全15シーズン続いた「ER 緊急救命室」でもっとも長くレギュラーを努めたノア・ワイリー。11シーズン目で一度は降板するものの、最終シーズンには復活、番組に華を添えた。
もはや自身の代名詞のような番組を持っていると、しばしば困るのが次の出演作選びだ。2009年に「ER 緊急救命室」が終了した後、ノアが次の主演番組として選んだのが、「フォーリング スカイズ」だった。人間臭い医療ドラマからSFドラマ超大作へ。意外すぎる選択に驚いたファンも多かった。
当時について、米エンタメ業界紙のインタビューにノアが答えている。
「あの頃、僕は人生の難しい時間を過ごしていた。結婚生活でも悩んでいた。だから僕は今までやってきたことと全く違うことをやってみたかった」
最初の結婚にピリオドを打ったノア、ある時、幼い息子を連れて事務所にやってきた。その机の上には4つの脚本が置かれていた。どれも素晴らしい内容だった。
「そこで僕は息子に聞いてみたのさ、『ねえ、君はパパが警察官になっているのを見たいかい?それとも弁護士かな?保険調査員でもいい?あとエイリアンと戦う闘士の役もあるよ』ってね。そしたら息子は『エイリアンと戦う闘士』と答えたんだ。僕はすぐにエージェントに電話をして、この作品をやると伝えた。これ、本当の話だよ」
息子が父にせがんだ作品はもちろん「フォーリング スカイズ」。そしてたまたまと言うべきか、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めていた。
「息子は一番いい作品を選んでくれた。優れた脚本ばかりだったけど、僕は何か違うことをやりたかったからね。当時の僕は少し迷っていたのだと思う。そこで選ばれた作品が、この世の終わりに、家族を必死でつなぎとめようとしている、迷いのある男が主人公の話だった。ただただ生き残りたくって一生懸命な男なのさ。意図せず僕は人生の次の章へ進む地点にたどり着いていたんだ」
当時も今も仕事選びは真剣だ。一つの選択が自身のキャリアを左右することになる。
「自分の選んだ仕事を見つめ直して、『僕がこの仕事を選んだ意味は何なんだ?』って問いかけている。もっと高みを目指していたはずが、たどりつけずに低い仕事を選んでしまうこともある。なぜ僕はこんな仕事をしているんだろうと悔やむかもしれない。けれど、選んだ理由は徐々に分かってくるものだ。僕が選ぶ唯一の判断材料は脚本だけ。心から感動することができるか、もしくは心から怯えることができるか。自分がその役を演じる姿が想像できないとしたら、それはなぜか?どうして僕は演じたくないのだろうか?そこまで考えるとしたら、たいてい僕はその仕事を引受けるのだろうけどね」
それまで無縁だったSF作品「フォーリング スカイズ」は、その後5シーズン続き、ノアにマッチョな戦う男のイメージを付け加えた。「ER 緊急救命室」の青年医師役を知らない若い世代にとっては、どちらのノアがノアなのか?
迷い続けた挙句のアグレッシブな役選び。その姿勢が、「ER 緊急救命室」出演者の中でもジョージ・クルーニー、ジュリアナ・マルグリーズと並ぶ主演のできる数少ない才能に、ノアを押し上げている。
<「hollywoodreporter.com」 4月23日>