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海外ドラマおすすめコラム vol.54 キャラクターの心情と音楽が完璧にフィットする心地良さは、まさに快感! さらに、ヒット曲の劇中アレンジにも注目!「ゾーイの超イケてるプレイリスト」

 
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 ある日ひょんな事から他人の秘められた心情が歌になって聞こえてくるという特殊能力を得てしまったヒロイン、ゾーイの姿を描くミュージカル・コメディ「ゾーイの超イケてるプレイリスト」。音楽ものには秀作が多いが、このシリーズも間違いなくそのひとつに数えられるだろう。

 ヒットチューンをふんだんに取り入れたミュージカル・シリーズといえば「glee/グリー」を彷彿とさせるが、本作では他人の心情が歌として聞こえてくるという点がポイント。つまり劇中のエピソードや登場人物の心情と音楽とがより密接に絡み合い、共感性が増幅されているのだ。落ち込む娘を励ましたい父親が歌ったシンディ・ローパーの「True Colors」に涙し、ゲーム界のレジェンドの登場にミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』の「Superstar」で迎え入れるというこの上ない絶妙チョイスに爆笑し、自信を失いかけていた女上司がケイティ・ペリーの「Roar」を堂々と歌い上げる様に見ている側も奮起する。心の動きと音楽が完璧にフィットした快感は他の作品にはない心地良さだ。

 シリーズに登場する楽曲は80・90年代くらいまでの曲が比較的多い印象だが、もちろん最新のヒットチューンからミュージカルの名曲に往年のTVシリーズのテーマ曲まで幅広く取り入れられている。クラシック・ナンバーが多めなのもドラマを幅広い世代に届けるという視点からすると非常に有効だと言えるだろう。長く愛される名曲はそれだけ知る人も多く、視聴者の記憶を刺激する。若い世代にとってもここ数年、80・90年代のカルチャーがクールなものと捉えられているので受け入れられる土壌は整っている。気になった曲はすぐにデジタルデバイスでチェックできる今の時代にも上手くフィットしているのがこのドラマの強みだ。

 音楽的な面で言うとやはり楽曲アレンジにも注目したい。ホイットニー・ヒューストンのヒット曲、「I Wanna Dance With Somebody(Who Loves Me)」などは、原曲のポップチューンから一転、かなり物悲しいアレンジがされていたりするが、それがまた歌詞の内容とシチュエーションにはマッチしていてなんとも言えない説得力を生み出している。メーガン・トレイナーの「No」も使用されたシーンはわずかながら、原曲以上の高速NOの連発に、「無理無理無理無理!」なキャラクターの心情が絶妙に表現されていた。こうしたアレンジに思わず原曲はどうだったかな?と知りたくなるのも本作の醍醐味だ。

 
【映画・海外ドラマライター 幕田千宏 2021/4/21】
 
幕田千宏:ドラマは面白ければ国やジャンルを問わない雑食派ながらファンタジーや音楽ものは特に大好物。おうち時間でドラマ視聴が捗るのは嬉しいけど、趣味の旅に出られないのがツラい。

 

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