ニュース

海外ドラマおすすめコラム vol.52  全米で若者が支持したミュージカルコメディ 「ゾーイの超イケてるプレイリスト」が上陸

ZOEY_yoko.jpg
3月のスーパー!ドラマTVの目玉は、独占日本初放送の「ゾーイの超イケてるプレイリスト」。
 
筆者がスタッフで気になった名前はポール・フェイグ。『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』、2016年版『ゴーストバスターズ』などのヒット映画の監督で、以前ご紹介したドラマ「LOVE LIFE」の製作総指揮の1人だが、オリジナル版は男性だけだったバスターズを女性だけに変えた『ゴーストバスターズ』が象徴するように、女性中心の群像劇をコミカルに描く名手だ。そして『ゾーイの超イケてるプレイリスト』も、ゾーイ(2013年版『死霊のはらわた』や『ドント・ブリーズ』のジェーン・レヴィ)をヒロインにしたコメディ。
 
ゾーイは突然、周囲の人が歌ったり踊り始めたりして驚く。彼女は他人の心の声を音楽&ダンスの形で感じる不思議な能力を得ていた。やはり音楽を重視した「glee/グリー」が好きなら本作もきっと気に入るはず。ゾーイの両親役を演じる「The OC」のピーター・ギャラガーや映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』のメアリー・スティーンバージェンが歌って踊れるのも新発見。あとミュージカル場面がカットをあまり割らない、いわゆる長回しが多いのも見ものだ。
 
さて本作は全米地上波TVのNBCネットワークで放送されているが、老舗チャンネルとあって筆者はこうした野心的企画との相性を当初は心配した。そして実際、リアルタイムの視聴率は今ひとつだったが、放送後の録画視聴やデジタル配信は好調で、本作のターゲットである若い視聴者層にしっかりとリーチしたとか。全米放送は1月からシーズン2に突入し、新たなヒット作となっている。日本ではTV番組の視聴率がネットで良くも悪くもいちいち騒がれがちだが、すでにリアルタイム視聴・録画視聴・動画配信の合計を重視するのが世界では標準になっており、「ゾーイの超イケてるプレイリスト」もそんな“未来のドラマ”なのである。
 
 
【アメリカTVライター 池田敏 2021/2/26】
 
池田敏:海外ドラマ評論家。海外ドラマのビギナーからマニアまで楽しめる初の新書「『今』こそ見るべき海外ドラマ」 (星海社新書) 発売中。