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刑事カーディナル」シリーズで主役のカーディナルのよき相棒、リズ・デローム刑事を演じるカリーヌ・ヴァナッス。カナダのフランス語圏であるケベック州出身の女優だ。「PAN AM/パンナム」や「リベンジ」ではフランス人役で出演していたので、カリーヌが英語とフランス語のバイリンガルであることを知っている海外ドラマファンは多いだろう。とはいえ、フランス語環境で育ったカリーヌにとって、英語は第二外国語のようなもの。英語での演技は何か違いがあるのだろうか?
「作品次第で演技が変わるのは当然。けれど言語そのものが同じような変化を与えるかと言えば、それは違うと思うわ」 刑事ドラマとラブコメでは演技方法も違うのは当たり前。そこに言語の違いはない。ただし「私はフランス語で育ち、英語を学んだのはずっと後だった。だからフランス語由来の言葉だと、ぴったり当てはまる英語が見つからなかったりするの。違いといえば、そこかしら」
「刑事カーディナル」シリーズをはじめ、これまで英語演技のカリーヌしか知らないファンからしてみれば意外な発言。「刑事カーディナル」シリーズでは、ネイティブであるフランス語版を本人が吹き替えている。「フランス語と英語で同じキャラクターを演じ分けるとしたら面白いでしょうね。たとえば『刑事カーディナル』のフランス語の吹き替えを私が担当したのだけど、まるで私じゃない別人のように聞こえるのよ。デロームのエネルギーが二つの言語でそれぞれ違うからなのね」
自分の声が英語とフランス語では同じに聞こえないとカリーヌ。英語では声が低くなりがち、一方のフランス語では早口になりやすいという。これは英語の持つ特性であったり、フランス語は自分の母国語であるという演技以外の理由だろう。「(英語でもフランス語でも)演技の意図は当然同じ。ただ一つ一つの単語が違うと、台詞に感情を込めるやり方が変わってしまうの。同じような台詞でも、気持ちの変化が同じじゃないんだと思う。気持ちの込め方が違うんでしょうね」
だから吹き替えの時は英語のデロームに影響されないように気をつけたという。そうでなければ、フランス語のデロームに余計な色をつけてしまうから。
「アプローチが違うだけ。台詞の最後には同じ意味を伝えている」 直訳にこだわっていては、意味を正確に伝えられないこともあるという意味だろうか。伝え方が少々違っても、最後にたどりつく感情が同じであれば良い。
英語とフランス語、二つの言語を行き来できる、カリーヌは数少ない女優の一人だ。「(フランス語を使って)ケベックで仕事をし、それ以外の(英語圏の)カナダでも仕事をする。そして時々は米国でも。いろいろな場所で仕事ができるのよ、それって素敵じゃない?」「刑事カーディナル」シリーズでは国際的な知名度も挙げたカリーヌ。これからは、ますます英語の仕事も舞い込んでくるに違いない。
<「beyondfashionmagazine.com」 2019年3月1日>