今秋からシーズン18に突入する「
NCIS ネイビー犯罪捜査班」で、主役のリロイ・ジェスロ・ギブスを演じている、マーク・ハーモン。現在は製作総指揮にも名を連ねる、番組の中心的存在だ。
マークの存在無しには、「NCIS ネイビー犯罪捜査班」がここまでロングランを続けられたか疑問とさえ思えるハマり役だが、実はパイロット版制作にあたり、主演の有力候補にある映画スターの名前が上がっていたという。その映画スターとは、ハリソン・フォード。おなじみ『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』シリーズ主演の超大物だ。
まさかハリソンがTVシリーズに? とにわかには信じられない話だが、「NCIS ネイビー犯罪捜査班」がスタートした2003年頃を振り返ってみれば合点がゆく。1942年生まれのハリソンにとって、当時は低迷期。アクションスターとしての活躍が一段落した頃だったのである。
主演映画も、ミシェル・ファイファーと共演した『ホワット・ライズ・ビニース』(2000年公開)を最後にヒットから遠ざかっていた。そこで映画がダメならTVと考えたのが、ハリソンのエージェント。ギブス役を引き受けるよう、ハリソンに勧めていたのも彼らだった。
とはいえ、2000年代始めといえば、まだまだ映画とTVに境界線が合った頃。ビッグな映画スターがTVに出ることは珍しかったはずだ。それをハリソンは嫌ったのか、最終的にギブス役はマーク・ハーモンが演じることになった。
ハリソン主演は立ち消えになったが、「NCIS ネイビー犯罪捜査班」の制作サイドの無念は、完成したパイロット版からも伺うことができる。そのタイトルは「非常事態エアフォース・ワン」(シーズン1第一話、原題「Yankee White」)。エアフォース・ワンといえば、日本でも映画『エアフォース・ワン』以降、その存在が知られるようになった米国大統領専用の小型飛行機だ。そして同映画に主演し、米国大統領を演じていたのがハリソンなのだ。
さらに脚本も悪ノリだ。ギブスが「映画で見たのと同じだ。ハリソンはここに座ってるんだよな」と感嘆する台詞まであったという。もしこのパイロット版にハリソンが主演していたら、さぞ話題になっていたことだろう。
ハリソンの名前だけでも驚きだが、なんと「NCIS ネイビー犯罪捜査班」にはもう一人、スーパースターのキャスティングが予定されていた。それは、「フレンズ」のジェニファー・アニストン。サッシャ・アレクサンダーが演じたケイト・トッド役での起用が考えられていたのだ。
しかし、「NCIS ネイビー犯罪捜査班」シーズン1撮影時には、ジェニファーは「フレンズ」最終シーズンに出演中。撮影を遅らせて待つことは不可能だったため、こちらも起用はならなかった。
「NCIS ネイビー犯罪捜査班」の夢のようなキャスティングは不発に終わったが、結果的には今のキャストのままで良かったはずだ。何より18シーズンものロングラン放送が、それを証明しているのだから。
<「express.co.uk」 6月5日>