カテゴリ: THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~

THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~エル・ファニング(エカチェリーナ役) オフィシャルインタビュー

あなたはこのドラマで、プロデューサーも務めていらっしゃいますね。「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」のエカチェリーナの物語の、どんなところに惹かれたのでしょうか?

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今作では、幸運にもプロデューサーになることができました。こういった大きなシリーズ作品をプロデュースするのは始めてです。脚本のトニー・マクナマラにエカチェリーナ役を打診されたとき、プロデュースの方もやってみてはどうかと尋ねてくださったんです。製作の舞台裏にまわって、(米配信の)Huluへのプレゼンにも参加しました。すごく新鮮で楽しかったです。まるで始めての場所に飛び込んで、今までにない新しい形で自分の能力を発揮する、劇中のエカチェリーナのような気持ちでしたね。だからある意味、撮影当時の私とエカチェリーナには共通点がたくさんあったんです。
エカチェリーナの物語はすごく魅力的で、トニーは彼女の物語を違った形で伝えています。エカチェリーナにはコメディ的な部分も取り入れていて、地に足のついた、共感しやすいキャラクターになっています。歴史もののドラマって、時々ちょっと浮世離れしたような感じがありますからね。でも「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」は現代的で、そういうところが気に入っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歴史ドラマというより、現代劇風ということでしょうか?

そうですね。歴史に基づいてはいますが、そこまで史実にこだわっていないんです。(史実を)膨らませるような自由さも時々ありました。とは言っても、大部分は当時のリアリティに基づいています。リサーチを重ねていたトニーが、当時実際にあった面白いことを見つけてくるんです。たとえば、妊娠検査として小麦にオシッコをかけるんですって。当時は本当にそんなことをやってたんですよ!ドラマのトーンとも合うから、トニーはそういったエピソードも少し取り入れています。
私達が目指したのは、私達ならではのエカチェリーナを作るんだということです。私達は彼女のことを知らないわけですからね。肖像画や絵はあっても、当時の彼女が見られる記録もないわけです。だから私は、彼女がいかに先駆者的存在だったか、象徴的なフェミニストだったかという要素をしっかりとらえて、それを自分の中に落とし込んで、皆さんが見たことのないような全く新しいキャラクターを作り出そうとしています。楽しかったですし、共感もできました。

 

 

 

 

 

このドラマはストーリーやクレイジーなキャラクターたちなど、他の歴史ドラマとは違う面白さがありますね。「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」にも似た女性エンパワメントの要素があると思いますが、見進めるうちに、このドラマは唯一無二だと気づきました。今作が他のドラマと違ってユニークに感じられるのは何故ですか?

きっと、作風のおかげだと思います。トニーが書く世界ってすごく新しくて。時代設定も、華麗なる逃避行って感じ。ゴージャスなセットや衣装もあって、観ていてとても甘美で美しい。それでいて、フェミニストの物語としてきちんと芯がある。エカチェリーナの物語はとても若くて繊細なところから出発して、全10エピソードを通じて、この男社会でどんどん成長していきます。自分の存在と意見を主張していくようになります。TV画面で皆さんに観て頂けることは、とても美しく、楽しいことだと思います。
私達、ずっと笑いっぱなしで。共演者のみなさん、すごく素敵なんです。とても仲良しになりましし、映像からも仲良しぶりが伝わってくるかも。登場人物はみんなキャラが立っていて、それぞれにストーリーがあって具体的。きっと皆さんも大好きになると思います。ドラマでは、そういうところが現れているはずです。

 

 

 

 

 

ご自分のアイデアがドラマに活かされているところはありますか?
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いろいろあります。トニーは書いたものに厳しいんです。アドリブとか、台詞をアレンジするみたいなことは許されませんでした。そういう点では、脚本をしっかり遵守しています。でもトニーにも不得手はありまして。彼は若い女の子じゃないんです。そこはお互い協力しあいました。トニーに色々聞かれて、自分の意見をエカチェリーナに取り入れているんです。エカチェリーナは美しくて、自信家なところもありながら、若干傲慢なんですよね。私は彼女のそんなところが好きだし、演じていて楽しい。トニーとは、そういう演技のバランスを話していました。
特にピョートル役ニコラス・ホルトとの共演では、2人の関係性を重視して、別々の次元にいるように見せないようにしています。すごく複雑な関係性を描きたくて。ニック(ニコラス・ホルト)とは、一緒にトニーとたくさん話しに行きました。トニーは、6〜8ページほどある素晴らしいシーンを書いてくれて、覚えきれないほどでしたけど、お互いに楽しみましたね。ニックのようなスパーリングパートナーがいるのは楽しいですし、このドラマにはそういうものが欲しかったんです。

 

 

 

 

 

 

今作ではセックスが重要で、セックスシーン次第で作風が変わってくるものだったと思います。難しかったことはありますか?

