これが初めての来日よ。とても美しい国だと思うわ。人々がとても親切ね。まだあまり見てまわれてないんだけど、今週後半に観光する予定なの。東京の街を散策したり京都にも行ってみたい。とても素敵な所だって聞いているから。
放映が始まったあとは、もう番組はひとり歩きしていたわ。始まった当初は、5年後のいまのこの地点に辿りつくとは考えてもみなかった。それもみんな脚本家たちのおかげよ。番組そのものがスターという番組に携われて本当に幸せよ。私たちはその番組の手助けをする存在という感じで、それはとても楽しいことだったわ。アメリカのテレビ番組に出演することについてだけど、これが私にとっての初出演のアメリカのドラマだから比較する対象が他にないの。でもとても素晴らしい経験になったわ。
出演が決まったあと、パイロット版の撮影でトロントに行ったときに、方言と発音をアメリカ英語に矯正するコーチを付けられたわ。それからFBIエージェントと実際に会う機会が設けられた。でも撮影のための準備はそのくらいだったわね。脚本家がオリビアをどう描こうとしていたかについては、私もこれを理解するまでに時間がかかったんだけど、私よりも経験豊富のジョン(・ノーブル)やジョシュア(・ジャクソン)を観察していて、テレビというのは極めて流動的なメディアだということが分かったの。たとえば舞台や映画の場合は、あらかじめ序盤、中盤、終盤が明確に決まっているわ。プロットの展開を考えて書き留めてそれを必要に応じて演じる。そのやり方よね。でもテレビの場合は、まるで脚本家と俳優がダンスするようなものなの。そのことを最初は知らなかったわ。それが理解できた後は、自分の考えを伝えたりしながらコミュニケーションを取り進め、そして流れが作られてくる。そうすると脚本家のストーリーを私たちが演じることができて、反対に私たちの演技に合わせて脚本を書いてくれるようになるの。そうして素晴らしい関係性ができあがって、キャラクターに深みが増していくのよ。
やり方を確立するまでに数日かかったわ。もう一つの世界のオリビアを演じることになったとき、始めは2人の違いを意識しすぎてしまっていたの。1人のキャラクターを演じている時は、もう1人のキャラクターを意識して考えながら演じていたわ。でもたぶんそれはベストなやり方ではなかったのよね。それに気づいてからは、1人のオリビアの目的を明確に感じながら演じて、もう1人のオリビアも彼女の目的を明確に意識しながら演じるようにした。そうすれば、わざわざ意図しなくても全く別人格のキャラクターが出来上がるということが分かったの。レナード・ニモイになりきる展開があると知った時はやりたくなくて卒倒しそうだったわ(笑)。すぐにジョン(・ノーブル)に「お願いだから助けて」って電話した(笑)。
彼はとっても優しかったの。「うちにおいでよ、紅茶でも入れるからさ」って言ってくれたわ。だから彼の家に行って一緒に紅茶を飲んだの。彼に「私はどうしたらいいかしら??」って相談したわ。ジョンは「大丈夫だよ」ってなだめてくれて、一緒にそのシーンの台本の読み合わせをしたの。声の出し方は練習したわ。だから、セットでそのシーンを演じる時は、彼にそばで見ていて欲しかった。1人でも私の演技に対して「なんじゃこりゃ?バカげてる!」って驚かない人にいて欲しかったからね。だからジョン以外の人は笑うのをこらえていたわ。でも彼(ジョン)は真顔を保ってた、最高よ(笑)。すごく変だったでしょ?
