エレメンタリー ホームズ & ワトソン in NY： インタビュー

モーランドは、そばで付き添ってくれるような親ではなかったんだと思う。そういう彼をシャーロックはかなり恨んできた。だからたぶん、拒絶してしまうんだろうね。

関係を修復すれば父親が離れてくれると期待してる。父親がまとわりついてくるのは、そのせいだと思ってるんだ。だからそういう手段で父親を追い払おうとしてる。

ジョン・ノーブルは本当に紳士的で愛すべき人だし、落ちついたプロの俳優だよ。

実際のニュースを題材にしたストーリーが盛り込まれているものは好きだね。スノーデン事件のようなエピソードもあったりして、面白いよ。

本当に楽しいゲストが大勢出演してくれる。ジェレミー・ボブとの共演は楽しかった。彼はFBIの捜査官を演じたんだ。1つか2つのシーンで共演したと思うんだけど、テイト・ドノヴァンも楽しかった。それからアリア・アタラ－には驚かされたよ。才能ある若い俳優に出会えた。テレビ番組の端役をやってた自分の新人時代を思い出せた。将来性のあるゲストを迎えることができた。一緒にいて楽しかったし、素晴らしい仕事をしてくれたよ。大物映画スターになること間違いなしだ。

心のバリアが一層ずつ剥がれていく感じかしら。当初、彼女は依存症治療の付添人で、監視役のような存在だった。その後、パートナーとなって彼を心配し続けるけど、不安も抱えていた。でも彼女は付添人という一面を切り離して、本当のパートナー、ルームメイト、そして友人になっていく。ある時点で2人の関係は単なるパートナーに戻ってしまうけど、今では、お互いに育んだ真の友情、愛と思いやりで結ばれてる。ただ距離をもって監視をするだけでは、そういう関係には発展しない。シリーズを通して発展した2人の親密度はもっと濃いものよ。

シャーロックの父親は第1話の最後に登場するんだけど、そこからジョーンとシャーロック、シャーロックと父親、そしてジョーンと彼の父親という、3方向の興味深い関係がスタートする。モーランド・ホームズはとてもミステリアスで、少しずるい人ね。完全に信用はできない。いいこともするんだけど、必ず対価を求める。

ジョーンは過去についていくつかの情報を明かすことになる。ある意味で、素晴らしいことであり、痛ましいことでもある。彼女自身、知らされていなかったことがあったの。シーズンの途中になってもまだ、今後どうなるか、そして過去に何が起きたのかは分からない。でもジョーンはここで一度、他人を助けることをやめるの。これまでの人生を振り返り、次にどうなるか、そして過去に何があったのかを立ち止まって考える。

第7話「ライアーゲーム」は素晴らしい回だった。素晴らしい俳優アリー（・ヨアニデス）をゲストに迎えることができたからよ。彼女は役に本当に大きな意味をもたらした。何が真実で何がウソなのかが分からなくで、展開がどうなるのか私たちにも理解が難しかった。視聴者もそうだと思う。この回にはたくさんのひねりがある。何より興味深いのは、キャシーとシャーロックと関係性ね。2人のやり取りはとても面白いし、シャーロックが彼女と部屋で話すシーンもすごい。役に深みを持たせる、本当に才能ある俳優だわ。
ガイ・ファーランドが監督したんだけど、彼は他のエピソードもたくさん担当してる。脚本を理解し、どう演出すればいいかをよく分かっていた。演出はとてもシンプルだけど、核心にしっかり触れてた。関係者みんなが満足してたわ。あらゆる面で大成功した回ね。

監督として最も大切なことはコミュニケーションよ。俳優たち、撮影部門、周りにいるチームのメンバーとのコミュニケーションね。自分の意思をきちんと伝えたり相手の考えを聞くことが大切。お互いにやり取りができることが全てね。人生もそういうものよ。

これまでのシーズンでモーランドは、シャーロックが嫌う不気味な存在として語られてきた。よく話に出てくるということしか、見ている側は知らない。知っていることといえば、シャーロックの依存症治療の付添人になるようジョーンに依頼し、謝礼も支払い済みだということくらいだ。シーズン３の終盤、シャーロックが再び薬物に手を出すまでは、それでうまくいっていた。そこでモーランドはついでを装い、シャーロックの前に現れる。彼は再び息子を救うためにやって来たんだと、私は思っている。