現実のエカチェリーナの人生でも、セックスは重要だったでしょう。彼女は性的に自由で、恋人が何人もいました。そういう点では、彼女の自由ぶりは当時にしては進んでいたと思います。もちそん、そういったところもドラマに取り入れようとしています。他にも淫らな要素はあります。特にニックが演じるピョートルのキャラクターですね。今作ではインティマシー・コーディネーター※ともご一緒しました。とても助けになりましたし、私も今までそういった方とご一緒したことはありませんでした。彼女はその場面で振り付けをしてくださって、誰もが快適にいられるようにしてくださったので、とても安心できる環境でした。そのおかげで、恥ずかしいこともできたし、してもいいんだという気持ちになれました。私にはニックもいましたし、愛人レフ役のセバスチャン(セバスチャン・デ・ソウザ)もいたので恵まれていました。このふたつのシナリオでは、エカチェリーナにとってのセックスは全くの別物。ピョートルとのセックスは、基本的に拒絶的で、ロマンスなんてあったもんじゃない。でもレフとのセックスは、彼のキャラクターがとても愛があるから、美しいシーンにしたかった。だからコーディネーターの方と、そういった二面性を演出しました。お互いにとても安心してできましたし、恥ずかしがっている場合でもなかった。それが一番ですね。

※インティマシー・コーディネーター(intimacy coordinator):役者がセックスシーン、ベッドシーンの撮影に安心して取り組めるよう、現場に参加する専門家・コーディネーターのこと。

 

 

 

 

 

常に史実に基づいているわけではないキャラクターをどう演じましたか?史実から変えたところと、変えなかったところはありますか?

第1話の撮影を始める本当に最初の頃は、「リサーチした方がいいのかな?歴史の本を読んでおくべきかな?」と思って、ある程度はやりました。そうしたらトニーに「本はもういいから、今回はもうちょっと楽しくやるよ。エカチェリーナの人生の何から何までを知っていなくてもいいんだよ」と言われて。それで気付いたんです。私達がつくる脚本やストーリーこそ、演技の設計図になるんだって。というわけで、史実にそこまで忠実というわけではないんです。ひとつ学んだのは、彼女がジェットコースターを発明したということ。あまり知られてないですよね?でも調べていたら、すごく彼女っぽいなぁって。ジェットコースターを発明するなんて、きっと面白い女性だったんだろうな、カッコいいなって。夫を失脚させたりとか、そういうことも含めてね。

当時は啓蒙時代だったので、彼女は女性の教育や科学といった素晴らしいことをロシアに持ち込んでいるんです。そういったこともドラマでは触れられています。でも、それと同時に、古臭くて共感しにくいようなものは作りたくなかった。歴史ものって、時々芝居がかっていて、浮世離れしているようなときがありますよね。少なくとも私は、史実はブレンドしながらも、楽しいものを作りたかったんです。

 

 

 

 

 

 

エカチェリーナには逸話がたくさんあって、事実もあれば疑わしいものもあります。何でも、馬とセックスをしたことで死んでしまったとか。脚本を読む前から、そんな彼女のことを知っていたのですか?

悲しいですよね。彼女のこと、ロシアの女帝のことは知っていましたし、有名な噂も知っていました。馬にまつわる噂もね。酷い話だと思います。彼女が国のためにどれだけのことを成し遂げたのか。それなのに彼女はそういった噂で貶められていて......。彼女について語り継ぐべきものは、そんな噂話じゃないはず。私も彼女についてたくさん学びましたし、ドラマではそんな噂についても、面白い形で言及します。でも、もっと大事なことがありますから。今回のドラマでは彼女が輝いていて嬉しいですし、彼女にはそれが相応しいと思います!

 

 

 

 

 

 

このドラマのコメディ要素といえば、あなたとニコラス・ホルトの絡み合いや繋がりですよね。あの化学反応、おふたりはどのように築いたのでしょう?

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私達、ずっと昔に映画で共演しているんですよ。私は14歳で、彼は21歳の頃だったかな(2014年の『マッド・ガンズ』)。そこでも私達は結婚していたんですけど、すごく奇妙で複雑な婚約でした。だから、私達の演技歴としては、「ダメな結婚」は経験済みなんです!

