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トワイライト・ゾーン」リブート版、第一話「コメディアン」主演に抜擢されたのは、パキスタン系米国人俳優のクメイル・ナンジアニ。脚本・主演を務めた『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(2017年)がアカデミー賞オリジナル脚本賞にノミネートされた注目の才能だ。
クメイルの起用は早くから決まっていたようだ。米誌のインタビューで、プロデューサーから役をオファーされたと自身が語っている。まだ脚本が完成する前のことだったが、概要を聞くや否やクメイルは二つ返事で承諾したのだとか。
「気に入った。即決だったね」とクメイル。「トワイライト・ゾーン」リブート版は、現在ハリウッドで最も売れている監督の一人、ジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』)の製作。その記念すべき第一話に声を掛けられる名誉、断る俳優はいないだろう。
しかし、完成した脚本を読み、即決したはずの心が揺らぎ始める。「僕が演じる主役の男がね、闇に落ちていくんだ。そんな役、やったことがなかったから……」 クメイルは同話で売れないコメディアン、サミールを演じる。憧れのコメディアンからもらったアドバイスで、大きく人生が変わってゆく。クメイルの言葉を借りれば、「闇に落ちる」のか。
大学でコンピューターサイエンスと哲学を学んだクメイルは、シットコムなどコメディ系の番組に出演する頭脳派コメディアン。サミール役はまさに適役のはずなのだ。それでも「正直言うと、脚本を読んで降板しようと思った。とにかくビビっちゃったんだ」
降板寸前のクメイルの心を変えたのも、やはりピールだった。「パーティーでジョーダン(・ピール)に会ったんだ。そこで彼に『僕がこの役に合っているか分からない』と弱音を吐いた。そしたら彼はこう言ったんだ、『それは違う、君じゃなきゃダメなんだ。君ならきっと上手くやれる』とね」
俳優にとって、ピールの言葉は何よりの後押しだったろう。クメイルはビビる心を奮い立たせ、撮影に臨んだ。2週間に渡る撮影は、クメイルがこれまで経験したどんな撮影よりも疲弊したという。「撮影はとてもエキサイティングだった。だけど、撮影が終わると一気に疲れてしまった。何をするエネルギーも無かったよ」
キャスティングしたプロデューサーによれば、優れたコメディアンは例外なく心の闇を抱えており、それが彼らに邪悪な演技を可能にさせるという。視聴者は、そのコメディアンの闇なる一面におののき、心がかき乱されてしまう。それが狙いだったのだ。クメイルの達者を見込んだ、大抜擢。次にビビるのが視聴者であるなら、狙いは的中だ。
<「vanityfair.com」 2019年4月1日>