米では、現在シーズン15を放送中の「NCIS ネイビー犯罪捜査班」。2003年の放送開始以来、全世界で最も多くの視聴者を稼ぐドラマシリーズとして、安定した人気を誇るロングラン番組だ。
そんなロングラン番組につきものなのが、キャストの降板、そしてそれにともなう新キャストの加入だ。「NCIS ネイビー犯罪捜査班」でも、シーズン13でマイケル・ウェザリーが去り、今シーズン限りでポーリー・ペレットも降板することが発表された。これでシーズン1からレギュラーのオリジナルキャストはマーク・ハーモンとデヴィッド・マッカラムのみ。オリジナルキャストではないが、人気者だったコート・デ・パブロやサッシャ・アレクサンダーも数シーズンで番組を去った。
「NCIS ネイビー犯罪捜査班」のような人気番組から、なぜ出演者は降板してしまうのか?ヴァンス局長役でシーズン5から出演中のロッキー・キャロルが、俳優の視点から、その理由について語っている。
「番組を降板する俳優はそんなに多くないはずさ。たいていは俳優に選択肢なんて無い。番組が打ち切りになったら、それでおしまいだからね。番組が放送されているにもかかわらず降板するなんて、まれなことなんだよ。彼らになぜ降板するのかなんて聞いたりはしないけれど、僕らがアーティストである限り、常に成長したい、何か違うことをやってみたいと考えているものなんだ」
ロッキーは、俳優をミュージシャンに例えて説明している。
「たとえば、あるミュージシャンが最高に完成度の高いアルバムを作ったとして、しばらくの間はそのアルバムの曲を何年も繰り返し演奏し続けるかもしれない。だけど、どこかの段階で『新バンドを作ろう、新しい音楽がやりたい』って思うだろう」
俳優はミュージシャンと同じアーティスト。アートを追求する一員として、同じことを繰り返して生活を安定させるより、刺激を求めるということか。
「俳優はロングランの番組に出て、生活が安定させたいと願うものだ。その一方で、『ほかにやりたいことはないの?』『次は何をするの?』って心の声がいつも聞こえている。クリエイティブな仕事にありがちな悩みさ。経済的な安定を求めたり、視聴者のリクエストに応えることと、クリエイティブな欲望は一致しないからね」
親しんだ顔が去ってゆく寂しさもあれば、新しい顔がやってきて、番組に新しい風を吹かせてくれるのは、ファンにとっても嬉しいこと。シーズン14からはウィルマー・バルデラマ、今シーズンからマリア・ベロがそれぞれ新レギュラー入りしている。
「15シーズンもやってれば、考え着く限りのストーリーは語り尽くしたんじゃないかと思うだろう。新しいキャラクターを加える時こそ、そのキャラクターにふさわしいストーリーを、真っ白な状態から作り出すことができるんだ。新しいキャラクターが僕らにも新鮮なエネルギーと活力を与えてくれる。歓迎すべき変化だと、僕は思うんだよ」
変化を求め番組を去る者あれば、変化を起こしに番組に加わる者あり。TV界で、ほんの一握りだけの人気ドラマだけに許される変化を、ロッキーは快く受け止めている。
<「parade.com」 1月23日>