デヴィッド・ドゥカヴニー主演・製作により、全米を震撼させた無差別殺人事件の真相に迫るドラマ「アクエリアス 刑事サム・ホディアック」。マンソン・ファミリーの台頭や、ブラックパンサー党による黒人解放など、実際に起きた事件を架空のキャラクターを交えながらサスペンスフルに綴る物語だ。ドゥカヴニー演じる主人公サム・ホディアックが追うのは、"悪の象徴"として世界に名を轟かすチャールズ・マンソン。日本語吹替版で、チャールズ・マンソン役を演じる綱島郷太郎さん、マンソンに傾倒していく16歳の少女・エマを演じる遠藤綾さんにインタビュー。役柄の印象や見どころを聞いた。
綱島郷太郎さん:こういう人物を演じられるというのは、役者としてうれしかったですね。事件の話を聞けば聞くほど、そこまでひどい人かとちょっと恐ろしくなってきたのですが、自分では絶対にやらないことですからね!やりがいのある役です。ドラマは彼が犯罪を犯す前から始まり、序盤では不思議な狂気をあまり感じません。これからもっとおかしくなっていくんでしょうね(苦笑)。どう変化していくのかも演じがいがありますので、自分としてはなるべく役柄を作りすぎないようにしています。
遠藤綾さん:お父さんもお母さんも自分を束縛するし、16歳と多感な時期だけにそれがエマにとってはいやなわけで。そんなときに運悪く、チャーリーに出会ってしまう。自分を引っ張ってくれる人というか、「今だ!」と家から出るためには、彼女としてはすごくタイミングがよかったんでしょうね。チャーリーとしては狂気をまだそれほど出していないにしても、16歳の女の子にしたら、チャーリーは大人だし、カリスマ性もあるし、影響されたいという気持ちがあったんだと思います。「チャーリーに嫌われたくない、捨てられたくない」というエマそのままに、チャーリーにすがるような気持ちを大事に演じています。
遠藤綾さん:(アフレコ収録前に)家で作品を見ているときはもちろん、まだ英語しか入っていませんので、「こんな悪そうな人を日本語でやるとしたら、どういう声になるんだろう」ととても興味があったんです。なので、初めて綱島さんが演じた第一声を聞いとき、「うわ!そうそう!」と思って(笑)!チャーリーのつかみどころがない感じが声に出ていたので、すごいなと思いました。綱島さんがもともとこういう喋り方の方なのかなと思ってしまうくらい!
綱島郷太郎さん:あはは!遠藤さんのエマはすごく透き通っていますよね。エマのいきがるんだけど、いきがりきれていない感じがすごくいいなぁと思って。今回の現場は、全体的に平均年齢が若いと思います。みんなとても真面目にやっているけれど、若い人が頑張ってふざけたり、挑戦したりしている現場です。挑戦している感じが楽しいし、いいなと思います。作品はバイオレンスですけれど、現場の雰囲気はバイオレンスとは真逆ですね。
綱島郷太郎さん:主人公の周辺で起こっていることって、ベトナム戦争やニクソン大統領の動きなどとても大きな流れで。そういったことも描写されているので、歴史の流れがあるからこそ、チャーリーがいるんだということがわかるようになっています。僕には、アメリカ全体の時代の流れの中で、チャーリーのような人が生まれてしまったんだというふうに見えました。
遠藤綾さん:本作の前に収録していた「カリフォルニケーション」も、ドゥカヴニーが主演・製作をしていた作品です。そちらでは私のお父さん役をドゥカヴニーが演じていました。声も今回と同じく小杉(十郎太)さんが演じてらしたので、小杉さんと「今度のドゥカヴニーは角刈りだね」なんていう話もしていて(笑)。「カリフォルニケーション」のドゥカヴニーは、女性をとっかえひっかえするようなチャラチャラしたお父さんだったんです。今回はまたガラっと違う役柄で、それもまた新鮮で面白かったです。
綱島郷太郎さん:先が読めないという面白さもあるので、役柄を固定しないようにしています。もちろん実際にあったことなので、チャーリーの結末がどうなるかはわかっているのですが、そこまでをドラマとしてどのように描くのかはわからないので、僕にとってもそれは楽しみですね。
遠藤綾さん:確かに今まで自分が見てきたものでも、刑事ドラマって1話完結のものが多いですね。登場人物の家庭環境をはじめ、いろいろなことが少しずつわかっていくというのはすごく面白いと思います。私の演じるエマ自身も、一日一日、自分がどのような状況に置かれていくのかがわからないわけで。長い話数をかけて、それを作り上げていけるというのはとてもやりがいがあります。
綱島郷太郎さん:「Hawaii Five-0」は明るい作品なので、どこか気楽な雰囲気で演じることができるんです。今回はそういうわけにいかない。かなり集中しないと、自分でこういうキャラクターにしたいと思ったものを演じることができないんです。真剣にやりすぎていて、ちょっと恥ずかしくなることがあるくらい(笑)。チャーリーって、ちょっとクサい決めセリフのようなことをいうときがあって。言ったあと、カットがかかるまでの間にスタジオがシーンとしていると「今のダメだったんじゃないか!?」と思ったりする恥ずかしさはあります(笑)。
遠藤綾さん:「あれが転機だったのか」というのは、その場ではわからなかったりするんですよね。ただ、このお仕事は日々オーディションみたいなものなので、「あれが合格しなかったから、この作品に出会えたんだ』ということがよくあるんです。なので、やらせていただく作品は、すべて運命というか、そのときの自分に必要なものだったんだなと思っています。
綱島郷太郎さん:すごくいいお話をされているところに、ちょっとつまらない話になってしまうんですけれど...。今回のお話をいただいたときに、奥さんと一緒にいたんです。「どういう役なの?」と聞かれて、「実在する人なんだよ」と言いながら、チャールズ・マンソンについて調べ始めて。すると調べていくうちに、ロマン・ポランスキーの妊娠8か月の妻を襲撃したことが書いてあって。なんとそのとき、うちの奥さんもちょうど妊娠8か月だったんです...。なんの因果なんでしょうね。なので奥さんには、落ち着いた頃合いをみて、ドラマを見てほしいです(苦笑)。