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NUMBERS 天才数学者の事件ファイル」には華々しい経歴に恵まれたスターが数多く出演している。 主役の天才数学者チャーリー・エプスを演じるのは、映画『Ray/レイ』や『ヘイル、シーザー!』など、印象に残る役を得意とするデビッド・クラムホルツ。その兄でFBI特別捜査官のドン・エプスを演じているのはロブ・モロー。ロブはTVドラマシリーズ「たどりつけばアラスカ」に28歳の若さで主演抜擢されたことでも有名だ。現在も「サバイバー: 宿命の大統領」などTVを中心に活躍している。
主演の二人を差し置いて、最も華やかなショービジネスの経歴を築いているのはエプス兄弟の父親アラン・エプスを演じているジャド・ハーシュだろう。もともと理系出身で、俳優を目指したのは24歳と遅咲きのスタート。自分はちょっと変わっていると自覚したのがきっかけだと、ジャドは米誌に語っている。才能に恵まれていたらしく、ジャドは舞台にのめり込んだという。 「舞台が好きになれなかったら、俳優は続けていなかった。演技の本質は舞台にこそあると考えているんだ」
舞台人として脂の乗り切っていた40歳の頃、ジャドの俳優人生を一変させる出来事があった。 ジャドをTVスターへと押し上げるコメディシリーズ「Taxi(原題)」との出会いだ。それは苦々しいものだった。ジャドが出演する有名劇作家ニール・サイモンの舞台「第2章」初日のこと。 「重々しい雰囲気だった。ニールの奥さんが亡くなったばかりの夜でね」と記憶をたどる。 「それなのに最前列に座った男が、芝居中、バカ笑いをするのさ。あいつはきっと僕のことを憎んでいて、舞台をめちゃくちゃにしに来たと思ったね」 ところがその男こそ、かの有名な映画監督でありプロデューサーのジェームズ・L・ブルックス。なんとブルックスは自身が新しく手掛けるTVコメディ「Taxi(原題)」主演の座をジャドにオファーしたのだ。
当初TVに興味がなく(続いても2年だろう)と役を引き受けたジャド。ところが「Taxi(原題)」は5シーズン続き、ジャドに2度のエミー賞主演男優賞をもたらした。 この好演がきっかけで映画『普通の人々』にキャストされ、アカデミー賞助演男優賞にもノミネートされている。 舞台、TV、映画と出る場所を問わない実力者は、以降も『インデペンデンス・デイ』『ビューティフル・マインド』などに出演、恵まれた俳優人生を送っている。87歳になる今も現役だ。
「飛行機から飛び降りるのは無理かもしれないけれど、まだやれることはたくさんあるさ。(俳優を)辞めるつもりはない。これからもずっと頑張るよ」とジャド。 2022年も映画にTVと出演作が続いている。もしかして世界一忙しい87歳の俳優かもしれない。その数字はこれからも更新することだろう。
<「etonline.com」 2018年11月23日>