【リーヴァイ】 もう、素晴らしいよ。日本には今までもずっと来てみたいと思っていたんだ。本当は去年、番組プロモーションのために来る予定があったんだけど、予定の1週間前に津波があってね。世界中でそう思ったはずだけど、見るのが辛かった。もちろん、日本に居ながらそれを体験し、目の当たりにしたことに比べると比較にもならないんだけど。だから、「人生にはいろいろなことが起きる。だからこそ大切だ。いま日本で番組宣伝をするよりもはるかに大切なことをすべきだから、救援が進んで、物事が落ち着くまでは、時間を置いて次の機会にしよう」という連絡を入れたんだ。だから、今回日本に来られて、受け入れてもらう機会に恵まれたのは嬉しいことだよ。僕の友達も一緒に来日を歓迎されて、本当に楽しい時間を送っている。東京めぐりを楽しんだり、昨日は京都にも行った。新幹線に乗ったし、(京都では)自転車にも乗った。仏閣や社殿も参拝したし、美味しい寿司も食べた。ずっと最高の気分だよ。
【リーヴァイ】 オタクであるないは別として、ごく普通の男がごく普通の単調な日常を過ごしている中で、突然何かが「バーン」と起きて、魔法のような世界と通じてしまうというのは、典型的な物語だと思うよ。それがハリー・ポッターのように実際の魔法なのか、スパイダーマンみたいにクモに噛まれて摩天楼を宙吊りで移動できる特別な力が備わるかの違いなだけで、伝統的な物語の展開だよ。だからこそ共感できる要素なんじゃないかな。スーパーマンに共感するのは難しいよね、だって別の惑星から来ているし、生まれながらに与えられた特別な能力がある。子供は誰でも成長過程の中で、いつかは自分にもある日突然、特別な出来事が起きて、とてつもない冒険をすることになるんだと思っている。だから、「CHUCK/チャック」を特別な番組にしているのはこういうことなんだと思うよ。それから、とてもユニークな作風だ。アクション、コメディ、ドラマ、恋愛、ミステリー、と多くのジャンルが見事に一つに融合している。同じような番組を僕は知らないよ。ほとんどが「ドラマ」や「コメディ」と決まっている中で、僕らの番組では、ちょっとずつ全ての要素を楽しめるんだ。そこがこのシリーズが長続きしている秘訣なんじゃないかな。また、これは日本やブラジルやイタリアのように別の国でも当てはまるし理解されることだから、視聴者がその特別な部分を受け入れてくれているんだと思うよ。
【リーヴァイ】 魅力は僕のおかげだね(笑)。いや冗談だけど、とにかく何をおいてもチャックは正直で純粋な優しい心を持っている。友達と家族をとても大事に思っているし、正しいことをしたいと思っている人だ。僕自身にとって、これは惹かれる要素だったよ。むしろ役を演じる上で、一番惹かれたことで嬉しかったことだったかもしれない。もっとこういうキャラクターが存在するべきだと思う。そういう日常に重きを置くキャラクターがね。僕自身もそういうことを重要視する人間だから、すんなり演じることができたんじゃないかな。そう願いたい。人にはそんな純真な心を持った人間だとは思ってもらえてないかもしれないけど、自分では結構いい奴だと思うよ。
それから彼は、ゲームやマンガ、ポップカルチャーやテクノロジーに夢中になっている今のオタク世代に訴えるものがあると思う。僕も(チャックと)同じだ。だからこうして“オタクの聖地”の日本に来ることができて本当に嬉しいんだ。秋葉原に行って「クラブセガ」で、5時間くらい昔のゲームや、まだ知らない新作ゲームで遊んだよ。名前は分からないけど7階建くらいの電気屋を歩き回ったり、そこには例えばランプが欲しければ照明の売り場があったり、家電の売り場があったりとかね・・・。とにかく感覚器官がパンクしちゃうくらいのものすごい体験だったよ。東京アニメセンターが休館していたのは非常に残念だったけど。だからそういうことが全てチャックを構成している事かな。演じていてとても心地よい要因だよ。
