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海外ドラマおすすめコラム vol.34  「スタートレック」はこれからでも追いつける! 話題の新章「スタートレック ディスカバリー」

 

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9月のスーパー!ドラマTVの目玉は「スタートレック ディスカバリー」第1話&第2話先行プレミア放送だ。
 
宇宙SFドラマの名作「スタートレック」シリーズは第5作「~エンタープライズ」まで作られたが近年、2009年の「スター・トレック」からの映画版をきっかけに再注目され、「~エンタープライズ」の12年後に作られた第6作が本作。
 
舞台はドラマ版第1作「宇宙大作戦」の約10年前の2256年(異なる世界だが2009年の映画版第1作とほぼ同じ)。これが実に絶妙で、若い世代などドラマ版をまったく知らない人に“「スタートレック」はこれからでも追いつける”と自分のようなおっさんまで力説できる、最高の時代に始まるのがうれしい。
 
また、これまでの各ドラマ版と異なる趣向が多く、現在の世界中のドラマ好きが入りやすい仕様。まず主人公マイケル(ソネクア・マーティン=グリーン)はサーガ史上初のアフリカ系女性で、舞台となる宇宙船(本作ではU.S.S.ディスカバリーNCC-1031)の船長でないのも異色。だから遠い未来であっても、ダイバーシティ(ある宇宙船の船長はアジア出身女優ミシェル・ヨーが演じる)、#MeToo運動、リーマン・ショック以降の格差社会など、社会背景は21世紀と大きく変わらず、主人公が女性ということもあり、SFを苦手としてきた女性にぜひトライしてほしい。
 
物語は見てのお楽しみとして、SFならではの壮大なビジュアルにもご注目を。第1話で撮影監督を務めたギレルモ・ナヴァロは、ギレルモ・デル・トロなど同じメキシコ系の監督たちと組み、デル・トロ監督の「パンズ・ラビリンス」でアカデミー賞の撮影賞を受賞(付け加えるなら本作を企画した1人、ブライアン・フラーが先がけて放った「ハンニバル」に監督として参加)。そんな名手を迎えた本作、視覚面も、現在映画館で上映されている各大作映画と比べて遜色ないハイレベル。
 
映画好きも海外ドラマ好きも、本作を見ない理由はない。
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2019/8/30】
 
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