シーズン4はちょっとやりづらかったわ。シーズン4の第1話の台本を読む撮影の1週間前まではあの展開になるとは知らなかったからね。だからジョンと私は膝を突きあわせて、もしピーターが存在していなかった場合、「あの問題はどうなっていただろう」、とか「その場合はこれが変わってしまうね」っていうようなことをいろいろ話し合った。それほど大きな影響を与える出来事だったの。で、そのあと「とにかく人間関係を詰めてみよう」ってことになって、ピーターがいない世界での人間関係について思考をめぐらせてみたわ。そしたら(ピーターがいないことで)ウォルターとオリビアの距離が縮まったし、アストリッドのチーム内での役割ももっと重要なものになることがわかった。だからとにかく私たちは人間関係のほうに集中したわ。
…(よく考えてから)正直に言うとしたら、研究所での作業の部分かしら。なぜなら、キャラクターと一心同体になって演じている時は、あまりにも自然すぎてどんどん流れていくけど、その一方でいつもの(研究所の)シーンを演じる時は、実際の放送の時は効果音とか編集も入るし、いつも研究所にいるようには見えないだろうけど、実は私たちって研究所で時間を過ごすことがかなり多いのよ。だからそこが難しかったところかしら。だって事件とのコネクションを見つけようとして、そこに横たわる私にとってはどうでもいいようなモンスターを調査したり、登場人物たちとはあまり関係のないような実験をしたりするわけだから。でも物語の中で起きる出来事が、主要キャラクターの誰かに関係するものになるにつれ、みんなもっと真剣になり始める感じがしたわ。だからそれが私にとって難しいエピソードになるわね。
というかレナード・ニモイのシーンは、自分のエゴと闘うのが大変だったの(笑)。他のどのシーンよりも屈辱的な思いをしたから封印したわ。
すべてよ。よく人から、この番組から何を学びましたかとか、私にとってどんな存在ですかって聞かれるんだけど、私にとってこの番組は、今この場でもそうであるように、例えばカメラを持つスタッフやマイクを持つ音声スタッフ、フレームの外側で終日見守っていてくれる人たちと築いた家族のような関係があったことよ。私はそれが無くなったのが一番寂しいわ。いつも思い出すのは現場にいた人たちのことよ。それは視聴者がこの番組から得る経験とは違うけれど、そこがポイントよ。だって番組は自分たちのために作っているんじゃなく、視聴者のために作っているんだから。だから視聴者には特別なものを受け取って欲しい。当然私とは異なった特別な経験をね。
シーズン3のすべてよ。私のお気に入りなの。全部(笑)。あの二つの世界が大好きだったわ。パラレル・ワールドの登場するエピソードはいつも演じるのが楽しかった。
だいたい、新しいエピソードの場合は撮影の数日前に台本が手渡されるの。だからそんなに先を知らされてなかった。でもシーズン5(ファイナル・シーズン)が決まったときは、私たちみんながこれで最後のシーズンってことが分かっていたわ。プロデューサーや脚本家たちが一堂に会してどう終わらせたいかという話をしていたし、彼ら自身もそれが最後になることを知っていたし、その後私たちにも教えてくれたしね。だからその時だけが、先の展開を知っていた唯一の機会だったわね。
…(沈黙のあとで)あれがオリビアの一番エモーショナルだったシーズンかと言えばそうじゃない気がするの。あれは異なったオリビアって感じがする。ファイナル・シーズンの冒頭の彼女は「(起きた事態に対して)冗談でしょ。本当にここまできちゃったわけね?」って感じで疲れ果てていた印象よ。そして終盤にかけては、ずんずん突き進んで行ってエンディングに至ったという感じだった。明らかにストーリーが始まったところからは、どれだけってくらいかけ離れたところに行ったけど。あのオリビアは明らかに違うオリビアになっていたわ。彼女は自分を守るために、感情と切り離していた感じすらする。
彼はとても面白い人なの。いまだに会って食事したりする。今はオーストラリアに帰国しているけど、数か月前にロサンゼルスにいた時も、一緒に夕食を食べたわ。その時も一晩中笑い転げていたし。とにかく楽しい人なの。一緒にいて面白いだけじゃなく、私も彼のことは俳優としても人としてもすごく尊敬しているの。例えば彼は一度たりとも不機嫌なまま現場に来ることはしなかったわ。それから常に人に何かを与えようとしていた。彼は自分の仕事を心から愛しているの。彼の仕事ぶりを見ていると、伝染しそうな楽しい空気を放っているのがわかる。私たちもそれに伝染するし。彼が年配だからっていうのもあるんだろうけど、あんな風に自信に満ちた人が何にも旺盛に、幸せそうに取り組む姿を見せてくれると頭が下がる。とにかく彼は仕事が大好きなのよ。そういう人が先輩にいるのはとてもいいことよ。見習いたくなる。
