「ブラックリスト」は、米国での5月8日の放送で記念の第150話を迎えた。2013年からスタートした人気作は来シーズンへの更新も決め、今秋以降シーズン8に突入する。
クリエーターのジョン・ボーケンキャンプが、ここに至るまでの長い道のりについて米TV誌で語っている。
「ブラックリスト」の主演は「ザ・プラクティス」「ボストン・リーガル」のエミー賞俳優、ジェームズ・スペイダー。その知名度もあって、米NBCでスタートした時から注目を集めていた。「ブラックリスト」の成功で、自身も注目のクリエーターとなったボーケンキャンプだが、そのハリウッドでの経歴は驚くほどまっさらに近い。
経歴をたどれば、2000年に公開された監督・脚本作『Bad Seed』(原題)があるくらい。他はドキュメンタリーや短編作品を手掛けたのみ。ボーケンキャンプにとって「ブラックリスト」はハリウッドの第一線に躍り出る、数少ないチャンスだったのだ。
ボーケンキャンプにはTVの経験は無い。映画しか現場を知らず、「(映画の場合)完成したらプレミア上映会にかける。そこでは、皆が僕の背中をパチパチ叩いて“よくやった!”なんて褒めてくれる」と数少ない経験から成功を夢見ていた。
ボーケンキャンプにとって、とにかくパイロット版が採用されるのが目標。シリーズ化された後の苦労など知る由もない。ところがTV界の現実はパイロット版が認められて、放送が決まってからが本当の勝負の始まり。「パイロット版が採用されたら、なんてこった、二話目を作らなくちゃいけないんだ。これが毎週毎週続くんだなって気が遠くなったよ」
全ての創造力と労力を込めて完成されるパイロット版は最高のクオリティのはず。その第一話(パイロット版)を気に入った視聴者は、これからも同じクオリティが続くと信じて、二話目以降に期待する。
このTVシリーズ特有の難題を、ボーケンキャンプは、クラシック・シットコム「アイ・ラブ・ルーシー」の有名シーンにたとえ説明する。チョコレート工場でベルトコンベアの作業を任されたルーシーが、次々と流れてくるチョコレートの大群に辟易するというシーン。「初めはガチガチに緊張している。だから全体なんて見えていない。とにかく100だけ目指して頑張ろうと。次から次へとチョコレートが流れてくるなんて、ぞっとするよね」
とにもかくにも目指していた第100話を過ぎて、第150話も終えた。毎シーズン22話制作しなければならないという、チョコレートの大群よりももっと恐ろしいTV界のノルマを、ボーケンキャンプたちはクリアしていた。
コロナ禍の影響で、シーズン7はエピソード数の縮小を余儀なくされた。第151話「The Kazanjian Brothers」を最後に撮影は中止されている。見えない敵、ウィルスを相手に、予定されていたスケジュールは全て白紙になった。しかし、頭の中まで真っ白になったわけではない。今のボーケンキャンプはチョコレートの大群に怯えた過去の人物と同一ではないからだ。
スピードが不規則なベルトコンベアから悠々とチョコレートをつまみ上げるがごとく、次なる第152話へ。ボーケンキャンプは、新シーズンの大局を見すえつつ、次の一話に注力する。
<「tvguide.com」 5月8日>