【リーヴァイ】 しゃべってしまっていいものかわかんないな(笑)。共演者だけでなく、撮影、音響、ヘアー&メイク、電気技師、小道具…と、現場ではとにかく番組スタッフのみんなが家族のように一丸となっているんだ。だから、いつでも楽しいんだよ。辺鄙な所での撮影が永遠に長引いてしまったとして、それが暑い日でも寒い日でもなんでも、いつでも楽しく仕事をしているよ。それはおそらく、(僕が)おどけたりふざけたり、踊りたければ踊ってみたり…と、自由に振舞えるからなんだ。僕なんか、よく現場では歌を歌ってることで知られてるくらいさ。時には誰かが一緒に歌いだしてくる時もあるしね。ある時なんて、とくに意味もなくキャストとスタッフ全員で「ゴッド・ブレス・アメリカ」(アメリカ合衆国第二の国家とも言われる歌)を歌いだしちゃったりね。ただしたくてそうする感じだよ。そういう空気のどんちゃん騒ぎが、舞台裏のエピソードになるかな。たくさんジョークを言い合ったり、ゲップしたりオナラしたりね(笑)。まさに家族同士でするようなことさ。僕らはそんな感じなんだ。
【リーヴァイ】 うん、そうだね。カメラの前と後ろに立つというのは大変だったよ。でも素晴らしいスタッフに恵まれ、協力体制が万全で僕を全面的にバックアップしてくれたんだよ。僕が何かを忘れてないかとか、ちゃんと見ていてくれてね。「多分あそこのショットを撮っておいたほうがいいんじゃないかな?」とか言ってくれたり。僕が何か忘れたとかいう事じゃないよ、僕は常にすべて完璧にこなせましたけどね(笑)。
そうだね、難しいこともあったけれど、とてもやりがいを感じたよ。それは全ての物事に通じるよ。ある程度は難易度が高くないと報いを感じられないものだしね。僕個人は役者として、カメラや照明やマイクをどこに置くべきか、どうやってこれをカメラに収めるか、みたいに監督やカメラの視点から物を見たり、面白く話を語ることがあるよ。この何年か、いろんな監督と仕事をして、いろいろ学ぶことがあった。特に「CHUCK/チャック」ではエピソード毎に異なった監督がいたから、僕が監督をする話数の頃までには身になっていたよ。それから良い脚本にも恵まれた。僕が手掛けたエピソードは、大きな秘密が誰かに明かされるという回だったんだ。だからそのエピソードは特別な中身の濃いものになったよ。撮影の最中で、もう辞めてしまおうかと思ったことがあるくらいに大きなストレスを感じたことも何度かあったけど、スタッフの皆が素晴らしかったし、神にも見放されなかったから何とかなったんだ。
【リーヴァイ】 ワーオ、結構さかのぼるね。何が起きたかな・・・。そう、シーズン4は家族や友達関係にいろいろな進展が見られて面白いよ。僕の母親役のリンダ・ハミルトンや、ティモシー・ダルトン扮するアレクシ・ヴォルコフという、今までで一番の悪役が登場するよ。おそらく彼は今まで登場した中で最高の悪役だと思うよ。ティモシーは役者としても人としても本当に素晴らしい。彼を悪役として毎シーズン登場させられないのがとても残念だよ。チャックがルーク・スカイウォーカーだとしたら彼はダース・ベーダーのようで、善と悪のバトルが繰り広げられて楽しいからね。とにかく彼は最高なんだ。(シーズン4は)期待できる面白さだよ。
【リーヴァイ】 オーケー!「CHUCK/チャック」はテレビ史上最もユニークな番組だよ、僕がチャック役を演じているんだから、明らかに偏った意見だけど(笑)。でもアクション、コメディ、ドラマ、ミステリー、恋愛の全てを少しずつ楽しめるんだ。他のどの番組でもこの魅力は見られないよ。チャックは優しい男で、家族や友達、ひいては世界のために頑張りたいと思っている。それから彼にはすごい能力と重大な責任が与えられている。スパイダーマンのようにね。その能力は楽しい能力(頭脳にインプットされた情報と、身体的な能力)だよ。だから、もしあなたが面白いテレビ番組が好きだったら、「CHUCK/チャック」をぜひおすすめするよ。
