LAW & ORDER

犯罪サスペンスの最高峰!メインシリーズがついに登場!

特集

【解説】アメリカの陪審員制と日本の裁判員制について

  両制度とも市民の常識を反映させようとするものです。アメリカの陪審員は、審理の状況を横から見ていて、有罪か無罪かを判断するだけですが、陪審員だけで評議し決めなければなりません。その評決までの過程に裁判官の助けはありません。法廷で直接見聞きしたことだけに基づいて判断し、自ら証拠を調べたりはできません。評決については、陪審員の全員一致を原則としています。
 日本の裁判員は法律の専門家の裁判官と一緒に裁判の全過程に関わるもので、法壇に裁判官と並んで着席します。有罪か無罪かだけでなく、量刑についても判断します。また、自ら証拠書類の取り調べをしたり、法廷で証人・被告人に質問することもできます。そういう意味では裁判官と全く同じです。評決は裁判員と裁判官の過半数の賛成で可能です。一票の価値は裁判官と同じですが、被告人に不利な判断の場合は、少なくとも裁判官一人を含むことが必要です。裁判員はプロの裁判官の指導を受けられるので心理的な負担が少なく、裁判官も裁判員の暴走をコントロールできるので、安心というわけです。陪審員の場合は、裁判官は一切関与しませんから、どのような評決になるのか予測できないことがありますが、根底に市民に対する信頼があるのです。

【解説】アメリカの警察と検察の仕事

 アメリカでも捜査の主体は警察です。警察は捜査した事件を検察官に送致します。検察官は、送致を受けた事件を振るいにかけ、事件処理の方針を決め、「公訴提起」と「公判維持」が仕事です。基本的には日本と同じです。
 ただアメリカでは、訴追する場合には、逮捕後48時間以内に裁判所に訴追状を提出し、また被疑者を裁判所に連行して保釈条件の設定をしなければなりません。これらの手続きは検察官の仕事です。この「訴追」とは、起訴ではありません。訴追の後、「予備審問」を経て起訴になりますが、この一連の手続きは、法廷で検察官が関与して行われます。この間に、検察官と弁護人との間で司法取引が行われて有罪ではあっても起訴に至らないこともあります。なお、「予備審問」の代わりに「大陪審」といって起訴するかどうかだけを決める陪審もあります。
 この正式起訴に至るまでの、「訴追」から「予備審問(大陪審)」の手続きは日本にはありません。これらの手続きは、証拠の保全や開示の重要なチャンスとなるのですが、主役は当然検察官です。このようにアメリカでは早い段階から法廷で検察官が関与して事件を振るいにかけながら起訴に向けて進んでいきます。
 警察の仕事と検察の仕事は、日米で基本的には変わらないのですが、そのやり方は全く違っています。それは、日米で裁判のあり方が全く違っているからです。アメリカでは法廷での証言がすべてです。日本では、捜査段階での供述(調書)が決定的でした。捜査は有罪の証拠集めが目的です。法廷での証言が決定的なアメリカでは、公判を担当する検察官が早い段階から自ら事件に関与するのは当然なのです。

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監修:太田宏美(弁護士、法律社会問題評論家)