以前吹替の現場で仕事をさせていただいた時、かなりてんてこ舞いでものすごく難しかったという感想だったので、オファーをいただいた時、主人公でいっぱいしゃべるだろうし、シリーズなので長いですし私に務まるかなと不安でした。ただ、私は海外ドラマを見るのがすごく好きなので、その世界の一員になれるんだと思うとすごくうれしかったです。
ミカエラは正義感が強くて、芯のしっかりした女性。でも過去にいろいろあり、心に傷を負っているという役どころなんです。ミカエラは、全編通してあんまり笑ったり、はしゃいだりといったコミカルなシーンがなく、まじめな女性だなという感想でした。そしてまじめな中にも、ミカエラは警察官なので仕事上での使命があったり、自分にふりかかるいろんな不思議な出来事に、立ち向かっていくという強さがある。
一方では、飛行機に乗っただけなのにNYに到着したら5年半の時が経っていて、自分が結婚しようとしていた恋人と自分の親友が結婚していたというように、プライベートではうまくいかなかったり...。そういう女性としての葛藤などもあって、強い女性なんだけど傷ついているところもあるといった完全じゃないところが、すごく彼女の魅力だなと思いました 。
本当に気を付けるところばかりでした。ミカエラは芯のしっかりした女性。そして演じているメリッサ・ロクスバーグさんはすごく声のトーンが低めで、しっかり地に足がついているような話し方なんです。吹替の現場では監督から、もっと低くと指示があったので、なるべくトーンを落として演じていました。でも低くてもメリッサさんが演じているミカエラが話をしているように聞こえないといけないと思って、低いながらもナチュラルにというのを意識しながら演じたんですが、すごく難しかったです。
低い声の役もアニメやゲームなどで演じたことはあったんですが、アニメの場合はもっとデフォルメして演じることができるので。例えばちょっと悪い役だったり、闇が深いキャラクターなどの場合、おどろおどろしく話したりいろいろ誇張して、低い声の中でもかなり波を持たせることができたんです。ドラマの場合は人が演じているので、あまりデフォルメしすぎてしまうとなんだか合わないような気がしたんですよね。だから、低いけどナチュラルというのは初挑戦というか、人に吹替を当てるからこその難しさだなと思いました。
セリフ量がすごく多いですね。アニメに比べて、ドラマの1話の時間も長いですし、セリフをたくさん話している。常に会話、常に会話というようなシーンも多いので、断然セリフ量が多い。アニメの1話と海外ドラマの1話では、全然違うなと思いました
ミカエラは828便に乗っていたことで、いろいろ不思議なことが身の回りで起きるようになってしまう。言葉が聞こえるようになったり。でも彼女は警察官として、そういった出来事も今の私に与えられた使命だといった考えができるくらい、とても真っすぐで常にそのことに関して行動していくという強さや正義感があるんです。私自身も仕事がとても大好きだし、与えられた仕事があったら、プライベートな時間も仕事のことを考えてしまいます。頭の中、仕事が90%くらい占めているので。そういうところは、ミカエラと私の仕事対する姿勢が結構、似ているかなと思います。
私がドラマの吹替現場が不慣れなこともあって、休憩時間もVTRを見ながらチェックしたりとか台本を読み返したり、結構内にこもってしまっていたんです。ずっと一人で集中していて、あんまり誰とも会話していなかったんです。それでも他の吹替キャストの皆さんは、やさしい方々ばかりだったので、私がそうやって自分一人で考え事をしているからこそ、あまり話かけてこないように気を使ってくださったり。収録の話数が進んで、私の緊張とかいろいろな不安が解消されてきたころになってやっと、他のキャストの皆さんとお話ができるようになりました。それを考えると最初の頃は、私に対して「今集中しているんだな」と、キャストの皆さんに気を使わせてしまったんだなと反省がありますね。シーズン1の収録を終えてみて、すごく良い空気の現場だったなと思います。打ち上げは皆さんとても盛り上がりましたよ。
「MANIFEST/マニフェスト」は毎回毎回、謎だったり不思議だったり、吹替を演じている私たちも毎回その謎が気になって、次回どうなっていくか気になって引き込まれて行きました。1話を観たら絶対続きが見たくなる。そんな作品なので、ぜひ皆さん一緒に謎を解き明かしましょう。楽しみに待っていてください。