昨年の全米映画俳優組合ストの影響で遅れたが、製作が再開されたシーズン21は今年2月12日より全米放送がスタート。ストの途中、9月25日にダッキー役のデヴィッド・マッカラムが90歳で亡くなったのは残念だが、トニー役のマイケル・ウェザリーのゲスト出演がファンには朗報だ。
確かシーズン1の第1話、“NCIS? CSIじゃなくて?”という台詞があったが、本作がシーズン20を突破した現在、もうそれは成立しないだろう。
ロングランの理由はいくつもあるが、チームのリーダー、ギブス役のマーク・ハーモンの魅力は大きい。
名誉あるハイズマン賞に輝いた名アメフト選手トムを父親に持つハーモンは、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のアメフト部でクォーターバックとして活躍。ギブスのリーダーシップに活かせたはずだ。大学卒業後、広告や法律の仕事をしようと考えたハーモンだが、姉クリステン(その夫は歌手リッキー・ネルソンで人気バンドのネルソンは甥)の影響で俳優に。
しかし人気が出るまでには時間がかかった。もっとも筆者は、日本ではTBSが火曜夜10時枠で放送した「フラミンゴ・ロード」を見てハンサムだなぁと感心。その後、「こちらブルームーン探偵社」でブルース・ウィリスの恋のライバルを演じた時も、相変わらずハーモンはカッコいいと思った。
そして映画『プレシディオの男たち』でショーン・コネリーやメグ・ライアンと、映画『君がいた夏』でジョディ・フォスターと共演して人気上昇し、「リーズナブル・ダウト 静かなる検事記録」「シカゴ・ホープ」を経て、この「NCIS ネイビー犯罪捜査班」でスーパースターになった。1996年には自宅の近所で燃えていた車から運転手を救ったという逸話も。
シーズン14の時点で65歳のハーモン、端正なルックスに加え、遅咲きならでは人間味があるのが素晴らしい。
【海外ドラマ評論家 池田敏 2024/2/29】
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。