カナダ人俳優のディエゴ・クラテンホフは、TVシリーズの「
ブラックリスト」「HOMELAND」、映画『パシフィック・リム』など多数の作品に出演する人気者。精悍な顔立ちから生真面目なキャラクターを得意としている。しかし、売れっ子とはいえ脇で光るのがディエゴ。どんなに主役に近いキャラでも、なぜか真ん中に立つことはなかった。
そんなディエゴが「ブラックリスト」で主役になれたエピソードがある。シーズン7第17話「兄弟」だ。
「実はシーズン1とシーズン2の間くらいに、このエピソードの話を聞いたことがあったんだ」と当時を振り返るディエゴ。自身演じるFBI捜査官ドナルド・レスラーのバックストーリーを描く構想は何年も前から練られていたらしい。
「ジョンズ(製作総指揮の“ジョン”・ボーケンキャンプと“ジョン”・アイゼンドレイス)はレスラーに何が起こって、今の彼になってしまったのか。また家族のことやなんかを話してくれた」
誠実で頼りになるレスラーだが、人を寄せ付けず、どこかに影がある男だ。そんなレスラーを形作った、家族構成や過去とは何なのか? ジョンズはクリエーターの立場からレスラーのバックストーリーを考えていたのだ。
そしてシーズンは過ぎ去り、レスラーのエピソードに取り掛かっているらしい、そんな噂が流れているのをディエゴは耳にした。(ついに…)はやる気持ちを抑え、ディエゴはジョンズの元に出向き、一足早く詳細を知ることができたという。
「楽しい撮影だった」
実際にエピソードが撮影されたのはシーズン7。だから緊張や重圧よりも、喜びが勝ったらしい。最初の構想からはずいぶんと時が過ぎていたから、ディエゴ自身が作り上げていたレスラーもいた。
「シーズン1でレスラーを演じ始めた頃から、彼はどんな奴か僕なりに考えていた。ジョンズからレスラーのバックストーリーを聞いた時も、なるほどって腑に落ちたものさ」
レスラーが主役のエピソードは、そのタイトル「兄弟」からも推測できるとおり、兄が登場する。兄ロビーを演じるのは、アンソニー・マイケル・ホール。アンソニーは、1985年の映画『ブレックファスト・クラブ』で知られるかつてのアイドル俳優だ。大ベテランとの仕事はどんな気持ちだったのだろう?
「僕らはお互いプロだからね。もちろん僕は彼の仕事の大ファンだし、長年のキャリアを尊敬している。だけど、僕らは共にこの仕事のために準備万端で現場に赴き、陽が昇り、暮れるまで働いている。それこそが肝心なのさ」
同じ土俵に上がれば、キャリアも知名度も関係ない。このエピソードはオレが主役でもあるのだ。そして「ブラックリスト」主演のジェームズ・スペイダーと長年共演、レジェンドにひるまない自信もついている。
「(撮影は)短い期間だったけど、彼は素晴らしい人格で、本物のプロフェッショナルだった」と、アンソニーを敬うことも忘れなかったディエゴ。脇に置いておくだけじゃもったいない。この先、ディエゴが真ん中に立つ機会が増えても驚きはしないだろう。
<「parade.com」 2020年5月1日>