【リーヴァイ】 そうだな、とりあえずはもう少し日本を見て回って楽しむよ(笑)。今後は、もう少し映画の方に関わりたいな。映画制作は拘束期間が短いから、いろんなキャラクターを演じられるんだ。もちろんチャックを演じることができたのは最高に嬉しかったけど、同じキャラクターを長期間ずっと演じていると、もう少しクリエイティブにすることや、異なったものへの欲望が湧いてくるんだ。たいていアメリカのテレビ制作は1シーズン、9カ月単位で携わるから、別の事が出来るのは3か月間しかないんだ。だから、あまり他のことが出来ないんだよ。だから今後はもう少しあちこちの作品に関わりたい。ある時はインディペンデント映画に出てチャックとは正反対のような役を演じて、そのすぐ後にはそれとはまったく異なったキャラクターを演じてみたり、ね。
それから、僕は「Nerd Machine」という会社をたちあげたんだ。僕はその名の通りNerd=オタクだからね。僕はオタク文化が大好きだ。だから僕ら独自のコンテンツを作り出したり、男受けするようなものを作ったりしているよ。Tシャツとかね、言ってみればオタク向けのブランドのようなものだね。だから(しばらくは)そのプロジェクトに集中するかな。
【2012/6/11】
【リーヴァイ】 疲れることが多くなったよ。かなりキツいスケジュールだからね。別に水路なんかを掘る工事をしているわけじゃなくって、仕事って言ったって、メイクをしてコスプレごっこしているようなものなんだけどね。
【リーヴァイ】 たぶん、スケジュールが一番たいへんなことなんじゃないかと思う。とにかく長時間労働になるからね。1日14時間働くというスケジュールが、9ヶ月間続くわけだから。初日なんか、そのシーズンのスケジュールを見て、「ワオ、僕は、今後9ヶ月間、毎日ここに来て仕事をするんだ」って思っちゃうんだよね。
【ゴメス】 学校の新学期の初日みたいなもんだ。
【リーヴァイ】 まあ、そうだね。
【ゴメス】 「なんだよ、もうー...」って感じだよな。
【リーヴァイ】 でもさ、少なくとも学校だったら3時までに終わるし、週末だって休めるだろう?
【ゴメス】 確かに。
【リーヴァイ】: ただね、わからないけど、そういう大変だと思うこととか、ネガティブな考えは持たないようにしているんだ。だって、結局、一歩下がってよく考えてみると、「僕は夢のような人生をおくっているんだ。僕がやっているようなことをやりたくてしょうがない人は、何百万人も居るじゃないか」って思えるんだよね。だから、常にそういう視点で物事を見続けていくようにしないと、簡単に気持ちが急降下しちゃう気がして。
【リーヴァイ】 まあね。うーん、どうかな。番組の主役を演じるのって...「スパイダーマン」の中でうまいこと言っていたな。「大いなる...」、何だっけ...?
【ゴメス】 力だよ。
【リーヴァイ】 そうだった。「大いなる力には大きな責任が伴う。」そういうことなんだろうなと思うんだ。
【リーヴァイ】 僕らには素晴らしいスタント・コーディネーターがついたんだ。残念ながら、あまり準備時間は無かったんだけどね。なにしろ、休み無しの仕事だからね。アクションは、前日に習ったり、時には撮影当日に習うこともあるよ。僕は、子供の時に演劇やミュージカルにたくさん出演したんだけど、アクション・シーンをダンスのように考えれば、確かにアクションはダンスの振り付けのように思えるね。ただ、アクションでは人を殴るといった、ダンスでは決して出て来ない動きがあるけれど。
【リーヴァイ】 よくわからないけど、少しは反映されているんじゃないかな。基本的には、脚本家が脚本を書いて僕たちはそれを演じるだけなんだけど、たまに自分の考えを脚本家たちに売り込んだりすることはあるよ。
【リーヴァイ】 ああ、もうそれはバイ・モアの店員チャックだよ。それは間違いない。保証付きだ。僕はただ、店頭でi Phoneを賞賛の目で眺めているだけだったりするんだから。「この音声録音機能ってサイコーだよねえ。素晴らしいと思わない?」なんて言いながらね。チャックがスパイの仕事に巻き込まれていろいろな事をするのを観るのは好きだけど、僕自身は戦いに巻き込まれようとするタイプじゃないんだよ。僕はテクノロジーも大好きだし。もちろん、チャックみたいにテクノロジーに強くて、コンピューターとかを直すなんてレベルではないけれど。それでも、基本ソフトの問題を順番に処理していったり、トラブル・シューティングのようなことは出来るよ。たとえば、撮影現場で皆が持っているiPhoneに問題が出た時とかに手助けをしてあげられる。ここはLAだからiPhoneを持っている人が多いんだよね。
