「ベター・コール・ソウル」主演のボブ・オデンカークが、米ラジオのインタビューに答えた。演じるジミー・マッギル役についての思いを語っている。
米で2015年スタートの「
ベター・コール・ソウル」は、2008~2013年に放送された「ブレイキング・バッド」のスピンオフ・シリーズ。平凡な弁護士が、犯罪まがいの仕事も引き受ける怪しい弁護士ソウル・グッドマンに変わってゆくまでを描く「ブレイキング・バッド」以前の前日譚ドラマだ。
前日譚だから、始まりは平凡な(=冴えない)弁護士ジミー・マッギルが主人公。そこから徐々に怪しく、かつ魅力的に変貌してゆく。名優として定評のあるボブでさえ、演じるには挑戦しがいのある難役だったろう。
「ラッキーだったのは、『ブレイキング・バッド』でのソウル・グッドマン、弁護士としての彼しか、僕らは知らなかったということだね。作り上げられたインチキの性格しか知らなかったんだ。だから、一番難しかったのは彼の弁護士人生の最初の部分、まだ純粋で自我が芽生えていない頃を演じなきゃいけなかったこと。今は、シーズンを重ねて、彼も自我が強くなってきた。演じるのが楽になってきたよ」
ボブは「ブレイキング・バッド」でソウル・グッドマンを演じていたのだから、その役作りはできている。けれど「ベター・コール・ソウル」では180度近く人格の異なるジミー・マッギルを演じなければならなかった。「ブレイキング・バッド」では描かれなかった彼自身のプライベートを含め、新しいキャラクターを一から作り上げたわけだ。「ベター・コール・ソウル」の視聴者はゴールとなる「ブレイキング・バッド」のソウル・グッドマンに成るまでの道のりを追いかけているのだ。
名優は、そんな難役をカリスマティックなキャラクターに仕上げることに成功している。「脚本のおかげだよ」と謙遜。成功のポイントは二つあるという。
「一つは『ブレイキング・バッド』に参加した時、僕はもう50歳だった。『ベター・コール・ソウル』のジミー・マッギルが若すぎては話にならなかったろう」脚本チームはジミー・マッギルの年齢をきちんと設定してストーリーを進めた。若ければ若いほど、純粋なキャラクターは作りやすいが、それでは「ブレイキング・バッド」の世界が歪んでしまう。
「あともう一つは、ソウル・グッドマンを人たらしな男に仕上げたことだよね。彼は『ブレイキング・バッド』のどのキャラクターともユニークな関係を築いていた。ある意味、あの世界観の中では、一服の清涼剤ともいえる存在さ」
通常ならば、ソウル・グッドマンのようなキャラクターはズルい男、詐欺師まがいな男として共感するには難しいはず。ところが、脚本家チームは彼を人好きのする男とした。彼を決して落ちぶれて悪党側に傾いてしまった男には仕立てなかったのである。
視聴者から、そして批評家からも絶賛の「ベター・コール・ソウル」は次のシーズン6で終わりを迎える。ジミー・マッギルからソウル・グッドマンへの転換人生、スピンオフをどう閉めくくるのか。ボブは「彼のいいところを見たいもんだね」と、自身の役の最後に花を持たせたいと願っている。
<「npr.org」 4月18日>