ジョシュは最高よ。深夜3時の撮影現場には欠かせない存在だわ。彼がいれば誰もウトウトできないから(笑)。声が超デカイの(笑)。
女優というのは贅沢な職業で、この役とか、この仕事というのを決めてやるわけではなく、いろんなことに挑戦できるので、今、決めかねているところなの。ようやく長年出演し続けてきたシリーズを撮り終えたところで・・・。これまでは撮影地のバンクーバーに住んでいて、ついこの前LAに拠点を移したところなので、今はちょっと休憩してる感じです。オリビア役がなかなか抜けないので、今ようやく抜こうとしているところ。ちょっと落ち着いてから次の役を考えたいと思います。
僕はいろいろなジャンルをかじるのが好きなんだ。子供の頃は「トワイライト・ゾーン」に夢中だったけど、あの番組はホラーの要素を持つこともあるサスペンス・ドラマで、時々SFの要素が入り込むだけであって、僕はあの番組をSF作品だとは考えていない。だいたい、一口でSFと言っても、カバーする作品の範囲ってすごく広いだろう?それから、最近は日常生活がSFじみてきていると思う。ニュースなんか見ていると「フリンジ」で考えているストーリーより奇妙で変な出来事が起きていたりして、「はあああ?」なんて思うことがあるよ。(笑)それもけっこう頻繁に経験するんだよね。昔はSFと言えば完全に想像や予想の世界だったけれど、今では日常のリアリティの中に溶け込んでいる感がある。だから、僕が興味を持っているのも、人間が宇宙船に乗って人類未踏の地を訪ねるといったストーリーではなくて、デヴィッド・クローネンバーグやマイケル・クライトン、メアリー・シェリー(「フランケンシュタイン」の作者)といった作家たちの作品のように、現実から少しだけ逸脱したような世界、「もしかしたら、これって起こりえるかも」と思えるような世界なんだよ。僕にとって「フリンジ」はそういうドラマなんだ。正気の沙汰ではないような話だったりはするけれど、よく考えてみれば、完全なる空想の世界ではなくて、奇妙にも起こりえると思えるような話なんだよね。
僕の好きな番組は、その番組でしか観られない何かを持っている番組なんだ。ドラマとしてのトーンとか語り口とかが独特な番組とかね。「LOST」や「エイリアス」、それに「フェリシティの青春」もそうだと思うけど、「フリンジ」では「オー・マイ・ゴッド、これってすごく面白いじゃないか。こんな話が出来る他のドラマなんてあるかな」って思う話がとても多いんだ。もちろん、SFジャンルのドラマは沢山あるけれど、ピーターとウォルターのビショップ父子の関係や彼らに絡むオリヴィアの役割なんかは、回を追うごとに実に面白くなっていくんだよね。登場人物たちの履歴を知れば知るほど面白くなっていく、そういうドラマなんだ。
「ああ、こういうのは面白い設定だな」なんて思いつく時もあれば、登場人物や或る状況についてのアイディアが閃くけれどそれに関するストーリーは全く思い浮かばないなんてこともある。普通は、その2つが組み合わさってストーリーが構成されていくんだけど。インスピレーション自体は、普通は一緒にはしないような事・物が一緒になることを思いついて、ライターとして「ああ、このアイディアは面白い話になり得るな」って考える。そういうのって、皆も思いついたりするんだけど、ラッキーにも僕たちはそれをTVや映画の脚本といった具体的な形にできるわけなんだ。そして、もし自分が面白いと思ったら、それは多分、他の人たちにとっても面白く思える話だという可能性が高いんじゃないかな。
優先順位をつけるのはなかなか大変だね。それぞれのプロジェクトは、くるくる回っている皿みたいなもので、それが4枚とか5枚とかあるんだけど、僕はその皿が全部好きなんだ。皿は回り続けるけど、時々ふらつくので、そのたびに勢いをつけてやらなければいけない。でも、僕はそれを一人でやっているわけではなくて、僕よりも仕事が上手いぐらいの人たちに手伝ってもらって、最良のやり方で仕事をこなしている。僕は、2つ以上の作品を一緒に書き始めたりすることはないから、1つの作品ではストーリーをどのようにしようかと模索している一方で、別の作品では編集や音楽の作業をする。そうやって、いろいろな作業をしていくのは、なかなか楽しいよ。
