それは、贈り物のようだと言わざるを得ません。実はキャリアをスタートさせたばかりの頃は、このドラマがこんなにヒットして続くと思っていなかったのです。だからこのままではいけない、他の仕事もしなければと思っていたのです。でも、今こうして戻ってこられたことに感謝しています。言葉では表せないほどです。ディスカバリー、ピカード、そしてショートトレックなど、アレックス・カーツマンが作り上げた全く新しい「スタートレック」の世界で仕事をできることをとてもうれしく思っています。
「スタートレック ディスカバリー」のキャストたちは、お互いの接し方や撮影現場の様子が「新スタートレック」のキャストととても似ているのです。なんだか心温まる感じです。こんなふうに感傷的になるなんて、ちょっと陳腐に感じますが感傷的になってします。
彼らはお互いをとても大切に思っていて、撮影現場でもいつも一緒にいます。カメラがないところでも、お互いのセリフ合わせに付き合っていたり、撮影後には夕食を食べるために一緒に家に帰ったりする姿を見かけたりもします。
そして、友人の重要なシーンの撮影時には、たとえ自身の出演がなかったとしてもスタジオに戻ってきて、友人たちを見守っています。
そして週末も同じように過ごしています。平日80時間一緒に働いて、週末には集まってゲームナイトを行うんだ。まるで「新スタートレック」のチームたちと同じです。
撮影現場の雰囲気が良いことは、視聴者たちも感じると思いますし、私たち同様に感じてくれていると思っています。そして、視聴者たちは私たちが友人同士であること、お互いに愛情をもって接していることも知っています。特に「スタートレック ディスカバリー」ではあるカップリングを思い浮かべますね。マイケル・バーナムとサルーのパートナーシップは、素晴らしく、そして物理的で奇妙な関係です。この2人の関係をフレームの中で表現するのは、とても難しいのです。
さらに、ポール・スタメッツとヒュー・カルバーの関係も素晴らしいですし、シルビア・ティリーとマイケル・バーナムも素晴らしい関係で、みな友人同士でもあります。それは秘密でも何でもないです。
「スタートレック ディスカバリー」のソネクア・マーティン=グリーンと「スタートレック:ピカード」のパトリック・スチュワートは、今まで一緒に仕事をさせてもらった中で、最高のメンバーです。
ソネクアの情熱・精神性を含め、彼女の才能は素晴らしいです。そしてこのドラマの座長として、リーダーシップを持ち、現場を盛り上げています。私たちは、そのような場所に彼女と共にいられる特権を与えられています。
彼女はいつも準備万端で、時間通りに行動します。ユーモアのセンスもあり、思慮深く、さらにキャストだけでなく、スタッフ全員の名前も憶えています。私たちは、彼女を拍手で迎え、拍手で送りだすのです。
(そうだ!!)撮影現場に「本日の従業員賞(頑張ったで賞)」というものがあります。これはソネクアによって作られたものであり、私はその大ファンです。
(「スタートレック:ピカード」のパトリックのように)この作品で多くの演技をする彼女は、まるで細かく調整されたストラディバリウス(バイオリン)の楽器のようです。彼女へ演技のニュアンスを伝えると、彼女はそれを受け入れてアクションを起こし、演技に取り入れたと感じることができます。
彼女は、撮影中に自分が奏でなければならない音符が来ることがわかると、その音符を思いっきり叩くんです。それが演技に反映されていて、見ている人は感じることができるんです。
ソネクアは、作品にエレガンスさを添えてとても素晴らしくしています。彼女のリーダーシップが、この現場を素敵な場所にしている。彼女のおかげです。
これほど多くの経験、そしてこれほど多くの「スタートレック」シリーズを経験できたことは、非常に貴重なことでした。もちろん、ストーリーに集中することがいかに重要なことなのか、いつも思い知らされます。ここには豪華な設備や魅力的な道具もあり、さらに信じられないような視覚効果もあります。当然壮大なものになります。でもストーリーがしっかりしていなければ、それらが全て無価値になってしまうのです。
そのストーリーにソネクアが華を添えています。ストーリーの中で彼女が感じていることを演技で表現しています。他のキャラクターたちも同じです。ソネクアが演じているのは、この作品の核となるマイケル・バーナム。マイケルはとても複雑で思慮深く、そして愛情深い。数話前 、私は彼女に「あなたの周りには新しい雰囲気があるね。なんだか元気がでるよ」と言いました。そうしたら彼女は「そうだね。もう、マイケルは罪悪感や後悔の念に駆られるようなキャラクターではなくなって、全体の世界観が変わったからね」と答えたんだ。そして、その世界観を見ている人が感じることができる。人と言うのは、人から聞いた話を(意外にも)覚えていないことが多いですが、自分が見たものは、後からその時に感じたことも含め思い出すんです。本を読むのと同じように、映画もそうでしょう。テレビも同じです。だから視聴者は、キャストが演じている作品を見た時に感じたことを記憶するんです。
