僕らのドラマについて短い解説文を読んだとして、一見すると他のTVドラマと似ているように思うかもしれないけど、僕らはくだらなさとおもしろさとハラハラする展開とのギリギリのところをうまく表現してる。僕らのショーランナーはあらゆる要素を取り入れたいと思っていたんだ。ロマンスあり笑いありアクションあり、人間ドラマもあって、続いていくストーリーも取り入れたいと考えてた。このドラマが始まる時にどんなことをやりたいかを話してくれたよ。「毎週ただ事件を解決するだけじゃない。コメディもやってもらうし、甘いラブストーリーもやってもらう。いろんなことが起こるドラマなんだ」って言われたんだ。
最初は台本を読むのが怖かったよ。「一体何をする気なんだ?ストーリー上、これでいいのか?」って思った。だからプロデューサーや脚本家と話をして、(ミュージカルを取り入れることは)僕らが今までやってきたようにギリギリのところをうまく表現するにはピッタリの設定だと感じた。歌って踊ってマラカスをふり鳴らしたリなんかしたあとで、ロサンゼルスで発生した爆発を阻止しようと挑むなんて展開になるんだ。
ミュージカルを取り入れることでドラマ全体をさらにおもしろくすることができた。悪いヤツらを追いかけたり、緊張感のある状況に陥ったり、うまくいかない恋愛模様を繰り広げたりするだけじゃなくて、僕らは何だって取り入れる。だからこそ、結果的に視聴者にも楽しんでもらえるドラマになると思っているんだ。
僕は子供の頃から芝居をしてきてずっと役者になりたいと思ってた。でもご覧のとおり、僕はジャン=クロード・ヴァン・ダムみたいでもヴィン・ディーゼルみたいでもないから、彼らがやるようなクレイジーなスタントをやるなんて考えたこともなかったよ。でもこのドラマは迫力満点のアクションをやる役者だとちょっと浮いてしまうような番組なんだ。(このエピソードはシーズン4の第1話になるはずだけど、)現場には巨大タンクが用意してあって、僕はその水の中に入った。水面にはたぶん15メートルぐらいのニセモノの氷があって、僕はハーネスをつけた状態で水中に入って引っ張られるんだけど、なかなか水から出られなかった。スタント担当のスタッフを信頼しなきゃきっと溺れてただろうね。すごくスリル満点で、ワクワクしたし怖かった。僕はただ最高のスタントチームに身を委ねたよ。それに前から水中で撮影してみたいと思ってたんだ。水の中に入って演技をして、カメラマンも水の中にいてすごくおもしろい状況さ。僕には子どもの遊びみたいな感覚だったよ。
脚本家にはかなり大胆な決断だったと思うよ。「結婚させて、もったいぶるのはやめにしよう」っていうのはね。僕が思うに脚本家たちはキャラクターを信じているから結婚させたんだと思う。視聴者の思いをいい加減に扱わずに尊重して、ストーリーに面白みを持たせたかったんだと思うし、僕らもいい展開があるかもしれないと思いながら、もったいぶるのを続けるようなことはしたくなかった。それに脚本家の多くは結婚して子供がいる。ストーリーの中でネタにできることが山ほどあるんだ。何をストーリーに取り入れて取り入れないかは分からないけどね。
結婚生活を演じるのはすごく楽しい。僕も付き合っている人がいて、人生のパートナーを持つということがどんなことなのか分かっているからね。だから家で恋人とケンカをしたあとに、撮影現場に来て、ケンカの内容がそっくりだったりすると、自分もごく普通の人間なんだって思うんだ。それに視聴者からすれば、ロサンゼルスを襲おうとしている核爆弾の危険を阻止しようと挑む人たちも、家に帰れば歯みがき粉のことでケンカするものなんだって、楽しんでもらえるんじゃないかな。他のすてきなドラマと同じように、驚くようなことをやってのける人たちも普通の生活をしているってことなんだ。
演じる側としては結婚生活をリアルに演じることが楽しいんだ。面白いジョークやくだらないこともたくさんあって、楽しんで演じてるよ。
トビーはすごく子供がほしいと思っている。ハッピーも彼の気持ちは承知しているけど、トビーほど熱心には考えていない。それでも子供を持つ心構えはあるみたいだね。(子供を持つのは)簡単なことじゃないということにして。これについては共感できる人は多いと思うんだ。2人の仕事やこれまでの状況を考えると、よりいっそう難しいかもしれないね。トビーとハッピーが子供を持つかどうかについては、シリアスな問題をこのドラマの中にどう取り入れるかという別の問題でもある。誰もが向き合わなければいけないけど、ないがしろにしがちなやっかいな問題をね。問題を茶化して軽く考えるんじゃなくて、現実の社会でありそうな状況よりも、問題をもっと飲み込みやすくして表現してる。そうすることで見ている人たちは共感を持ちながら楽しんで見られるんだ。問題に思い悩むよりはね。
テレビの世界は今、すばらしい状況にあるんだ。予算の潤沢な映画製作に携わっていた人たちや大きなスタジオで働いていた人たちがテレビに関わっているからね。だから、僕たちのドラマの見せ方についてもレベルを上げなきゃいけない。だってつまらない番組より、視聴者は映画並みのクオリティの番組を見るはずだから。このドラマの制作に関わる全員がテレビを取り巻く状況を理解していて、みんなすばらしい仕事をしている。ひどい特殊効果のままで妥協するなんてことはないんだ。
ケイブが大変な時期を乗り越えようとしているのを手助けできる絶好のチャンスをもらったよ。確かに彼は厳しい状況に置かれていたから大変だったけど、トビーは自分が役に立つことができてすごくうれしいんだ。個人的な話をすれば、トビーにとってうれしいシーンをロバート・パトリックと共演できることが感激ものだった。ロバートは激しいアクションや大作映画で知られているけど、すばらしい演技を見せてくれる役者でもあるんだ。
ロバート・パトリックは特別な俳優だよ。今回のエピソードの撮影ではものすごく異彩を放ってた。彼が演技している様子を座って眺めていたんだ。カメラが回っている間、円熟したベテラン俳優のすばらしさに圧倒されっぱなしだった。映画並みのクオリティのテレビ番組について話したけど、特殊効果やアクションとは別に、演技だってもっと上を目指す必要があると思うね。
僕たちは地球最後の日が訪れた時に避難するために作られた施設の中に閉じ込められるんだけど、トビー最大のライバルで元カノと奥さんも一緒に閉じ込められてしまって、出られないんだ。驚きのエピソードだよ。 台本に目を通す前にスケジュールを見たんだ。TV撮影のスケジュールには簡単なシーンの説明が書いてあるんだけど、スケジュールによると、「トビーは元カノとけんかする。トビーはハッピーと仲直りしようとする。そしてトビーは飛ぶ(fly)」って書いてあった。まだ台本を読んでなかったから、一体どういうことなの分からなかったけど、おもしろそうだって思ったね 。