ニュース

海外ドラマおすすめコラム vol.51  映画『女王陛下のお気に入り』の名脚本家による新たな傑作 『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』上陸!

The Great_yoko.jpg
2月のスーパー!ドラマTVの目玉はエル・ファニングとニコラス・ホルトが主演した独占日本初放送の『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』。
企画&メイン脚本家を務めたのは映画『女王陛下のお気に入り』で第91回アカデミー賞の脚本賞にノミネートされた1人、トニー・マクナマラ。
 
18世紀のイングランドでアン女王とその寵愛を奪い合う女性2人という3人を面白おかしく、だがスリリングに描いた『女王陛下のお気に入り』での筆致は本作でも冴えており、シーズン2の製作が決まったのも納得の面白さだ。時代は本作も18世紀で、ロシア領のある国からロシアの皇帝ピョートル3世(ホルト)に嫁いだエカチェリーナ2世(ファニング)がヒロイン。教養はあるが結婚や恋に行き過ぎた期待を持ったエカチェリーナは、ピョートルとその周囲の男尊女卑かつ野蛮な日常に面食らうが、なら“私がロシアを変えてやる”というモチベーションを高めだす。歴史的事実を題材にしつつフィクショナルな要素を足し、より面白くするという素質をマクナマラは本作でも発揮。
 
影響を受けたかどうか筆者は未確認だが、近年の米ドラマ界で屈指の話題作『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の歴史ドラマ版なのかという果敢な姿勢まで感じた。『女王陛下のお気に入り』と同様、秀逸なブラックユーモアをオブラートにしてくるみながら、エカチェリーナの悪戦苦闘に肉薄していく手つきは圧巻で、まだ若いのにこれらの役を引き受けたファニングとホルト(「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でドMの“ウォーボーイズ”役だったのが本作ではドSのピョートル役に)も最高だ。もう一言いうと、ピョートルもエカチェリーナもかなりおかしな人生だったようで、だからこそマクナマラは料理可能と判断したのか、2人の人生を知らないほうが本作は楽しめるかも。
 
スキャンダラスな上フィクション度も高いが、破格の面白さにみちた傑作である。
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2021/2/1】
 
池田敏:海外ドラマ評論家。海外ドラマのビギナーからマニアまで楽しめる初の新書「『今』こそ見るべき海外ドラマ」 (星海社新書) 発売中。