ニュース

海外ドラマおすすめコラム vol.7 "演技の虫に噛まれてしまった"殺し屋を描くダーク・コメディ「Barry」

30分枠のコメディ番組はほとんど見ない著者なのだが、役者志望の殺し屋が主人公だという設定に興味を惹かれて、アメリカのケーブル局HBOで3月25日に放映開始された「Barry」を見始めた。

タイトルロールのバリー・バークマンはオハイオに住む元海兵隊員でプロの殺し屋。エージェントもどきのフュークスが持ってくる仕事を黙々とこなす毎日だが、何か物足りなさを感じている。そんな或る日、フュークスが、ロサンゼルスに住むチェチェン人マフィアから依頼された仕事を持ってくる。ロサンゼルスに飛んだバリーは、暗殺のターゲット、ライアンの居所を突き止めるが、ライアンは俳優志望でバリーは演技クラスに足を踏み入れる。成り行きでライアンのモノローグの相手をさせられたバリーは、演技こそ自分の探し求めていたものだということを悟り…

バリーを演じているのは、「サタデー・ナイト・ライブ」出身で映画では「スケルトン・ツインズ 幸せな人生の始め方」などに出演しているビル・ヘイダー。ヘイダーは「Barry」のクリエイター・脚本家でもあり、同ドラマの8話中3話を監督している。犯罪界と演劇界というおよそ縁の無さそうな2つの世界で2つのわらじを履こうとするバリーに、フュークスが「俳優は顔を売る商売だが、殺し屋は正体を隠す商売だ。殺しにいったらターゲットが『アレ、あんた、チキンのコマーシャルに出てる人だね』なんて言われたら困るだろ?」と説教をたれるシーンがあるのだが、そんなミスマッチな状況に置かれる主人公、バリーの葛藤が実に面白い。

「Barry」はテレビ評論家たちからの評価も上々で、シーズン2製作も決定したとのこと。今後のバリーの成長やストーリー展開が非常に楽しみである。


【ロサンゼルス(米) 荻原順子 2018/05/24】

荻原順子: 在ロサンゼルス映画/TVライター。キネマ旬報とTVタロウにハリウッド情報コラムを連載中。