10月のスーパー!ドラマTVで個人的に大プッシュしたいのは、独占日本初放送が始まる『
LOVE LIFE』。これは心にしみる逸品だ。各話が20数分~30数分と長くなく、一話完結形式なのも見やすい。何より主演を務める人気女優、アナ・ケンドリックの魅力がぎっしりだ。
第1話の舞台は2012年のニューヨーク。青春時代は恋愛に失敗してばかりだった主人公ダービー・カーター(ケンドリック)が、様々な男性と出会っては別れる、シンプルな物語だが、とにかく「こういうカップルっていそう」感がとても高く、20年近く前から既婚者のおっさんである筆者も、独身時代を思い出して胸に迫る瞬間がそこかしこに。
何せ第1話、ダービーがアジア系青年オーギー(韓国生まれのジン・ハ)と出会うのはカラオケパーティ。昭和と平成をまたいで青春を送った世代は、もうここだけでぐっと来るはず。
また、台詞に固有名詞がよく出てくるのも本作の特徴で、オーギーが記者として働くポリティコが実在するニュースメディアだったりと、作品世界全体がリアルかつナチュラルなムードなのがすてきだ。
そしてチャーミングなルックスだがブロードウェイ出身で、映画『マイレージ、マイライフ』では第82回アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされた本格派女優であるケンドリックの存在感に引き込まれる。
前述のカラオケ店での場面、映画『ピッチ・パーフェクト』三部作で披露した高い歌唱力をあえて封じたのはセルフパロディか。身長は156cmとも157cmとも言われるほど小柄で、日本人も親しみがわくタイプ。
彼女と製作総指揮を務める1人は映画『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』の名手ポール・フェイグ監督。『マッドメン』『ナース・ジャッキー』など、TV界での経験も豊かだ。
恋愛が題材の映画・ドラマがきりがないほど多数生まれてきたニューヨークで展開する最新傑作『LOVE LIFE』。シーズン2の製作がすぐ決まったのも納得だ。
【アメリカTVライター 池田敏 2020/10/2】
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