俳優が役を獲るためには、オーディションに参加し、監督やプロデューサーの前で自分をアピールしなければならない。キャリアのために避けて通れないオーディションには、どの俳優にとっても一つや二つ苦い思い出があるようで…。
「
ゾーイの超イケてるプレイリスト」で主役のゾーイ・クラークを演じるジェーン・レヴィ。 シットコム「Suburgatory(原題)」、映画『ドント・ブリーズ』など主演女優としてヒット作を抱える人気者も、忘れたくても忘れられないオーディションの失敗談があるという。
すでに『ドント・ブリーズ』に主演し、ハリウッドでも注目を浴びていた2016年か2017年頃。「ニューヨークでオーディションがあったの。私はホテルを取り、スーツケース一つでやって来たわけ。そこで(オーディションの直前になって)気が付いたのだけど、清潔な下着が足りなくなっていた。仕方なかったから、オーディションには下着を付けずに向かったのよ」
場数を踏んだ実力派らしい豪放磊落だ。下着、つまりパンツを履いてないくらいで演技に影響が出るほど、ジェーンはヤワなメンタルではないのだ。「TVドラマシリーズのオーディションだったわ。クールなリーバイスのヴィンテージジーンズを履いていたの。前をボタンで留めるタイプのものよ」 お洒落にキメた、後は役をキメるだけ。オーディション会場で、シリアスな演技に入り込もうとした、その瞬間。
「ジーンズの前が完全に開いているのに気が付いたのよ。私はその日、下着をつけてなかったのに!」
ズボンの前を開きっぱなしにしたことは誰しも経験済みだろう。しかし“ノーパン”となれば話は別。失敗を超えて、もはや倫理問題になりかねない。「そこで私は部屋を抜け出し、廊下に出て、前を閉めたの。その瞬間、一気に汗が出てきたわ。誰も見てなかったと思うけれど、どうだったかしら? もしかして私が役が欲しくて、そんなことしたって思われてなかったかしら…。一応お知らせしておくと、役は取れなかった」
その後、会場に戻ってオーディションを受けたことを誉めてあげたいくらい赤面な出来事である。せめて前が開きっぱなしかノーパンか、どちらか一方ならば、ドジな私で済んだ話であったのに。「私って、そんな簡単に動揺するタイプじゃないのよ。だけどあの時ばかりは頭が真っ白になった。まるでホラーよ。あたかも誰か近い人が亡くなったような衝撃と、これまで味わったことのないくらいの恥ずかしさが合体したような」
恥は抱え込むよりネタにしよう、ジェーンはそう考えたらしい。「この一件を私は自分が考えつく限り全ての人に話したわ。もう泣き笑いよ。それでなんとか立ち直れたの」。聞かされた相手は内心ドン引きだったかもしれないが、本人が良ければもうそれで良い。
この赤面オーディションは、ジェーンに大切な教訓を与えた。
「旅に出る時は余分の下着を忘れずに」
今じゃ笑い話、いや今もやっぱり恥ずかしいジェーンの思い出話である。
<「chicagotribune.com」 1月5日>