【ゴメス】 あと、Xboxね。僕たち、Xboxにはまっているんだよ。
【リーヴァイ】 そうそう、Xbox。僕たちあれにはまっているよね。でも、「おーい、僕のハードドライブがクラッシュしたっちゃよ」なんて時は、「本物の専門家に頼まないと駄目だよ。僕は力になれない」って言うけどね。
【リーヴァイ】 スパイ映画は大好きだよ。お気に入りは...そうだな、やっぱりボンド映画は素晴らしいと思うな。シリーズ全作がすべて素晴らしいとは思えないけど、「007/ゴールデンアイ」は良かったね。「ゴールデンアイ」のピアース・ブロスナンは最高に素晴らしかった。「007/カジノ・ロワイヤル」も良かったね。ダニエル・クレイグはボンドに適役だと思うよ。
【リーヴァイ】 仕事をしていないときは、ビデオゲームで遊んだり友達と出かけたりしているな。(ゴメスを指して)僕は、こいつがすごく羨ましいんだ。彼は、数日間、仕事に空きができることがしょっちゅうあるから。そうすると、彼は「新しい『Mass Effect』やってみた?すごくいいぜ」なんて言うから、僕は「まだやってないよ。僕、ずっとここで仕事してたんだからさ」って。
【ゴメス】 でも、僕がちゃんと「Mass Effect」の話をしてやるよ。
【リーヴァイ】 「話をしてやる」だってさ。まあとにかく、オフの日には友達とピンポンしたりして、フツーの人たちがオフの日にするようなことをしているよ。
【2010年3月】
【シュワルツ】 そうだね・・・でも、彼は依然としてチャックなんだよ。サラとうまくいかなくなったりすると、感情的に"故障"を起こしてしまう。彼は彼女を失ってしまうのではないかと思うんだね。ロマンチックな話になったりすると、肝心な時に突然、必要な情報が頭に浮かばなくなってしまうんだ。だから、彼の"チャックらしさ"がいまだに障害になったりする。そうすると、重要な情報が頭に浮かんでいる時のチャックと、そうではない時のチャックの食い違いが、さらに増大する。ということで、水から上がった魚的な要素をより意識することになるんだと思う。
【マクパートリン】 ファンたちは熱狂的だよ。彼らは、サブウェイのキャンペーンとかのおかげで、自分たちも番組作りに参加しているような気持ちを感じてるんだと思う。「あのね、僕たちは2人ともNBCに陳情する手紙を書いているところなんだよ」と僕のところに言いにきた父娘に会ったことがある。あれは、シーズン2の終わりだったけど「僕たちは本当に君の番組を応援しているんだからね。家族全員で楽しんでいるよ」と言ってくれたんだ。
【シュワルツ】 ファーストフード・チェーンのサブウェイとは、シーズン2の間中、プロダクト・プレイスメントの契約をしていた。僕たちが番組の中でサブウェイのサンドイッチを食べていくらかの報酬を得て、それによって番組の中でもっと爆発のシーンを増やせることになる。つまり僕たちは共生関係にあったというわけだ。去年、「CHUCK/チャック」の将来が危うくなった時があって、番組のファンたちが「『CHUCK』を救え」キャンペーンを展開したんだけど、放映局NBCのお偉方に手紙を送ったり脅しつけたりする代わりに、番組のパワーを実証しようとしたんだ。そこで、ファンたちは、シーズン最後のエピソードが放映される日にサブウェイに行って、番組の中で話題になった5ドルのサンドイッチを食べようと呼びかけた。もし、充分な人数の客が来店したら、サブウェイがファンを代表してNBCに電話をかけて「これは価値ある番組だから、喜んで番組の宣伝をしたい」と言うことになっていた。「『CHUCK』を救え」キャンペーンはそうやってスタートしたんだけど、その情報はツィッターとかフェイスブックでもウイルスのようにどんどん広まっていったんだ。そして、シーズン最後のエピソードの夜、サブウェイに客が押しかけて、売り上げに顕著な急上昇が見られた。NBCの電話は鳴りっぱなしだったそうだよ。