肉体派俳優シェマー・ムーア主演のポリスアクション・ドラマシリーズ「S.W.A.T.」。映画並みの迫力あるアクションシーンが、目の肥えた世界中のTVファンを虜にする人気シリーズだ。本国米では今秋からのシーズン3の放送が決定している。
ロサンゼルス市警の特殊武装戦術部隊S.W.A.T.の活躍を描く、同シリーズの製作総指揮者の一人が、ショーン・ライアン。TVドラマファンにはおなじみの名前だろう、「ザ・シールド~ルール無用の警察バッジ~」 で腐敗した刑事の姿を描き、高い評価を得たクリエーターだ。
「S.W.A.T.」にも出演中、そして「ザ・シールド~ルール無用の警察バッジ~」 が出世作となったのが、ケニー・ジョンソン。「S.W.A.T.」ではホンドー(シェマー・ムーア)のチームの一員、ドミニク・ルカを演じている。ツンツンとした髪形、そして何よりマッチョな体型がトレードマークだ。「S.W.A.T.」シーズン1の撮影の終了後、ケニーが米TVのインタビューに答えている。
これまでも数々の作品で刑事役を演じてきたケニーだが、今回の「S.W.A.T.」はまた別レベルの挑戦となったらしい。
「30パウンド(13.6キログラム)の防備服を着て、走り回らなくちゃいけないのさ!」とケニー。犯罪や暴動など危険の最前線で一般市民を守る、S.W.A.T.隊員。ヒーローたちを演じるのに、フェイクは許されない。衣装だってリアルなのだ。
「元サンディエゴS.W.A.T.のオティーが、テクニカルアドバイザーとして現場に入っている。彼は全てが正確に描かれるように、僕らと常に行動を共にしているんだ」
「とても疲れてしまうこともある」と愚痴も少々。タフな現場には慣れっこのはずが、撮影休みがとびきり嬉しい。
「撮影時間は、一日13時間。大部分が防備服を着たままだ。ほとんどが野外の撮影になる。気温が45度の中、撮影したこともある。ただただ汗を流すしかない状況だった。僕らもたくさんのエキストラと一緒に撮影をしていたんだけど、中には本物のS.W.A.T.隊員もいたし、勲章をもらってるような元隊員もいた。彼らは休憩中騒ぐこともなく、じっと休んでいた。とにかく毅然としているんだ。だから僕らもおしゃべりは止めたよ。彼のためにしっかりしなきゃと思ったんだ。僕らはベストを尽くしてS.W.A.T.を演じている。S.W.A.T.の代表としてTVに出ている気持ちだ」
命がけの任務を全うしてきた男たちは防備服をつけた瞬間にオンモードになるらしい、俳優ではないから目の前のカメラは関係ない。そんな彼らに刺激を受け、ケニーたち俳優も身を引き締めるのだ。
「僕らは狂ったみたいにトレーニングしている。チームの皆は超がつくほど負けず嫌いだし、運動バカなんだ。リナ・エスコ(クリス役)、僕、アレックス・ラッセル(ジム・ストリート)は同じジム仲間だよ。撮影を離れても体を鍛えているし、ちょっとした空き時間、ランチタイムにも鍛えている。それもこれも、全ては役のため、S.W.A.T.の一員らしく見せたいからなんだ」
徹底したトレーニングはS.W.A.T.へのリスペクト、そして俳優としてのプライド。そんな過酷な撮影が続く中、一服の清涼剤のような時間も味わった。実娘アンジェリカちゃんとの共演だ。
「アンジェリカは最高だよ。5歳から演技を始めて、もういくつかの映画で僕と共演しているんだ。今回がTV初共演になる」
アンジェリカちゃんとの共演はシーズン1第18話「パトロール」。その中でアンジェリカちゃんは失読症の少女を演じている。実はケニー自身が20代前半まで失読症に苦しんだ経験があり、今回の脚本の段階で、少女を文字が読み書きできない設定にすることを提案したのだという。
「それで娘をキャストしてもらえたんだ。すごく嬉しかったけど、同時に緊張したよ。すごく貴重な経験になった。ストーリーもリアルに感じてもらえたと思う。現実問題として、5人に一人は失語症かそれに近い症状を持っているのだからね。とても良かったんじゃないかな」
ケニーの言葉通り、「S.W.A.T.」では現代の米国社会が抱える問題が織り込まれている。迫力あるアクションシーンに興奮する一方で、心に何かがひっかかれば、それについて考えてもらいたい。「S.W.A.T.」での俳優たちの体づくりは、リアルに踏み込む第一歩に過ぎないのだ。
<「minnesota.cbslocal.com」 2018年5月17日>