~10 年以上も続くシリーズでありながら、一つとして同じようなエピソードがないすごさ~
犯罪捜査ドラマの中でも、プロファイリングによって猟奇殺人鬼やシリアル・キラーの心理を読み解いて犯人像に迫るというスタイルを確立した『クリミナル・マインド』。これまでにもFBI 捜査官が活躍するドラマは多数あったが、行動分析課(BAU)に所属するプロファイラー・チームにスポットライトを当てたことで差別化。今や、海ドラファンの中では“クリマイ”と略して呼ぶほどの人気ぶりだ。
大ヒットした要因は、描かれる事件が多種多様なことだろう。全米を管轄とするBAU は事件が発生すると、大都会から地方の片田舎まで各地に飛ぶ。そのため、独自の慣習や歴史、自然環境なども関係し、実に事件は多岐にわたることから、10 年以上も続くシリーズなのに、一つとして同じようなエピソードがないのだ。しかも、プロデューサーの一人、エドワード・アレン・バーネロが元警察官ということから、実際に起きた事件をヒントにしていることも多い。
劇中でも稀代のシリアル・キラーたちの名前を引き合いにしながら、詳細なプロファイリングを行うシーンもある。日本でも、近年シリアル・キラー VS 刑事といった図式の犯罪捜査ドラマも増えているが、リアリティーという面では『クリミナル・マインド』には遠く及ばない。とくに、一番の見どころである猟奇的な犯行に走る者たちの心のダークサイドを炙り出していく過程がこの上なくスリリングなだけに、本格的なミステリーやサスペンス好きの心をつかんでいる。また、その一方で事件発生から犯人逮捕までを一話完結でテンポよく描いているので、犯罪捜査ドラマはややこしくて苦手という人でもわかりやすく、興味をそそられる。クリマイの魅力にハマったら、オープニングに流れるテーマソングだけで怖いもの見たさのスイッチが入ってしまうこと必至だ。
そして、毎回難事件に挑むBAU メンバーのキャラクターもバランスのいい美男美女が揃っている。FBI のエリート捜査官と言っても、リーダーのホッチナーはいつでもスーツ派のカタブツで、ご意見番的存在のロッシもいれば、マッチョ系のモーガンやIQ187 のオタク系のリードもいる。女性も元ハッカーでIT に強いガルシアに、BAU に勤めながら二児のママになったJJ など、みな個性的で人間味豊かだ。グロテスクな事件を追いながらも、そんな彼らの成長や人生の転機なども織り交ぜながら形作られているストーリーは秀逸。それだけに長年見続けていると、家族のような絆を深めていくメンバーたちが微笑ましく、自分までがその一員になったような気分に…と言ったら言い過ぎか。事件が起きるや、専用ジェット機で全米各地に飛んではシリアル・キラーに挑むBAU。そんな彼らと共に、正義の旅に参戦してみてはどうだろう。
【前田かおり 2018/7/26】