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ベター・コール・ソウル」「ブレイキング・バッド」の好演で、今やハリウッドでも有数の実力派俳優として知られるボブ・オデンカーク。 1980年代から「サタデー・ナイト・ライブ」のコント作家として活躍、HBOのコメディショー「Mr. Show With Bob and David(原題)」などでカルトな人気を得ていたが、ボブが大衆にブレイクしたのは、「ブレイキング・バッド」に出演した2009年以降。実力派にしては遅すぎる開花だ。
実を言えば、ボブにはもう少し早くブレイクするチャンスがあった。誰もが知る超人気コメディシリーズに、あと一歩で主演だったというのだ。 その超人気コメディシリーズとは「ジ・オフィス」。英国発の同名コメディを、2005年に米国でリメイクしたもので、主役のマイケル・スコットを演じたコメディアン、スティーヴ・カレルは今や大スターだ。
そのマイケル・スコット役を巡り、オーディションで最後の2人に残ったのが、スティーヴとボブ。 米国版「ジ・オフィス」の主演にはマシュー・ブロデリックやウィリアム・H・メイシーら数々のスターの名前が上がっていた。プロデューサーの当初の本命はポール・ジアマッティか、フィリップ・シーモア・ホフマン。しかし、どちらも役をオファーしたものの振られてしまったという。 その後、マイケル・スコット役はオーディションを重ね候補を絞った。プロデューサーたちが求めていたのは、「典型的なアメリカ人」。それがスティーブとボブだったというわけだ。
二人の才能に甲乙はつけがたい。それでも当時のボブには時間に余裕があったから、誰よりもマイケル・スコット役を欲しがっていたという。 それでも「ボブはエッジが効きすぎていた。彼はスティーヴと同じくらい面白かったけれど、ちょっぴりダークだった」とプロデューサーが語るように、お茶の間には少々刺激が強かった。かくしてスティーブが米国版「ジ・オフィス」の主演に選ばれた。
ブレイクする千載一遇のチャンスを逃したボブだが、本物はいつか見つかってしまうものだ。米国版「ジ・オフィス」の悔し涙から4年後、「ブレイキング・バッド」で当たり役ソウル・グッドマンに出会えたのだ。 そして確実なのは、ボブが米国版「ジ・オフィス」に主演していたら、「ブレイキング・バッド」には出演してなかったに違いない。なにより、傑作シリーズ「ベター・コール・ソウル」も生まれていなかったはずなのだ。
<「uproxx.com」 2020年6月24日>