売り上げの額とか何人の客が来たかといった数字は明らかにされていないんだけど、サブウェイの販売担当の最高責任者と宣伝部の最高責任者が、番組に代わってNBCに電話するぐらいのインパクトはあったみたいだね。ザックはロンドンでのコミック・コンベンションに出席中だったんだけど、パネル・ディスカッションの参加者全員をロンドンのサブウェイに連れて行って、カウンターの向こう側に回って自ら皆にサンドイッチを作ったんだそうだよ。そんなことがあって、CNNやニューヨークタイムズのような大手メディアが、この「番組を救え」キャンペーンを報道し始め、特定のファンにだけでなくもっと広く知られる番組になっていったんだ。「CHUCK」は、最初からすごく熱狂的なファンが付いているカルト的な番組だったし、コミコン・インターナショナルに行けば、キャストの皆に会おうとして大興奮状態になってしまうファンが5000人も詰めかけたりした。でも、主要メディアに大々的に取り上げられるなんてことは、それまで無かったんだよ。あんなにまで情熱的になったファンたちの様子が報じられることによって、この番組の注目度ががぜん上がったということだね。
【マクパートリン】 おかしなことに、僕はこの役を演じるようになってからだいぶ経つんだけど、街中で「お見事キャプテン」だと気がつかれるようになったのはごく最近のことなんだ。この間も、コーヒーショップに居たら、そういうことがあって、どうにも居心地が悪くて...
【シュワルツ】 良い気分だったんだろう?そう認めちゃえよ。
【マクパートリン】 いや、実際に居心地が悪かったんだよ。僕は、自分の住んでいる小さな郊外の街の世界の方が・・・
【シュワルツ】 ああ、そこでシャツを脱いで上半身裸で居るんだろ?(笑)
【マクパートリン】 そうそう。僕は、上半身裸になって自分の家の中庭でウロウロしていたら、どういうわけか通りがかりの人が僕のことに気づいたんだ。なんてわけ、ないだろうがっ。(笑)とにかく、そのコーヒーショップに居たら、サクラメントからパームスプリングスまで行くという男性数人が入ってきて、「ちょっと待って。君、お見事キャプテン?」なんて言うから、「うん、そうだよ」って言った後で、「でも、声を低くしてくれよ」なんて頼んだりして。(笑)彼らはいったん出て行ったんだけど、自分たちの家族を連れて戻って来て、全員に一緒に写真を撮ってくれと頼まれたんだ。その騒ぎで、それまでは僕が誰かということを全く知らなかったコーヒーショップの人たちが「君、映画に出ているの?」なんて言い出しちゃったものだから、僕は「写真、外で撮れないかな?」なんて逃げ出す羽目になった。そういうのって、なんか変な気持ちになるんだよ。良い悪いじゃなくて、とにかく変な感じがするんだ。
【2010年3月】
【フェダック】 ジョシュと僕は、3~4年前、一緒にお茶を飲んでいた時に「CHUCK/チャック」の最初の数分間のストーリーを思いついた。或る男が機密情報を盗み出し、自分のブラックベリーにダウンロードして、逃走中に間違った相手、チャック・バトウスキーにその情報を送ってしまう。チャックはごくフツーの一般人なんだけどね。このアイディアは、どちらかというと映画向きだったんだけど、ジョシュと話しているうちにTV用のストーリーになっていった。僕たちは、それから、バイ・モアがどんな役割を果たすのか、チャックの家庭生活はどういうものなのかなどを考え出したんだ。この経験は、僕にとってすごく勉強になった。ただアイディアを持っているだけのところから、TV番組を作り出すまでのプロセスが学べたからね。というのは、映画だと基本的には1つのストーリーを語っていくことになるから、話を進めていくにしたがって、ストーリー展開の可能性のドアを1つずつ閉めていくことになる。でも、テレビ番組の場合は、そのドアを開けていくことになるんだ。ストーリー展開のいろいろな可能性を見つけていかなくてはならないからね。第一話を作った後、事はもっと大きくなっていった。この番組に常連のキャストとスタッフが出来たわけだから。その後も「CHUCK/チャック」は常に進化し続けていった。脚本家、そしてプロデューサーの立場からすると、ザックやイヴォンヌ、アダムが演技しているところを観るのはいつだってワクワクする。また、彼らが何に胸を躍らせているのかということを知ることで、ストーリーのヒントを得ることもできる。ということで、第一話の最初の10分ぐらいは、僕たちが考え出したアイディアだったんだけれど、その後は、共同作業的なプロセスになっていったんだ。