ありますよ。カーツマンが手掛ける「スタートレック」の世界全てで、思いついたことややってみたいことなどアイデアさえあれば、スリル的な経験ができ撮影が奨励されました。私たちには、全てが揃っています。クレーン車も2台あり、カメラレンズのコレクションもすごい。そして壮大なセット、セット内の照明デザイン、壮大な衣装。これらには莫大なお金がかかっています。
そして、それらはとても素晴らしいものなのです。「スタートレック ディスカバリー」は素晴らしい作品です。私たちは自分たちの仕事を愛し、作品も素晴らしいものになりました。
私たちの撮影は常にアナモフィックレンズ(映画フィルムでワイドスクリーンを撮影・再生するための特殊なレンズ。主に映画撮影に使用されている)で、常に最良の撮影をしています。今や、映画だけでなく、もちろん「スタートレック」以外もテレビドラマでも使用されています。私のアイデアではありませんが、今はテレビもハイクオリティになっており、それが当然のようになってきています。そのような形式で仕事ができるのはとても素晴らしいことです。
しかし、今年公開されるJ・J・エイブラムス製作の新しい「スター・トレック」は、さらに新しい映画的な要素が設定されています。
私が「スタートレック ディスカバリー」の撮影を始めた当初、撮影の合間にキャストたちから毎回聞かれていたことは、ファンのことやコンベンションのことでした。
そして新しい航海は始まったばかりです。彼らは、その航海がどのようになっていくのか知りたがっていました。だから私は、彼らにいろいろな話をしました。
ソネクアは「ウォーキング・デッド」の世界にいたことがあるので、コアなファンがいる作品経験がありました。「ウォーキング・デッド」も、とても情熱的なファンがいます。しかし「スタートレック」のファンにはかないません。
コンベンションで私たちに会いに来てくれたファンの中には、家族との問題、薬物・アルコールとの関係、ケガや心的外傷後のストレスなどの理由によって傷ついた時、「スタートレック」が彼らの人生にどのような影響を与えたかなど、私たちに様々な情報を共有してくれます。そしてキャストに会えた時、ファンたちの多くは涙を流すのです。なぜなら彼らは自分の人生の中で、とても幸せな時間を与えてくれたことを思い出させてくれる人にやっと出会えたからです。それは最高の時間であり、それがコンベンションの一部なのです。
私は、ファンたちとともにその経験を共有しました。しかし悲観的になることはないのです。ファンたちは自分たちの経験を悲観的にとらえていないのです。
私は常々感じているのですが、俳優としてこのような人々の話を聞く能力を失ってしまったら、ヒットを飛ばすこともできなくなってしまう。しかし、それは二次的な才能です。
「スタートレック」ファミリーの一員であることはある意味、副産物的な贈り物です。ファンがいる、それはとてもリアルなことです。そして「スタートレック」が繁栄している重要なことは、ファンに支えられているということです。そして今、この作品は世界中で見ることができます。それがこのフランチャイズに参加する絶好の機会になっています。
ジーンは私たちがまだ「スタートレック」を製作していることを知ったら、きっと大喜びするでしょうね。彼は分かっていたのだと思います。初めて、オリジナル・シリーズのパイロット版を製作した時から、彼には人々の心に響く物語が続くことを分かっていたのです。そして陳腐に聞こえるかもしれませんが、彼の描く未来はとても楽観的でした。そして、私たちはかつてないほど、彼が描いたビジョンを必要としています。
そして、いくつかのストーリーが今まで以上に暗い内容だったとしても、より複雑になったとしても、すべての繰り返しの中で、ジーンのビジョンは生き残ってきました。
誰もがそのビジョンを意識し行動しています。「スタートレック」の製作者であるリック・バーマンはジーンがなくなった後に彼のビジョンをさらに意識して製作してきたし、アレックスも今そのビジョンを重視している。そして、それが全ての「スタートレック」の核となっているのです。そして、ジーンはそのことをとても誇りに思っていると思います。
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