4月のスーパー!ドラマTVの目玉は日本初放送の『
マンハント:謎の連続爆弾魔ユナボマー』。海外ドラマ好きにも、映画好きにも話題性が高い、迫真のサスペンスだ。実話が下敷きと冒頭に掲げる本作(本当は実話は約8割らしいがそれでも割合は高い)、1978年から全米各地で爆弾事件を起こしたセオドア・カジンスキー、別称“ユナボマー”が題材で、FBIの新人プロファイラー、フィッツが主人公。台詞中、行動分析課(BAU)が出てくる時点で、『クリミナル・マインド』のファンはもう必見。しかし本作のFBIでは官僚主義がはびこり、現場の管理職たちは司法省に忖度(そんたく)しまくる。『クリミナル・マインド』と似ているが、こちらはずっとリアルな世界観だ。
それには大きな理由がある。ドラマシリーズというコンテンツへのニーズが高まり、全米の各TV局や各動画配信サービスが意欲作を放ち続けているのは、海外ドラマ好きはもうご理解しているだろうが、本作は全米TV界の有力ドキュメンタリー局“ディスカバリー”(日本における“ディスカバリーチャンネル”)が手掛けたノンフィクションドラマ。ドキュメンタリー専門局がドラマを作る以上、リアリズムを重視するのは最優先で、そこは全米の各TV局&各動画配信サービスより気合が入っている。ショッキングではあるが、“ユナボマー”の被害者たちを生々しく描いた点など、むしろ腰が据わっているほど。
キャストも映画界でおなじみの面々が結集し、フィッツ役(モデルとなったジム・クレメンテは後に『クリミナル・マインド』など多数のFBIドラマで技術アドバイザーなどを担当)のサム・ワーシントン、カジンスキー役のポール・ベタニー、オスカーにノミネートされた名子役から成長したケイシャ・キャッスル=ヒューズらキャストも充実。全米の名ドキュメンタリー専門局が気合を入れた本作、巧みにブレンドされたリアリズムと娯楽性を堪能したい。
【アメリカTVライター 池田敏 2021/3/31】