ミステリアスな人間だ。イギリス人なのは確かだよね。とてつもなく裕福で力を持っている。政府を動かせるような人間の１人だ。裏で船を操っているような、交渉役である。彼はそういう人物だ。

確かルーマニアにいた時だったが、責任者のロバート･ドハティから電話がかかってきた。かなり話し込んだよ。ぜひ作品に出演してほしいと言われ、話せば話すほどこの複雑で物言わぬ、ミステリアスな強い男を演じることに魅力を感じていった。彼は一連のストーリーに関わってくる。

ジョニー・リー・ミラーは見事な俳優である上に、素晴らしいプロフェッショナルだ。彼が演じているキャラクターは、私にとっては向き合いにくい相手だ。心を閉ざしているからね。いつも反抗してくる。共演するシーンは、愛とは無縁だ。それだけは言える。人は、向き合う相手の目を見て心の微妙な動きを探ろうとする。モーランドとシャーロックは、互いにずっとそれをやってるんだ。強くスマートな男同士が、互いを寄せ付けないようにしているといった感じだ。

ジョーンはシャーロックほどモーランドに心を閉ざしてはいないから、共演シーンは、シャーロックのものとは違う。2人で努力してるよ。お互いによく目を見て、いろんな面を引き出しながら演技をする。彼女は見事な俳優だし、それ以上に人間として素晴らしい。

質の高い作品は、何もかもが上質だから、気持ちは高ぶる。でもこの作品に関して、がっかりするようなことは何もない。うれしかったのは、ニューヨークで仕事ができ、昔からの友人やクルーに再会できることだ。今朝も、本当にうれしいことに、何年も会っていなかったカメラマンと再会できた。そういう体験ができることも、私にとっては特別なことだ。自分にベストを要求してくる上質な人たちと仕事をしてる。それを意識することで、私は前に進んでいけるんだ。

正直に言って、あまり変わらないと思う。このような形の作品では、シャーロックを変え過ぎないほうがいい。変わるも変わらないもすべて状況次第だ。彼は以前に比べて少し閉じこもり気味になっているし、ずっとリハビリに取り組んで薬物から離れていようとしている。実は、最初の頃より薬物と距離を置いているとも言い切れない。1歩ずつ進んでいくだけだ。彼は恐らく、他の人と同じように少し物事を学び、少しだけ穏やかになったかもしれない。でもあまり落ち着き過ぎてほしくない。つまらないからね。彼が“シャーロック･ホームズ”であり続けるように心がけているよ。

いつものことだが、彼は次第に常軌を逸していくかもしれない。シーズン1でもそのような例がある。シャーロックは誠実で、本物の価値観を持ち、正義感がある。それを表現する方法が他の人と違うだけだということが、これから描かれていく。周囲の人間に大きな出来事があったりしてね。シャーロックはそれほど自閉的じゃない。まあ、状況によっては少し自閉的かもしれないが、みんなを気にかけている。それを見せられるのはうれしい。外見と内面とは少し違うからね。

シマウマと仕事するのは楽しかった。毎日できることじゃないからね。いろいろ面白かったが、（この作品の）本当のドラマは犯罪事件を解決することとは別の部分にあって、それがこの作品で大事なんだと僕は感じている。もちろん事件の部分にもすごくいい話があるよ。それにこの作品で大事なのは人間関係だけでもない。登場人物たちは人生の問題にもがいている。それは罪悪感かもしれない。罪悪感から失敗した者の話も出てくる。人生のある時期、何年も前に失敗した者もいて、いずれかのキャラクターに影響が出る。あるいは依存症などに苦しんでいる者もいるかもしれない。そういったストーリーを、犯罪事件の解決や謎の解決と同時に進行させる。僕は、よりドラマティックなストーリーが好きだ。普段はそうはいかないからね。

彼女は入念に準備し、自分も女優だから俳優たちを大切にする。彼女は俳優たちが、彼女自身が希望するのと同じだけの時間の余裕と配慮を得られるようにした。すべてうまくいったよ。

面白いシーンがいくつかあるよ。教えるシーンで、すごくいいものもある。僕が特に好きなのは、キティにドア･チェーンの破り方を教えるシーンだ。関係者全員が興味をそそられたよ。

