日本では子育てに積極的に参加する男性たちは“イクメン”と称されて、育児に苦労する母親たちからありがたがられているが、アメリカではフルタイムで働く母親が珍しくない事などもあって、男性の育児参加はごく当たり前の事として受け取られている。
アメリカ人男性は、妊娠した妻に同伴して産婦人科の検診を受けたり出産に立ち会ったりして、子供の誕生時からの育児参加を目指し、子供が生まれれば育児休暇を取って積極的に面倒をみようとする。子供が学齢期に達すると、放課後や週末に行われる地域のスポーツ活動でコーチを務めたり、試合を観戦して応援の声をかける。バレエやフィギュアスケートなど、女の子の方が圧倒的に多い習い事でも、土曜日のクラスでは父親が送り迎えしている事も少なくない。
アメリカの父親たちは子供の学業や進学にも熱心に関与する。学期初めに催されて教師が授業の概要を説明するバック・トゥ・スクール・ナイトや、子供たちの学習成果などが披露されるオープンハウスと呼ばれる学校訪問の行事は平日の夕方から開催されるが、仕事を早めに切り上げて参加しているらしい父親の姿がよく見られる。教育熱心な家庭だと、大学進学の際の受験選択のために前もって大学を訪問する場合が多いが、キャンパス見学ツアーや説明会では積極的に質問する父親も多い。
アメリカのテレビドラマを見ても、「ザ・ソプラノズ」のトニー(ジェームズ・ギャンドルフィーニ)や「ビリオンズ」のボビー・アクセルロッド(ダミアン・ルイス)、「アフェア 情事の行方」のノア(ドミニク・ウエスト)などなど、朝の登校時に車から降りる子供と父親が言葉を交わしたり、夕飯の席で父親が子供相手に説教したり、子供が幼い場合だと寝かしつけのための本を読んだりするシーンなどが出てきて、アメリカの父親たちの日常が垣間見える。逆に、仕事オンリーで育児のための時間を割く努力すらしない父親キャラが登場すると、妻から三行半を突きつけられたりする展開になったりする。平日は夜遅くまで残業するけれど、週末は「寝て曜日」を決め込むような父親は、アメリカの家庭では生き残っていけないようである。
【荻原順子 2019/01/29】