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海外ドラマ最新レポート Vol.279  「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」のエル・ファニング、主演と製作総指揮を兼ねて得たモノとは?

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THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」で女帝エカチェリーナを演じるエル・ファニング。主演女優にはもう一つの顔があった。同作における製作総指揮としての顔である。製作総指揮とは英語で言うところのエグゼクティブ・プロデューサー。一般的にはプロデューサーを統括するような役割だ。同作ではエルやクリエーターのトニー・マクナマラを含め、10名前後が製作総指揮としてクレジットされている。
 
エル自身は主演映画『最高に素晴らしいこと』でプロデューサー業は経験済み。より一段とスケールアップしたドラマシリーズ「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」では、製作総指揮者として編集作業に参加している。「撮影したものが編集でどれだけ上手く生かされているか確認してるの」とエル。「役者として参加しているだけだったら、その日の撮影が終われば後は家に帰るだけ、役者の仕事は残ってないわ。ポストプロダクションで呼び出されることもあるけれど、特に自分の意思でどうなるわけでもない。今は(製作総指揮者として)日々撮影したものを見返しているし、幾通りかに編集したものを見比べることもある。編集でどう変わっていくのかを知るのはとても勉強になるわ」
 
どれだけ優れた脚本や演技があったとしても、編集で台無しになってしまうことも有りうる。エディター、監督、プロデューサーらが意見を出し合い、撮影したものを最大限有効に生かすよう切り貼りの編集作業を行うのだ。しかし、それぞれはアーティスト。しかもトップレベルのプロフェッショナル集団だ。各自の思いが譲れない。「(編集に付き合ううち)自分がエカチェリーナに似てきたと感じ始めているの。製作総指揮者として参加する限り、自分の考えを伝えなくちゃならない、それって凄く難しい。たとえ、自分の意見が他の人と正反対だとしても、向き合うことを恐れてはいけないから。正面衝突だって負けないわ。おかげで自分が強くなれた気がする」プロデューサー業が不慣れだからと言って遠慮していては失格だ。正面からぶつかり、時には懐柔しながら自分の意思を伝える。まさに貧乏貴族の娘から女帝へとのし上がったエカチェリーナを地で行く強さがなければ、やってはいられない。
 
とはいえ、エルの本業はやっぱり女優。こちらは長年のキャリアから相手との駆け引きはお手のもの。「ニコラス(・ホルト)との共演シーンが好きよ。(ニコラス演じる)ピョートルとエカチェリーナの関係ってとても複雑だもの。私たちが同意しているのは、二人が敵同士の物語にはしないということ。エカチェリーナは彼からたくさんのことを学んでいるし、時に魅惑されたり、憐みの気持ちを抱いたりもする。彼の方はだんだんエカチェリーナを好きになり始めているのだけど、エカチェリーナはその思いを逆手に取り、彼をうまく操ろうと考えている。ね、複雑でしょう」中でも二人のケンカのシーンがお気に入り。お互いがムキになる“ボタン”のありかを知っているのだとか。火をくべるのは簡単と笑う。「ちょっとやり過ぎたかしら、なんて思うこともあるし、彼も同じ様にやり返してくることもある。私たち、いいコンビだと思うわ」
 
エカチェリーナはエルのはまり役に違いない。製作総指揮としても学んでいる途中だ。「THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~」は、大女優の道をゆくエルにとって格好のショートカットであることは間違いないのだろう。
 
 
<「elle.com」   2020年5月24日>