オフィリア･ラヴィボンドが現場にいると明るくなる。彼女はすばらしい俳優で、共演は楽しいよ。

2人と一緒にやるのが楽しいかって？ もちろんだよ。いい奴らだし、もう友達だ。2人とも大した俳優だよ。

僕たちは、テレビで24話のエピソードを届けられることを誇りに思っている。変に思えるかもしれないが、それが真実だ。どの段階も簡単ではないが、特に脚本を書くこと、ストーリーを面白くて風変わりなものに保ち続け、アイデアを出し続けることは簡単ではない。1年に24個もアイデアがあるというのは、すごいことだ。その後、そのプロジェクトを実行に移し、テレビ（ドラマ）の1エピソードを8日で撮影する。それを（24話）やり遂げたんだから、本当に誇りに思うよ。僕が立ち上がっていろいろスピーチをしたことがあったが、それとはまったく違う。僕たちは一定レベルのものを作り続けようとしているんだ。

恋人との関係を通して、ジョーンのより個人的な部分が見られるわ。少しもろくて、約束、つまり恋人の父親に会うようなことを恐れている。結局彼女は、これが自分の求めている関係なのか、確信が持てないの。恋人を演じたラザ･ジャフリーは本当にすてきだから、いなくなってさみしいわ。

本当にいろいろなことがあった。このエピソードでは段取りが大変だったの。今回は、事件以外の人間関係でたくさんのことが起きる。シャーロックとベル（刑事）の関係が中心ね。（ベル刑事役の）ジョン（･マイケル･ヒル）と（シャーロック役の）ジョニー（･リー･ミラー）が一緒にやっているのを見るのは、すごくうれしかった。私はいつもジョン･マイケル（･ヒル）の出番が少ないからもっと見たいと思っていたの。彼のことがまた少し分かるわよ。このエピソードでは彼のユーモアのセンスが披露されるわ。

クアッガは絶滅していて、本当はこのような動物はいないから、私たちが一から作ったの。幸運なことにクリスマスの休暇があって、制作に2週間以上かけることができたけど、すべて作り上げるのにはそれでも時間が足りなかった。撮影をした日、クアッガは何とか動いていたけど、ぎこちなかった。動きがスムーズじゃないのには、面白い裏話があるの。
アニマトロニクスを担当する男性が、朝早く家を出たんだけど、あまりにも早かったから、道路脇に車を止めてひと眠りすることにした。彼は寝過ごしてしまい、目が覚めたときには朝の通勤で大渋滞になっていたの。結局、彼は現場に遅刻して、クアッガをつなぎ合わせる予定が遅れてしまった。それで面白いことになったの。撮影をしたのは正面からで、後ろに回って見てみると背中が開いたまま。縫い合わされていなくて、くっついていない。予定していた姿ではなかったの。でも最終的には、すばらしかった。いつも言うんだけど、信じられないわよね、みんなが本物だと思ったなんて。本当にすごいわ。

監督する機会をもらったおかげで、自分の将来の道を見る目が変わったわ。心を開けたし、今までにないほど創造的に、勤勉になれた。製作陣は、私が今まで誰にも頼むことができなかったことを、信頼してやらせてくれた。このすばらしい船を私に託してくれたの。プロデューサーたちは当日姿を見せなかった。私を監視したり、過保護にしたり、過干渉したりしなかったわ。姿すら見せなかったのよ。ただ私に台本を渡しただけで、ミーティングは電話でしたし、何でもネットでやったわ。すごくうまくいって、驚くほど自信がついた。両親からもらいたかったほどの自信をね。今は、自分ができるとは思ってもいなかった方法で、でも誰かがしっかり手を握ってくれている状況で、やっと少し成長できたと思う。すごくいい気分よ。

ジョニー・リー・ミラー：レストレードは、ある意味型にはまった人間だとも言えるし、その逆だとも言える。小説に出てくるレストレードとは全く違う人物なっているよ。彼の問題も現代バージョンになっているんだ。

ルーシー・リュー：ワトソンはレストレードと彼の過去とシャーロックとの関係を知った時、全面的に協力しようとするんだけど、一方で個人的な問題だから、関与しない方がいいと考える。でも、犯罪が関わってると分かったことで、シャーロックのパートナーとして同行することにするの。

ジョニー・リー・ミラー：シャーロックとレストレードの関係は険悪なもので、亀裂が入っている状態なじゃないかな。2人の関係は仕事上のものだったし、お互い本当の自分を見せあえるような関係ではなかったからね。厄介な関係なんだ。