いやいや、僕は問題を作り出している方だよ。(笑)問題を作り出しては居なくなったりしてね。(笑)「ふむ、うまくいかなかったね」なんて言って退室するんだよ。(笑)まあ、冗談はさておいて…僕は、すごく才能ある人々と一緒に仕事をしているんだ。第1話の脚本はアレックス・カーツマンとロベルト・オーチーと僕とで書いたんだけど、僕は『スター・トレック』を監督していたから、第1話は監督できなかった。でも、監督(アレックス・グレイヴス)は素晴らしい仕事をしたと思う。「FRINGE/フリンジ」を作るにあたっては、どのような軌道で薦めていくのかを決め、その後は(脚本と製作総指揮を担当した)ジェフ・ピンクナーとジョエル・ワイマンと一緒に仕事をしていった。彼ら、それにアキヴァ・ゴールズマンは本当に才能ある人たちだから、問題を解決するのに僕なんかは必要とされないんだよ。仕事やその段階にもよるけれど、毎日話すこともあれば何週間も話さないこともある。メールは頻繁に出し合うけどね。そうやって連絡を取り合って、相談したり確認したりするんだ。ジェフなんかは、「エイリアス」の頃から仕事していて、簡単なやり取りですぐに理解し合えるので相談も短時間で済む。新作ドラマの「Undercovers」というドラマでは、ジョシュ・ライムスと一緒に脚本を書いたんだけど、ジョシュとは「フェリシティの青春」でずっと一緒に仕事していたから、弟みたいな存在だし。つまり、僕にとっては、自分がよく知っている家族みたいな人たちのチームを育てていくことが成功の秘訣なんじゃないかと思う。彼らは、仕事をしていくうえで僕なんか必要としていない。むしろ僕の方が彼らを必要としているぐらいなんだよ。
僕は、どの作品もそれぞれ違う理由で誇りに思っている。どの作品も家族の一員みたいな気がして。例えば、「フェリシティの青春では、マット・リーヴスと2人で、大学に入学する若い女の子のストーリーについて話し合ったこととか、キャスティングが決まりだした時のこととかが心に残っている。2人とも初めての経験で、本当に特別な時期だったな。「FRINGE/フリンジ」の時は、コミコン(サンディエゴで毎年開かれる漫画や大衆文化のコンベンション)で、アレックスとロベルトと一緒に第1話の脚本を書いたことや、ラッキーにも今出演してくれているキャストを揃えられたこと、クレイジーなアイディアを考え出してそれが実際に放映された時、あまりにゾッとするような映像になっていて笑っちゃったこととかが思い出される。僕は、自分の作品全てに対し、製作に参加できてラッキーだったと思えるんだ。だから、誇りに思っている作品を1本だけ挙げろというのは難しいな。「自分の子供たちの中で、どの子が一番好きですか」って聞かれるようなものだからね。
2010年3月
J.H.ワイマン:えらく変人じゃないとダメだね。君には想像できないぐらい。(笑)
バーク:僕たちはずっと前から変人だったからね。このドラマは、変人であることの副産物のようなものなんだよ。
ワイマン:この番組は確かに変わっているけれど、SFでもある。そして、SFというのは人間を描く機会のあるドラマなんだ。例えば、アイザック・アシモフなんかは最もSFっぽくて変わった作品を書いているけれど、それらは同時に人間がすごく良く描けている作品でもある。
そういうレベルで共感を持ってもらいたいし。もちろん、僕たちは視聴者たちを怖がらせるのを楽しんでいるけどね。夢からヒントを得ることも多いよ。
バーク:そう。「昨日は変な夢見たんだよ」なんてことで、変な事のヒントがたくさん出てくる。そういうことをするのって、すごく楽しいんだ。
「変な事」っていうのも相対的な定義だよね。僕はいろいろな事に興味を持っていて、暇な時にはインターネットで面白い話を探したりするんだけど、「フリンジ」のネタになる、ならないに関わらず、変わった話があるとお互いにメールで「あのクレイジーな話読んだ?この話は読んだ?」なんて情報交換する。それから、昔はCNNとかBBCでは一般的なニュースが報道されて、クレイジーな話はタブロイドが報道するというようになっていた。でも、今はその2つの境界は曖昧になりつつあると思う。というのは、技術工学や生物学の分野で、型破りなニュースを聞いたりするから。例えば、バイオテクノロジーの分野で癌に対する新しい治療法が出てきたというのを聞いたんだけど、癌だって1970年の時点での捉え方と現在の捉え方は全然違うと思う。僕たちが生きている間は無理だと思うけれど、子供たちの時代になったら癌なんて罹らないものになっていると良いなと思う。現在では不可能のように思える事は、時が経ってそれが「ノーマル」だと見なされるまでは、「変な事」だったりするんだよね。
