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海外ドラマ最新レポート Vol.146 「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」 最後のエミー賞で監督賞にノミネート マルチカメラ作品の意地見せるか?

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ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」全12シーズン280話のうち、244話の監督を務めたマーク・センドロウスキーが、9月22日に開催される第71回エミー賞でコメディ部門監督賞にノミネートされている。授賞式を直前に控え、その名誉と興奮を米誌に語った。

 

エミー賞には昨年に続き2度目のノミネート。全米監督組合の賞にもノミネートされたこともあり、すでに評価は一級だ。それでもセンドロウスキーは「業界でトップクラスのコメディ監督でありたい。ノミネートされたということは、それが正しいと証明されたようなもの」と素直に喜ぶ。

 
そして何より嬉しいのがノミネートされた6人が担当する番組のうち、「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」だけがマルチカメラで撮影されていること。他の番組(「バリー」「Fleabag フリーバッグ」「マーベラス・ミセス・メイゼル」)はすべてシングルカメラで撮影されている。シングルカメラはここ数年、コメディ番組の主流となりつつあるのだ。
 
「プロとして何にも代えがたい気持ちだね」と喜びは最上級。なぜならマルチカメラの番組は、「現代のTVの世界において最も成功が難しいジャンルの一つ」(センドロウスキー)だからだ。
 
シングルカメラとマルチカメラの違いは、文字通り、撮影で使うカメラの台数の違い。シングルカメラは普通のTVドラマや映画と同じ撮影スタイルで「セックス・アンド・ザ・シティ」や「ラリーのミッドライフクライシス」などが初期の代表例。一方のマルチカメラは各シーンを複数のカメラで撮影するため、同じシーンを繰り返し撮影する必要がない。観客を入れたスタジオで撮影されるのも大きな特徴だ。「アイ・ラブ・ルーシー」など米シットコムの伝統的手法でもある。
 
「実際に観客を入れて撮影するのだから、反応が生で返ってくるわけだ。おもしろいと思われているのか、つまらないと思われているのか、僕らにそのまま伝わる。観客の前で撮影する手法に勝るものはないね。舞台劇みたいなものだよ」(センドロウスキー)
 
「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」の撮影ではほとんど無かったものの、観客の反応がイマイチなら、現場の脚本家たちが緊急会議を開き、その場で脚本を練り直すこともしばしば。逆に「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」の撮影で手を焼いたのが観客の興奮が異常に高まった時。
 
「観客はスタジオに入ってきた時からすでに興奮状態だ。そこにお気に入りの俳優たちが入ってくるだけで舞い上がってしまう。ジョークの前振りの段階から、笑いが起きて肝心のジョークが聞き取れないなんて時もあった。だから撮影を止めて、観客に落ち着いてもらうよう頼んだりしたものさ」(センドロウスキー)
 
「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」が終了した現在、そこまで観客を興奮させるマルチカメラのシットコムは皆無と言っていい。だからこそ、センドロウスキーはエミー賞に矜持を持って臨むつもりだ。たとえそれが時代遅れのマルチカメラの最後の抵抗になるかもしれないとしても。
 
 
<「forbes.com」 9月2日>