「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」に出演中のルーシー・リューは、女優としての活動以外に絵画や写真などヴィジュアルアートを発表するアーティストとしての顔も持ち合わせている。
そのルーシーが、先ごろ、NY市内のミドル・スクールを訪問、6年生たちにアートの楽しさを指導した。あるキャンペーンの一環としての訪問だが、その指導には自身の経験を反映したルーシーの願いが込められていた。
ルーシーの両親は、台湾からの移民だ。親になった大半の移民と同様に、ルーシーの両親も我が子の教育に力を入れていた。
「私の両親は外国の出身で、とても教育には熱心でした。ただし、その教育にはアートは含まれていなかったのです」
ルーシーが、初めてアートに触れたのは、通っていたNYの公立小学校での授業だった。
「私の人生が変わった瞬間でした。それまで算数と科学の勉強ばかりでしたから」
アートを学校で学ぶうち、それが自分のやりたかったことだと気づいたと、ルーシー。
「私はクリエイティブな生活がしたいんだと気づきました。学校でもアートに夢中で、卒業した後もまだアートを続けるつもりだと分かった時、両親はいい顔をしませんでした」
名門ミシガン大学アナーバー校を卒業後、ルーシーはアーティスト活動の一つだった、女優として生きてゆくことに決めた。渋い顔をしていた両親も、ルーシーの映画やTVの出演が増えるにつれ、その決心が間違いでなかったことを認めざるを得なかったはずだ。
今の自分があるのは、学校でのアート教育のおかげと信じているルーシーだが、そのアート教育に黄信号が灯っているという。2008年以降、米政府の教育に対する予算が削られ、全米の8割の学校でアート教育が縮小されているのだ。
危機に瀕しているアート教育を救いたい、そんな気持ちを抱いているルーシーは、ペプシコ社の高級飲料水ブランドLIFEWTRのキャンペーン#BringArtBackToSchoolに協力している。今回、セレブリティのルーシーが子どもたちに直接指導することで、アート教育に注目を集めようという狙いがあったのだ。
授業で生徒たちとコラージュ制作を指導したルーシーは、「子どもたちは抱えきれないほどのエネルギーを秘め、とても表現力豊かに制作を楽しんでくれました。同じ道具を使っても一人一人、完成品は全く違うのです。アートの授業は週に一回だけしかありません。子どもたちはもっとアートを学びたいと思っています、それこそがいかにアートが子どもたちから愛されているという証拠ではありませんか」と、熱く語っている。
そして、アーティストのルーシーからしてみれば、大人たちのアートへの引っ込み思案も残念だという。
「たくさんの大人が、『僕はクリエイティブじゃないから、私はアーティストじゃないもの』と言い訳するのを聞いてきました。そういう問題じゃないんです。アートはイマジネーションを使って自分自身を表現する、そのためのものなんです」
子どもにも大人にもアートの楽しさを知って欲しい。アートに救われた、ルーシーの心からの願いなのだ。
<「metro.us」 3月23日付け>