【ボールドウィン】
言うまでもなく、3年間続いて、これから4年目に入るこの仕事は、これまで僕がしてきた中で一番長く続いているものになっている。「CHUCK/チャック」の素晴らしいところは、ケイシー役を演じるにあたっては、常にコメディとドラマ、つまり愛情のこもったユーモアと危機一髪的なシチュエーションとが紙一重の差で隣り合っているという難しいがやりがいのある演技に挑戦する機会を与えてくれているということなんだ。この2つの要素の均衡をとるのはなかなか難しいんだよ。僕はコメディを演じるのは大好きだし、ドライなセンスのユーモアも大好きだ。僕自身の素顔も、外見はぶっきらぼうを装っているんだけど中身は違う、みたいな人間なので、毎週、そうやって仕事をする機会があるのはすごく嬉しいんだ。僕には子供が居るんだけど、子供たちには規則を押し付けておきながらも、ウィンクして「いや、その宿題はやらなくてもいいよ」なんて言ったりする。僕自身、なまけものな父親だからね。とにかく、これは長い期間続いてきた仕事で、役のキャラの成長も観ていて非常に興味深いものがあった。だから、僕はいつも次の脚本を楽しみにしているんだ。「さあて、彼は今週は何をやらかすのかな?誰かを撃ったりすることができるのかな?それとも、ただ、モーガンと馬鹿やるだけなのかな?」ってね。
【フェダック】 でも、銃の撃ち合いシーンはいつも不足気味だよね。
【ボールドウィン】 そうだね。でも、これは夜の8時に放映される番組だから、銃の撃ち合いシーンとか流血シーンはあまり入れられないんじゃないの?
【フェダック】 まあね。でも、チャックについて一番大切なことは、彼は絶対に非情なスパイになったりはしないということだと思う。彼には常に人間味が必要なんだ。彼は感情に流されやすい人間だしね。僕たちは、チャックのそういうところを利用して、彼が強くなり過ぎないでドラマとしての均衡が保たれるようにした。そうすることによって、「CHUCK/チャック」は依然として、可笑しいのと同時にアクション・シーンも楽しめるような番組でいられるんだ。チャックは(「24」の)ジャック・バウアーじゃないからね。チャック・バトウスキーは、ジャック・バウアーどころか、ジェームズ・ボンドにすらなれない。彼は、普通の人間である必要があるし、それがこの番組の核心なんだ。チャックは普通の人間が悩むような問題を抱え、彼の姉は「もうちょっとマシな仕事に就けばいいのに」と思い、自分を尊敬してくれる親友が居る。サラだってそういうチャックに恋するんだしね。チャックとサラの恋愛関係も、この番組の重要なポイントになっている。アダムも僕も、爆発シーンとかが大好きだけど、ロマコメ的な要素もこの番組では欠かせないものなんだ。
【フェダック】 僕たちには、特殊効果担当の社内スタッフが居るんだ。彼らのおかげでチャックは世界中どこでも行けるようになった。それって素敵だよね。そんなことを実現させることができるようになるまでは、もしチャックがどこか外国に行くとしたら、僕たちはスパイ番組がやらないようなことをするつもりでいたんだ。スパイ番組では、すぐにパリやらプラハやらに居るシーンになるだろう?でも、僕たちは、飛行機の中のシーンを入れて、「うーん、脚が痛いなあ」なんて言わせたりするつもりだった。そういうのが僕たちにとっては楽しいんだ。だって、外国に行く時って、本当は、目的地に着くまでで勝負が半分決まるようなものだろう。これはスーパー・スパイ・ドラマではなくて、あくまでチャック・バトウスキー・ドラマなんだからね。
【2010年3月】
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