LAW & ORDER

犯罪サスペンスの最高峰!メインシリーズがついに登場!

特集

LAW & ORDER 法律&警察関連用語マメ知識

1.「アメリカでの逮捕からの拘留期限」

最大限48時間です。この間に検察官に事件を送致する必要があります。日本も原則同じですが、大きな違いは、日本の場合は、検察官が取調べをするために原則として引き続き勾留が認められ、保釈が認められるのは起訴後であるということです。アメリカでは、検察官に事件送致する段階で、起訴するかどうかを決め、起訴相当とした場合、原則保釈されるということです。

2.「アメリカの検察組織」

連邦、州、郡、市がそれぞれの地域の裁判所の体制に対応した、独自の検察組織を持っています。検察組織は、この地方検事の下、多くの検事補、捜査官、事務官の大所帯で出来ています。トップの「地方検事※」は4年ごとに選挙で選ばれ、注目度の高い事件を好んで扱うようですが、大抵の事件は検事補らが扱っています。小さい事件は検事補一人で担当しますが、複数の検事補がチームを組んで事件処理に当たることも多いようです。
※ちなみに、連邦、州、郡、市それぞれの検察組織で最高の権限を握るトップの人間を「検事」と言います。「検事」は各地方に1人しかおりません。それ以外の検察官は「検事補」と言います。

3.「アメリカにおける裁判所の構成について
※「連邦裁判所」と「州の裁判所」との違い」

アメリカは連邦制の国なので、連邦にも各州にもそれぞれ裁判所があります。

連邦の裁判所も各州の裁判所も、それぞれ一審から二審(控訴審)、三審(最高裁)まであります。連邦裁判所は決められた事件についてしか管轄はありません。大半の事件は州裁判所だけに管轄があります。

州をわたって関係するような事項については、連邦裁判所にも管轄がありますが、各州の裁判所にも管轄があり、このように競合する場合は、どちらでも起こせます。なお、連邦裁判所だけの専属管轄もあります。

4.「保釈/保釈金とは
※判事の保釈金額決定のポイント」

アメリカでは保釈は権利と捉えられているので、原則として、すべての事件について保釈条件が決められます。保釈金額は、一般的には、日本に比べて低いのではないかということです。また、納付についても、全額現金で納める場合もあれば、10%だけでよい場合とか、全額ではあるがパーソナル・ボンドと呼ばれる個人保証書で良い場合など弾力的に運用されているようです。保釈については、⑴犯罪の重大性、⑵公共の安全、⑶前科の有無・内容・危険性,⑷公判への出頭可能性を考慮するものとされていますが、金額の決定に大きな影響を及ぼすのは被告人の身上、特に前科関係と公判への出頭可能性です。

5.「大陪審」

起訴するかどうかをだけを決める陪審のことです。陪審員は検察官が提出する証拠を検討して、起訴するに足りる相当な理由があるかどかを決めます。大陪審とよばれるのは、通常の公判陪審(トライアル陪審)の陪審員の数は12名であるのに対し、大陪審の陪審員の数は16~23名と多いからです。通常のトライアル陪審は、小陪審とよばれることもあります。

6.「罪状認否」

訴追から予備審問(大陪審)の手続きを経て、正式起訴されたとしても、直ぐに公判手続きに進むわけではありません。最初にふるい分けをします。それが罪状認否です。有罪・不抗争(争わない)の答弁をしたときは直ちに有罪判決となり、無罪答弁のときに初めて公判になります。

7.「第1級殺人・第2級殺人・故殺・非故殺などの量刑の種類」

日本であれば、殺人罪一本ですが、アメリカでは謀殺と故殺があります。

謀殺はさらに第1級と第2級に分類されます。第1級は周到な準備に基づく場合や強盗・強姦などの重罪の手段として行われた場合などで、情状酌量は認められず死刑または終身刑しかありません。第2級は、一般的な事前の故意による殺人です。

故殺は、日本人には一番難しく、日本の殺人と過失致死の双方が含まれています。故殺のうち日本の殺人になるものと第2級との違いは、被害者側の挑発に基づくとか、犯行当時の心理状態に問題があるなど、被告人側に情状酌量すべきような事情がある場合は故殺になります。

非故殺というのは、日本でいえば過失致死で、殺意が全くない場合です。

いわゆる殺人罪が、アメリカで第1級、第2級、故殺と細分化されるのは、陪審制の下では、事実認定は陪審員の役割ですが、量刑を行うのは裁判官ですから、裁判官に対してどこまで裁量が許されるのかを明確にするためなのです(なお、英米では裁判官より陪審員が信用されているのです)。すなわち、第1級の場合は情状酌量は一切許されないので、裁判官には一切裁量の余地はありません。故殺は、被告人のために、どのような有利な判断をしてもいいので、裁判官の裁量は、無限に近いのです。第2級はその中間というわけです。

8.「証拠開示・証拠排除」

アメリカでは、「証拠の事前開示」が厳しく要求されていますが、これは陪審制と関係があります。陪審員の前で集中して審理を行います。陪審員は一般市民で法律の素人です。事前にどのような証拠があるのか知らされず、突然、証拠や証人が出てくると、相手方としては準備ができていないので、有効な反対尋問はできないし、そもそもうろたえてしまい、陪審員に何か隠しているのではないかなど不利な印象を与えてしまいます。また、アメリカでは、真実発見のために裁判所が中心になって審理するというシステムはとらず、当事者主義といって、当事者を対立させ争わせるという形で有罪・無罪を明らかにするというシステムです。公正な裁判は、双方が十分に準備をして戦いの場に臨めるような制度を担保することによって保障させると考えられています。法廷に提出予定の証拠や証人は事前に相手方に開示すべきであり、それが出来なかったときは、「証拠排除」されることもあります。なお、正当な理由があるときは(開示の時間がなかったなど)証拠採用はされますが、防御のための配慮がなされることになっています。

9.「合理的疑い」

有罪の認定には、100%確実である必要はありませんが、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要とされています。抽象的な可能性としては疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には,有罪認定を可能とする趣旨とされています。単に「相当と認められる」では十分でないと言われています。ほぼ確実という感じでしょうか。

10.「スリーストライクス」

重罪の前科が2回以上ある者が3度目の有罪判決を受けた場合には、その3度目の罪の種類を問わず(仮に軽い刑であったとしても)終身刑になるというものです。常習者や累犯者について、微罪でも終身刑にすることにより(犯罪者が刑務所に一生閉じ込められるので)、重罪を未然に防止することができることになります。この法律は、アメリカ国内の治安の著しい改善に威力があったと認められています。

11.「ダブルジョパディー」

「二重処罰の禁止」や「一事不再理の法理」といわれるもので、同じ犯罪で二度裁かれることはないということです。一度無罪になった罪については、二度を罪をとわれることがないという意味で使われることが多いようです。

12.「心神喪失
  ※どのような状態で判断されるのか、また無罪になりえるのか」

心神喪失というのは、自分の行為が法律的に許されるものかどうかを判断したり、あるいはその判断にしたがって行動する能力が完全に失われた状態をいいます。専門家の鑑定が重要な判断材料になります。自分が何をしているかわからないような者に対しては責任を追及することはできないので、心神喪失と認定されると無罪になります。

13.「供述書」

供述する者が、自らの言い分等を書面にしたものです。伝聞証拠の例外として裁判において証拠として認められることがあります。

14.「証言録取」

正式な裁判開始前に宣誓のうえ証言したものを記録した文書のことを証言録取書と言います。相手方当事者も出席して反対尋問も行われます。法廷外の手続きで行われるものです。

監修:太田宏美(弁護士、法律社会問題評論家)