もともとお互いのことは知っていたわけですが、今作で再会できて、とても良い友人になれました。仕事の面でも、現場で彼と一緒になれて嬉しかった。子役として育ったところとか、私達は似たもの同士だからかな。彼もすごく小さい頃から(役者を)やっていますし、私もそう。お互い分かり合えるんですよね。それから、2人ともふざけ合うのも好きですし。そういうところは、ちょっとエカチェリーナとピョートルっぽいかも。
彼が演じるピョートルはとても愉快でカリスマ性があって、実際は邪悪なキャラクターなんですけど、あのニックが演じるから好きになっちゃう。それって本当は難しいことなんですけど、彼は楽々とやっちゃうんですよね。そんな風に尊敬できる人がいると、自分もその人のためにベストを尽くさなきゃって気になる。お互いに切磋琢磨できて、ほんとに完ぺきな組み合わせでした。一緒に台詞たっぷりの長尺シーンに挑むのも大好きなんです。

 

 

 

 

 

 

豪華な衣装が素晴らしかったです。お気に入りはどれですか?

沢山あるので、選ぶのが難しいですね。衣装部門の皆さんがすごく努力されていて、刺繍から何まで全部手作りなんですよ。試着に何時間もかけるんです。細かいところまでこだわって、どのシルエットが綺麗に見えるかを考えるんです。布地もすごく綺麗。

選ぶとしたら、ピンクの衣装かな。最後に出てくる、明るいピンクのものです。エカチェリーナの女性らしさや若さがよく表れていると思う。それにすごく特別な衣装なんです。あの日のエカチェリーナは、「これから夫を殺して21歳の誕生日を迎える」という時だったから、それでエレクトリック・ピンクを着ているんです。良いチョイスですよね。私も着ていて嬉しかった。シーズン1を通じて、キャサリンのカラー・パレットが変化していくんですよ。今取り掛かっているシーズン2では、どんなドレスになるんでしょう?大変そうですが、もっと良いものをつくらなきゃ。

 

 

 

 

 

ピョートルのことを、楽しくて好きになってしまうキャラクターだとおっしゃいましたね。でも第1話を観るかぎりでは、なんて嫌な奴なんだと大嫌いになってしまいました(笑)。脚本や現場で始めてピョートルを知ったときはどんな印象でしたか?

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ですよね(笑)。特にパイロット版で最初に(脚本を)読んだときは、「こんなに不愉快で邪悪な人間がいるものなのか」と思いましたよ。恐ろしい人だし、周りの人を脅かして面白がるという、残酷な人。でも、そんなところも第1話だけで、ニックが皮を剥いてくれています。そこで出てきた芯の部分のピョートルって、「大人こども(a man-child)」なんだと思う。オモチャで遊びたい、ママが大好きな小さな男の子。ママのことが恋しいんですよね。エカチェリーナはそんなピョートルの芯の部分を哀れんでいるんだと思います。彼女は彼のことを「ああ可愛そうに」って目で見ますよね。なので私も、ピョートルのことはそんな風に見ています。確かに酷いことをする人ですけど、思っているより賢いんですよ。実は物分りも良い人なんです。今後どうなっていくかが楽しみですね。もしかしたら良い味方になってくれるかも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたはキャリアの中で、「CSI : 科学捜査班」や「クリミナル・マインド」といったドラマにゲスト出演されていますが、ドラマ主演を務めるのは今作が始めてですね。映画と比べて、どういったプロセスでしたか?

確かに(映画とは)違いがあって、シリーズものは長く時間がかかります。しばらくかけて取り組むものなんです。それでも物事は速いペースで動いていくんです。だから常に忙しなくて、それがずっと続く感じですね。 私の役へのアプローチの仕方は、映画でもドラマでも全部一緒です。そこの部分で違いを感じることはありません。かかる時間は違いますけど、演じることは演じることとして変わらないですね。

 

 

 

 

 

 

 

このドラマのタイトルは「THE GREAT」ですが、今作に参加してGreatだったことは何ですか?

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うーん、いっぱいありますね。私にとって、エカチェリーナの進む旅路がすごく誇らしく思います。第10話のラストシーンを撮った時、彼女が女性としてどれほど成長したか、そんな彼女にどれほど成りきれたかということが、一番誇らしくて、Greatでした。でも、まだまだ彼女の進む道は続きます。彼女には、まだ成し遂げていないことが沢山ある。それからこのドラマの美しいところは、「運命を全うする」というテーマ。心に強く感じたことをやり遂げる、というものです。エカチェリーナの真の運命は、ロシアを寛容と民主主義の地にするということ。美しいメッセージだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の皆さんへメッセージをお願いします。

笑って泣いて、何かを学んでいただけたら。このドラマはコメディですが、そこにはリスクもありました。すごくドラマチックなところもあります。そんなところを楽しんで見ていただけたら嬉しいです。1話1時間ですから、全部で10時間ということになりますが、あっという間ですよ。