インターネットが普及、SNSの広がりで誰しもが意見を発することのできる現代社会。炎上やフェイクニュースなど社会に対してネガティブな影響もある一方で、心を救われるような良き影響を誰かに与えることもある。「スタートレック ディスカバリー」の主役マイケル・バーナム中佐を演じる、女優ソネクア・マーティン=グリーンも、ネットで目にした言葉に影響されたという。
「ネットで見かけた誰かの言葉を今も覚えているの。それは『スタートレックは君に未来を向かせる。もし君が(『スタートレック』を見て)未来を向くことがなかったとしたら、それはスタートレックの根本の精神に反することになる』というものよ」
たいていの人々にとって、未来よりも将来、むしろ老後の方が気になる。そんな現実から未来に考えを飛ばしてくれるのが、「スタートレック」シリーズだ。その未来は、夢や希望や憧れといったポジティブな概念と結びつくだろう。だからソネクアはこの言葉の重要性をかみしめている。そして「とても難しいミッションである」とも。
「私たちの番組『スタートレック ディスカバリー』と他の『スタートレック』シリーズとの違いを指摘する人がたくさんいるわ。だけど、未来に目を向けていく中で、その時代時代で変わってゆくのは当然じゃないかしら?」「スタートレック」はTVシリーズだけで6本もの番組が製作されている。最初の「宇宙大作戦」が放送されたのは、1966年だ。50年以上を経て、当時と現代の人々の未来観が変わるのはやむなしだろう。そして表現は変われど、未来へ目を向かせるという「スタートレック」の根本的なミッションは変わらない。
ソネクアは、SFというジャンルだからこそ、そのミッションは人々の心に届きやすいと考えている。「サイエンス・フィクション(SF)のストーリーで描かれるテーマや真実は、その状況が劇的であるがために、人々の心に容易に届くことができるの。SFだと、そこに込められたメッセージを読み取ってもらい易いのよ」
つまりは説教臭くならないということだろうか。シリーズを貫く、その「スタートレック」哲学が宇宙という未知なるフィルターを通して人々の心に侵入する。
ソネクアの雄弁な言葉は、マイケル・バーナム中佐として「スタートレック」精神が注入された証(あかし)。「スタートレック」が脈々とつないできた“未来”、ソネクアがその案内人を引き受けることに、今はなんの迷いもない。
<「al.com」 8月12日>