「ブレイキング・バッド」の前日譚シリーズ「
ベター・コール・ソウル」で圧倒的な存在感から視聴者を魅了してきたジミー・マッギル役のボブ・オデンカーク。そのジミーの良きパートナーがレイ・シーホーンの演じるキム・ウェクスラーだ。最近のシーズンではボブを食らうほどの演技をみせるレイ。視聴者のキム人気もうなぎ上りだ。
「ファンはキムのことがすごく気にかかってるみたいね」と米紙の取材に答えたレイ。なんでも、ファンはキムが「ブレイキング・バッド」の悪徳弁護士ソウル・グッドマンに変わる以前のマッギルの影響を受け、悪の道に引き込まれてしまうのではないかと心配しているのだとか。街角で声をかけられたり、SNSでメッセージを送られることもしょっちゅう。「皆、キムのことをまるで私たちの共通の親友か何かのように話すの。とにかく心配らしくて、『どうすればいいんだ、電話してやりたいんだが』なんて言うのよ」
ファンのガチ過ぎる反応に苦笑いのレイ。キムをそれだけ愛されるキャラクターに育て上げたのだ。「キムは本当に複雑なキャラクターなのだけど、そこが人間ぽいのよ。製作総指揮のピーター・トランやヴィンス・ギリガンや脚本チームはその部分を巧く見せていると思う。彼女の能力の一つに物事にメリハリをつけて行動できるというのがあったのだけど、そこが今や弱点になってしまった」
ジミーとの関係が深まるにつけ、真面目な弁護士だったキムの性格が揺らぎ始めたという意味だろうか。ファンならずとも、キムの行方が心配だ。何しろ、彼女は「ブレイキング・バッド」に登場していないのだから。「トランやギリガンは何も教えてくれないのよ。知っているのは目の前にある脚本に書かれていることだけ」キムは立ち続けるのか、転ぶのか。次の脚本での彼女の生死さえも分からない。
しかし良いこともある。「どうストーリーが進むのか知らないから、一視聴者として楽しめてるわ。才能あふれる脚本チームがどのようにこのジグソーパズルをまとめてくれるのか、それが待ち遠しいの」レイはキムについて、これまで演じたどんな役よりも気に入っていると言う。やはり「ブレイキング・バッド」には登場しないと分かっているから、切ない分だけ愛おしいのか。それだからこそ、「パーフェクトな終焉を期待している。それがどうであれ」
いつの日か来るサヨナラに、レイは腹をくくってキムを演じている。
<「chicagotribune.com」 2020年2月23日>