ルーシー・リュー：ワトソンの変化で私が一番ワクワクしてるのが、仕事以外でのシャーロックとの関係なの。すごく変わった友情だからね。2人の関係で私が大事にしてるのが、ワトソンが事件にどんな風に貢献できるかってことじゃなくて、2人がどんな風にコミュニケーションを取り合うのか、2人がお互いにどう共感し合うのかって部分なの。私にとってはそういうことの方が興味深い。

ジョニー・リー・ミラー：きっとドラマには絶対必要な部分だと思う。どんなドラマでも、まず視聴者と良い関係を築くことが大切なんだ。特に、テレビの場合はね。脚本も20話ぐらいはあるから、その間ずっと犯罪捜査だけをしたり、悪者と戦い続けたりはしたくない。魅力を感じたり関心を持ってもらえるような登場人物の新しい要素を引き出していく必要がある。そうすることでみんながチャンネルを合わせたくなるんだと思う。だから、観る人たちが共感できて、理解できることがすごく大事なんだ。そうじゃなければ、視聴者と本当の意味でつながることはできない。

ジョニー・リー・ミラー：小説からのキャラクターの抜き出し方がとても気に入ってる。小説のキャラクターと並行してドラマのキャラクターが存在してるんだ。全く同じではないけど、いくつかの点ではワトソンにもホームズにも共通点がある。（製作総指揮の）ロブとクレイグ（・スウィーニー）はパラレルワールドを実に上手く作り上げてる。それに、ドラマの舞台は21世紀だからね。

ルーシー・リュー：撮影が始まる4日前に台本がもらえるのは、ラッキーよ。

ジョニー・リー・ミラー：だね。

ルーシー・リュー：仕事によっては、当日に台本を渡されることもあった。しかも、それからも直しが入ったりして。あとは、撮影中の前日の夜とかに渡されて目を通す時間もないとか。それでも次の日撮影は始まっちゃう。ただ、それって割と普通なことなのよね。だから、私たちはすごく時間がある方だと思う。ロブと話した時――

ジョニー・リー・ミラー：贅沢なことだよ。

ルーシー・リュー：ええ。

ジョニー・リー・ミラー：僕らは甘やかされてるんだ。

ルーシー・リュー：時間がたっぷりあるわ(笑)。

しばらくリハビリ施設にいて、元気を取り戻したからじゃないかな。頭がちゃんと回転するようになった。好きな事だったし、やる気も能力もあるからそれを使いたいんだ。また、元の道に戻って前に進みたいって思ってる。

本は全部読んでるよ。

歴史的に知られるワトソンは、もちろん男性。だから性別が変わるのは大きな変化だと思う。だからすごくワクワクするし、同時に不安な気持ちにもなるわ。どんな新しい2人になるのか、ワトソンという女性に注目が集まるだろうからね。2人の男性が一緒に事件を捜査していた時に比べて、私たちの関係は全く違うものになると思う。

台本を読んだ時は、ホームズが既成概念の枠を完全に越えて生き生きと描かれていてワクワクしたわ。彼が薬物依存症で付添人がいるっていう設定にもね。

ロバートとカールに会った時に2人がどんな風に本作の第1話に取り組んできたかを知って、頭の下がる思いだった。第1話目ってストーリーもセリフも作り手が本当に心を込めて作るものだからね。それに、2人ともすごく親切で暖かい人たちだった。実はそれが私がこの作品に出ようと決めた理由の50％を占めてるの。周りの環境って自分にとってすごく大事で、それが今のキャリアにつながってると思ってる。その位環境を大事にしたい気持ちがある。クリエイティブで素晴らしい人たちに囲まれていたいの。

どうしてワトソンが女性になったのか、っていう部分について聞きたいことがたくさんあった。名前を変えずに、どうしてシャーロックとワトソンのままにしたのかも知りたかった。ここまで定着している作品では、それってさらに難易度を上げているようなものでしょ？でも、2人の話を聞いたら、彼らの作品に対する情熱が私に伝染した。私が持っていた好奇心と2人が持っていた好奇心が合わさったら、ドラマに対する創造力がよりアップするって思ったの。

実は、シャーロック・ホームズの本を小さい頃に読んだ事はなかったの。両親が中国からの移民だったし、そういう環境になかった。もちろん本の名前もストーリーの内容も聞いたことがあったけど、実際に読んだのはつい最近。その後にこの仕事の話をもらった。すごい事よね。本を読んだのも何かの運命だったのかも。読んだ後にこの仕事の話を頂いたんだから。本当に素敵なサプライズだったわ。