7月12日、今年のエミー賞のノミネートが発表されました。映画のアカデミー賞と違い、一般視聴者の好みとノミネートが一致しがちなのがエミー賞の良いところ。自分の見ていた作品が選ばれると嬉しいものです。
例年ノミネートが発表されると、米国のエンタメ誌が“Snubs and Surprises”なるものを発表します。日本語にすれば、「がっかり、びっくり」みたいな意味合い。意外な落選、意外な選出のことです。
今年のエミー賞の“Snubs and Surprises”は何だったのか、米エンタメ業界紙の「ヴァラエティ」と「ハリウッド・レポーター」から紹介してみます。
まずはドラマ部門から。最終シーズンの「ジ・アメリカンズ」が作品賞に2度目のノミネート。マシュー・リスとケリー・ラッセルも仲良く主演男優賞と主演女優賞に入りました。主要3部門での選出は立派ですが、評価の高かった助演賞や監督賞での落選が「がっかり」だと言われています。
新ドラマ「グッド・ドクター 名医の条件」は、昨シーズンのヒット作品の筆頭に数えられていますが、エミー賞には響きませんでした。主演フレディ・ハイモアは前作「ベイツ・モーテル」の時から、不思議とエミー賞には縁のない俳優でもあります。
もう一つの「がっかり」は、「レイ・ドノヴァン ザ・フィクサー」のリーヴ・シュレイバー。4年連続の主演男優賞ノミネートはなりませんでした。シーズン5はエモーショナルなシーズンだっただけに、いささか落胆の結果と言えそうです。
主演女優賞では、サンドラ・オーが初ノミネート。サンドラはすでに「グレイズ・アナトミー」で5年連続助演女優賞にノミネートされていますが、主演賞ではアジア系(韓国系カナダ人)として初の快挙となりました。非常に前評判が高かっただけに、「びっくり」ではなかったはずですが、いざ選ばれるとニュースになってしまうんですね。番組を引っ張るスターがアジア系女優、そしてその実力が認知されたことは、TV界にとって大きな一歩なのでしょう。
コメディ部門では、2010年以降、作品賞にノミネートされ続けてきた「モダン・ファミリー」が落選しました。助演男優賞の常連だったタイ・バーレルもノミネートならず。「アトランタ」や「マーベラス・ミセス・メイゼル」など新コメディの勢いに押されてしまった、新旧交代の年となりました。
そして主演女優ツイッター炎上からの番組打ち切りで話題となった「Roseanne (原題)」も、ノミネートは助演女優賞のローリー・メトカーフのみ。大ヒットを飛ばしたわりには肩透かしの結果です。うまく時代に寄り添えたから、あれほど多くの視聴者を集めたのですが、スキャンダルには勝てず。打ち切られていなかったら、どれほどのノミネートを集めていたのか、興味あるところでした。
「Roseanne (原題)」と同じリバイバル組の「ふたりは友達? ウィル&グレイス」 も、がっかりでした。こちらもノミネートされたのは、助演女優賞のメーガン・ムラーリー、そしてゲスト女優賞のモリー・シャノンだけ。前シーズンまでは、エミー賞の常連だっただけに、少し寂しいカムバックとなりました。LGBTがテーマの作品は当時としては画期的でしたが、リバイバルした現在、LGBTを取り巻く環境は大きく前進しています。
最後にリバイバル組で上々の結果となったのが、「ラリーのミッドライフ☆クライシス」 。もともとエミー賞には強い作品でしたが、6年ぶりの新シーズンで作品賞、主演男優賞を含む4部門のノミネート。主演のラリー・デイヴィッドを含むメインキャストは皆歳を取ったものの、エッジは衰えていなかったようです。
今回のエミー賞ノミネート発表を見て、この作品見てないなあなんて、ちょっぴり悔しい気持ちになる、真のTVファンならそう思って当然。だけどノミネート作品を網羅するのは、ここアメリカでも本当に難しいのです。TVで見るか、ネットで見るか。ネットワーク一択だったはるか昔からHBO、SHOWTIMEの有料ケーブル局の席巻、そして現在はネットフリックス、Hulu、アマゾン…。エミー賞がTV界の祭典とは、もはや定義できないのかもしれません。
今年のエミー賞授賞式は、9月17日(日本時間では9月18日)に開催されます。楽しみですね、ゆめ子も絶対見ます。TVで見るか、ネットで見るか、分かりませんけどネ!
【ロサンゼルス(米) TV愛好家 橋本ゆめ子 2018/07/16】