二人の相性の良さが最も反映されるシーンの一つが、ベッドシーン。とはいえ、並みのベッドシーンを演じているわけではない。設定がとにかく面白いのだ。なにしろ二人はロイヤルカップルだから、周囲は二世の誕生を待ち焦がれている。つまりベッドシーンはロマンチックよりプラクティカルでなければならないのだ。
「すごく難しいよ。だって笑っちゃうんだ。何ていうかバカバカしくてね」米紙のインタビューに答えたニコラス。正面に据えられたカメラの前でベッドシーンを演じるのが今も慣れない。「ベッドの中で、居心地の悪い姿勢でいなきゃいけないんだ。その上、高揚した演技をするわけさ。これが笑わずにいられるかと思うよ」あと20秒我慢したら最高のシーンになっていたはずが、それが我慢できなかったと笑う。「エルに言うんだよ、君を正視できないって。だから直前まで彼女の目の真横を見ていて、アップになったら目を戻すからって。そうじゃないと笑いが止まらないんだ」
もちろんテレもあるのだろう。けれど、ニコラスはクリエーターのトニー・マクナマラが書く脚本を責めている。面白過ぎるのが原因なのだ。「トニーはめちゃくちゃ変わったベッドシーンを書くんだ。行為そのものがおざなりだったり、何かアクシデントが起こったりみたいなことさ。その最中に蜂が入ってきてピーターの目を刺したり、医者連中が取り囲んで、もっとこうすれば妊娠しやすいなんてアドバイスをしたりするんだ」まるでコント。これはニコラスとエルに同情してしまう。
ニコラスにとって、『女王陛下のお気に入り』に続き、二度目の仕事となったマクナマラ作品。もう一つ気になっているのが、皇帝ピョートルの衣装だ。「彼のファッションは、当時としては時代の先端だったんじゃないかと思う。彼は宝石好きだし、衣装で人々をあっと言わせるのも好きだ。大きな毛皮のコートで周囲を驚かせたかと思えば、自分の下半身が風通し良くなるようなドレスを作らせたりもする」
奇想天外な演出が飛び出すマクナマラ作品への出演を心から楽しむニコラスだが、辟易していることも。それはハイヒール。なんとヒールが5センチもある靴を履いているのだとか。「痛いんだ。一日中履いてると、君たちよく頑張ったねって足を励ましたくなる」ヒールがあると2メートル近くになる大きなニコラス、身をかがめて足にささやく姿はさぞ滑稽。
売れっ子俳優を心身共に挑ませる「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」は、本編から裏話までユニークな作品なのだ。
<「variety.com」 2020年5月21日>