4月のスーパー!ドラマTVの目玉は「ブラックリスト シーズン6」の独占日本初放送開始だが、他の新番組にも注目したい。「THE CROSSING/未来からの漂流者」だ。
結論からいえば大変に楽しめるドラマである。新感覚SFミステリー、そしてストーリー性重視のノンストップ系ということで、何を書いてもネタバレになりそうだが、何とかその面白さに迫ってみたい。
まず番宣CMでも明かされる通り、大勢が未来から現在にやって来るプロローグから物語は始まる。
「LOST」以来、米国ドラマのお家芸となった、壮大なツカミとしては合格。「ターミネーター」などのタイムトラベルSF映画を思い出す人もいるだろうが、47人も時間を旅してくるのが面白い。過去にはもっと大勢がタイムトラベルをしたドラマも無くはないが、あんまり多いとそれはそれでどうかと思うし(風呂敷の広げすぎ)、米政府が彼らを隠すあたりがサスペンスの源のひとつで、やはり47人という人数はちょうどいい。
そして彼らが明かす未来もまた「ターミネーター」と同様のデストピアだが、少しだけネタを明かすと、人類と人類が対立している。それが現在の人間関係に予想できない影響を与え、大いに盛り上がっていく。筆者はこの種の作品は、謎を少しずつ明かしながら、新たな謎を加えていってほしいと願うが、その点、本作はかなり巧妙で、次話に続くクリフハンガー感はかなり高い。
第1話を気に入った人なら、第2話以降はもっと気に入るだろう。第1話の監督は大ヒット作「X-ファイル」で2番目に多い数のエピソードを担当したロブ・ボウマン。演出は的確だ。
主人公である舞台の町の保安官ジュード役のスティーヴ・ザーンもいい味。大作映画『猿の惑星: 聖戦記』のバッド・エイプ役では声だけでなく、エイプの動きも彼自身が演じた。実はこの人、コメディが得意分野で、本作でも未来人たちに振り回される役どころを人間味たっぷりに好演している。
【アメリカTVライター 池田敏 2019/3/29】
池田敏: 海外ドラマ評論家。海外ドラマのビギナーからマニアまで楽しめる初の新書「『今』こそ見るべき海外ドラマ」 (星海社新書) 発売中。