バーク:キャスティングは、いつだってその役に最適な俳優を見つけるということに尽きる。「LOST」でも「エイリアス」でも僕らのキャスティングを手伝ってくれたエイプリル・ウェブスターが、世界中にアンテナを張って探してくれたので、外国の俳優たちもオーディションを受けに来たんだ。(オリビア役の)アナ(・トーヴ)もその1人だった。彼女はオーストラリアでは結構知られていたんだけど、アメリカではほとんど知られていなかった。僕らは彼女をテープで観たんだけど、彼女には何か特別なものがあるし、とても頭が良いと思った。アナはちょうどその時、オーストラリアの荒野へのキャンプ旅行に出かけていたから、彼女のエージェントは彼女に何度も連絡を取ろうとしたんじゃないかな。彼女の携帯には「早く帰ってきて。あなたはアメリカに行かなきゃいけないから」というメッセージが 47回も入っていたそうだよ。それで彼女はオーディションに来たわけだけれど、彼女は素晴らしかった。アナは本当に頭が良くて、演技をしている時にも思考していることがよく判るんだ。彼女のオリビアはもはや演技というものではなく、役そのものになりきっていたね。
ジョン・ノーブルも同じことだったな。僕たちは、主に彼を「ロード・オブ・ザ・リング」で知っていたわけだけれど、彼もキャリアは長いんだよね。ウォルター役は、たくさんの人たちが来て演じてみたので、すごくたくさんのバージョンのウォルターを見た。その中で、ウォルターを最も活き活きと演じたのはジョンが最初だった。ジョンは、ウォルターを演じるたびに皆を呆れるほど興奮させたんだ。
ジョシュ(ジョシュア)・ジャクソンは、僕たちにとってはずっと「ドーソンズ・クリーク」の青年だったから、オーディションに来た時に「大人になったじゃないか」って思ったよ。昔、知っていた人と再会したら別人のようになっていたというような再発見的な感じがした。ジョシュが偉いと思ったのは、過去に出演経験が豊富な俳優はオーディションをしようとしないのが普通なのに、何回もオーディションしてくれた時だね。役者根性があると思ったよ。あと、ピーターには軽薄な部分があって、それを出せる俳優じゃなきゃいけなかったんだけど、ジョシュはそれまでの作品では可笑しい面を見せる役が無かったのに彼本人はすごく可笑しい人間だということがわかったんだ。ところが、実際にピーターを演じてもらったら全然、可笑しくない。それもそのはず、最初の脚本にはジョシュの可笑しさを活かせるコメディの要素が全く無かったんだよ。そこで、僕たちは脚本を書き直し、改めてジョシュに演じてもらって、ピーター役のキャスティングは即決した。
この3人にからむ重要な役、オリビアの上司ブロイルズに「THE WIRE/ザ・ワイヤー」のランス・レディックをキャストしたのは、僕たちが「ザ・ワイヤー」に取りつかれているぐらいの大ファンだから。もしすごく暇だったら「フリンジ」のDVDの解説を聞いてみてもらえると、僕たちが「ザ・ワイヤー」はいかに素晴らしかったかということばかり話しているのが判るよ。(笑)
面白いことに、僕の友人でJ.J.にそれまで会ったことが無かった人たちが彼に会うと「へえ、変なの。君たち話し方がそっくりだよ」なんて言われることがあるんだ。J.J.だけじゃなくて、グレッグ・グランバーグとかラリー・フォング、ジェームズ・グレイなんかも、20年来の友達だ。それぐらい長く付き合っていると、ものの見方とか好みも似てくる。だから、J.J. がどういうものが好きなのか、彼がどのように応えるかということも判るようになる。この業界で仕事をしていて一番ラッキーだと思うのは、A.僕たちに、これまでしてきたような事をさせてくれるほどクレイジーな人間が居るということと、B.しかもそういう事を友達と一緒に出来ることの2点だね。本当にラッキーだと思うよ。
2010年3月
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