、芸術監督を務めるほか、アンジェラ・バセットも出演した「アンチゴネー」など、オフブロードウェイで演出家として活動を開始。一方でティム・ロビンスのActors' Gangに参加するなど様々な舞台に俳優としても活動するようになります。テレビシリーズには「NYPDブルー」「LAロー」「シカゴ・ホープ」などに出演。実は「ハイ・インシデント」のリチャード・シフをみてスピルバーグは「ロストワールド」にキャスティングしたとか。これまで40本以上の劇場映画に出演しているベテラン俳優なのです。
リチャード・シフが語るトビー役
「7年も続くと知っていたら、明るいキャラクターにしていたかもしれない」というリチャード・シフ。実は、あの「アメリカン・パイ」のお父さん役などコミカルな演技を得意とするユージン・レヴィもトビー役の最終選考に残っていたのだそうです。(持ち味が真逆な俳優2人がトビー役を争っていたなんて!!) 最高のコミック・タイミングを操るレヴィとは異なり、リチャード・シフは、ダークで複雑なトビーとしてアプローチしたといいます。
想像できたのは、(トビーが感じる)ものすごい重荷、なんだ。彼が肩に感じているのは、世界の将来を左右してしまう、重い重い負荷なんだ。人々の人生に関わることだから、もし自分がトビーのような仕事についたら、自分の行動の結果がどのように人々に影響を及ぼしてしまうのか考えてしまう。そう思うとトビーはやはり複雑なキャラクターになるんだ。それから、もしも広報部長が実は、1対1の会話がひどく苦手で、自分の中にある様々な感情があることを隠そうとして普通の会話をするのがとても苦手な人間だとしたら面白いと思ったんだ。このキャラクターの意外性になると思ってね。
・・・・・・というか、お笑い担当トビーだなんて。
記念すべきエピソード #10「聖なる日」
リチャード・シフはシーズン1のクリスマス・エピソードで、トビーのキャラクターの方向性が決まったと言います。朝鮮戦争で戦った過去をもつホームレスにまつわるエピソードです。
凍死してしまったホームレスが退役軍人だったことを知ったトビーは、葬儀を出してあげようと必死で故人の弟に話かけます。しかし、なかなか伝わらない。そこでトビーはこう言います。
『あなたは私を・・・ご存知ないでしょうが・・
私はつまり・・・顔が利くというかその非常に・・・力があるので手配させて貰いたいんです』
'Listen, you don't understand, I'm a very powerful man.'
この言葉をはっきり言うことをとても居心地悪く感じて、困惑したんだ。それが決定的な瞬間だった。トビーのキャラクターがはっきり分かったんだ、自分に力があることを言葉にすることにひどくきまり悪がる男なんだと。これがきっかけで、その後6年間の方向性が決まったんだ。
こう語るリチャード・シフはシーズン1で見事、エミー賞助演男優賞を受賞しています。
アーロン・ソーキンの脚本をもとに、俳優たちはそれぞれのキャラクターを模索して作り上げていき、そうして出来た俳優が演じるキャラクターを見て、脚本家はまたあらたにドラマを与える。それに対して俳優は演技を通して反応していく。俳優同士も同じです。俳優同士の掛け合いの中から生まれてくるもが、新たにキャラクターの一面として加えられていく。しかもその俳優が、人間的魅力あふれるマーティン・シーンに、演技をこよなく愛するジョン・スペンサー、誰もが認める才能の持ち主アリソン・ジャニー、そして、役者の中の役者といわれるストッカード・チャニングも含まれる、あの「ザ・ホワイトハウス」のメンバーなのです。
脚本家も俳優もお互いにフィードバックし合って、作品がどんどん高められていったのですね。そういった、いろんなレベルでの相乗効果があって、名作「ザ・ホワイトハウス」ができたわけです。俳優もスタッフも関係者も全員が作り手となっている、そんな作品です。見なきゃ損です。
★リチャード・シフの最新出演作は一人芝居
Underneath The Lintel
Dutchess Theatre (イギリス・ロンドン)
小さな町の図書館の司書が、貸し出されてから113年後に返却された一冊の本を発見。返却者を探そうとする。
2001年にニュージャージーで上演したグレン・バーガーの戯曲を5年ぶりに再演。オフブロードウェイでの上演を経てロンドンへ。3月31日まで公演。
★ちなみに
リチャード・シフの奥さまシーラ・ケリーは「ER」シーズン5#109「原点」と#110「春遠からず」に登場する元ジャンキー患者のココや、「LA・ロー」のグウェン・テイラーを演じているあの女優さんです!