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海外ドラマおすすめコラム vol.46 英国産ならではの高品質ポリティカル・スリラー! しびれる傑作『ボディガード-守るべきもの-』

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9月のスーパー!ドラマTVの目玉は『ボディガード-守るべきもの-』。
 
海外ドラマや映画が好きな人なら、『ゲーム・オブ・スローンズ』のロブ・スターク役、2015年版の映画『シンデレラ』、『ロケットマン』、『1917 命をかけた伝令』などのヒット映画で知られ、来年公開予定のマーベル・シネマティック・ユニバースの新作映画『エターナルズ(原題)』(『ゲーム・オブ・スローンズ』のキット・ハリントンも出演)などの売れっ子男優、ジョン・マッデンの主演が一番の要注目ポイントだろう。
 
加えて、英国作品ならではの高品質ポリティカル・スリラーでもある。
 
ボディガードの男性と警護対象者の女性が恋に落ちるという物語だけを取ってしまうと、ケヴィン・コスナーと故ホイットニー・ヒューストンが共演した1992年の映画『ボディガード』とよく似ている本作だが、ボディガードのデイビッド(マッデン)はアフガニスタンの戦場に行ったことでPTSDを抱え、彼が警護する女性の内務相モンタギュー(キーリー・ホーズ)には厳しい運命が待つ。
 
ハリウッド映画『ボディガード』は筆者も大好きで、自室にポスターを飾っているほどだが、いわば極上のファンタジーであり、その一方で『ボディガード-守るべきもの-』は、最低の世界で最低の運命を引き受けた男デイビッドの存在そのものが生々しく、一度見始めたら最後まで目が離せなくなる緊迫感に満ちている。
 
マッデンは本作によって第76回ゴールデン・グローブ賞TVの部でドラマシリーズ主演男優賞を受賞。ハリウッド外国人記者協会は、時々スベるが次世代のニュースターの目利きには定評があり、本作の後のマッデンの活躍を見ると、この時も当たりだったと思えてならない。
 
ことある度に筆者は“海外ドラマは傑作をひとつ見つければ何年も楽しめる”と吠えてきたが、本作は貴重な例外で、数時間だけかもしれないが、秀逸なジェットコースターに乗り続けるように楽しめる。
 
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2020/9/1】
 
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