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NUMBERS 天才数学者の事件ファイル」でFBI特別捜査官のドン・エプスを演じるロブ・モローが、大好きな音楽について語っている。 20代で主演した「たどりつけばアラスカ」が大ヒット、アカデミー賞ノミネート映画『クイズ・ショウ』にも出演するなど俳優としてのキャリアに恵まれたロブ。その優れた演技の才能は、ロブの大好きな音楽によって育まれたものかもしれない。
「音楽は常に僕の人生の一部だったよ。最初に触れたのは5,6歳の頃、ドラムをたたき始めたんだ」
一説では才能が体になじむのは幼少期までと言われる。ロブがリズム感を体得したのも、ドラムのおかげだったに違いない。「意識をしたことはなかったけれど、それ以降、音楽が僕の行動の核になっている。演技をすること、脚本を書くこと、演出をすること、全てはリズム感に帰結している。リズム感は基礎の部分にあたるんじゃないかな。僕にとって音楽は本当に大切なものなんだ」
青年期になり、ロブはギターを始めた。歌うことが好きで弾き語りがしたかったのがその理由だが、“暇つぶし”の意味もあった。「俳優というものは、たとえ成功していても時間を持て余す仕事なんだ。だから僕にはアルコール依存症になるか、クリエイティブな趣味を持つか、どちらかの選択があったのさ」幸いにもロブが選んだのは後者。「どこに行くにもギターを持ち歩くようになった。ロケ先のトレーラーにも持ち込んだ。皆を集めて、僕がギターを弾いて歌を歌ったり」 身についたリズム感は、ギターという楽器を学んだことで形になりつつあった。そして打ち切りになったあるTVシリーズが全てを変えた。
「『ジャッジメント〜NY法廷ファイル〜』というTVシリーズに主演していた時さ。モーラ・ティアニーとの共演で、2010年の作品だったよ。これが上手くいかなくてね。たしか、撮影したエピソードのうち6話分しか放送されなかったはずだ。何が悪かったのかさっぱり分からなかったけれどね」 当時、『ジャッジメント〜NY法廷ファイル〜』の番宣用に5分程度の放送時間があてがわれたことがあったとか。いつもギターを抱えていたロブに、番組の広報担当は「曲を作れば?」と軽くアドバイスしたという。 「僕は『わかった』と答えたものの、曲なんか書いたことなかったんだ。それでも2時間以内に作れと言われていたから、僕はなんとかブルース調のメロディをひねり出し、番組にふさわしい歌詞もつけた。うまくいったと思ったよ」
処女作にしては完璧な出来に思えたが、カメラの前で自作の曲を演奏するのも、やっぱり初めて。演奏は失敗した。NGを挽回する機会も与えられることなく、番組は打ち切りとなった。「それがきっかけとなって、10年くらい曲作りを修行する旅に出たのさ。書き始めたら、どんどん出てきた。でも出来はたいしたことなかった。音楽的にはつまらないものだったと思う」 曲作りは発展途上だったから、実際に演奏してみなければ、これ以上の成長はないと考えた。くじけることなく、ロブは演奏させてくれる場所を探し始めた。
「ベニスにある店で弾かせてもらったんだ。何年かはまるで自分の家みたいに通っていた。ステージの開演時間で一番早い午後7時から演奏していたんだけど、まだ客の入らない時間でね。バーテンダーが2,3人、暇そうにしていたよ」 ステージに立ち始めた頃は、自分が何をしているのか分からなくなるほど心地悪かったという。しかし、売れっ子俳優の捨て身の挑戦が、あるミュージシャンの興味を引いた。
「カルロス・カルボと友達になったんだ。そこが本当の意味で僕が曲を書き始めたスタート地点になった。彼は音楽に対する膨大な知識を持っていて、僕の曲を洗練させてくれた。そこから曲作りがすごく楽しくなったのさ」 カルボはマルーン5のアダム・レヴィーンに音楽指導も行う、ハリウッド音楽界の大物コーチ。彼との出会いがロブのアマチュア音楽を一気に進化させたのだ。
現在も俳優業を軸に置きながら、ロブは時折、バンドでステージに立ったり、CDを製作したり、音楽活動を楽しんでいる。 幼い頃に身に着けたリズム感は音楽活動を経てより高められた。俳優としても、ミュージシャンとしても、ロブ・モローは今が最高の時だ。
<「music.allaccess.com」 2018年9月25日>