車が壊れにくくなった昨今の基準でもかなりの走行距離の車を、息子に結構な額で売りつける。甘やかさない母の姿勢は今の勤勉なシェマーを形作っている。シェマーは大学を卒業、有名なソープオペラ「The Young and the Restless」に出演、マルコム・ウィンター役で人気者に。「少しばかりお金が貯まるようになった。だからスポーツクーペの（フォード）サンダーバードを買うことにした。クールな車だと思ったんだ」 まだ20代前半、その車でハル・ベリーとデートしたのは青春の良き思い出。

 

そこから年月が過ぎ、2013年のインタビューでシェマーはある車について語っている。「映画の『アイアンマン』で（アウディの）R8を初めて見た。心を奪われたよ。CBSが給料を上げてくれたら、手に入れるつもりさ」 当時、シェマーが出演していたのが米CBS「クリミナル・マインド」。後に給料が上がったのだろう、購入したR8は今もシェマー自慢の愛車コレクションの一台だ。そしてスポーツカー好きなら誰もが憧れるのがフェラーリ。シェマーが所有するフェラーリ・F8トリブートは、2019年に発売したばかり、フェラーリ史上最速のエンジンを搭載するスーパーカーだ。そのライセンスプレートは“Hondo 2”。「S.W.A.T.」でシェマー演じるホンドーの名を記している。

 

車好きのシェマーはただ所有するだけでは収まらない。全ての愛車がカスタム済みだ。F8トリブートはカスタム代込みで一台なんと約46万ドル（約5200万円）だったとか。目の飛び出るような数字だが、決して浪費ではなかった、今のシェマーには。 「僕はただ皆に見せびらかすために身分不相応な車を買いたくなかった。僕自身、ある程度の成功をつかんだと実感したり、それなりの経験を積んでから手に入れるつもりだったんだ」

 

TVシリーズの主演。これほどの成功も経験もないだろう、その時が来た。「『S.W.A.T.』の話が来て、やっと成功をつかめたと思ったよ。懸命に働いたし、苦境にも負けなかった。母が生きていた時、カードをくれたことがあったんだ。それには“Leap and the net will appear”と書かれてあった。自信を持て、自分を信じろという意味さ。ハリウッドで僕がうまくやれるなんて誰も思ってなかっただろう。僕は一人で頑張り抜いた」 これが「クリミナル・マインド」に出演していた頃のシェマーなら、フェラーリは背伸びしなければ届かなかない車。それじゃ意味がない、シェマーは現実を直視できていた。

 

そして最近手に入れたばかりの新車がレズヴァニのSUVタンク。まるで装甲車のような作りで、これまでスポーツカーに夢中だったシェマーにしては、明らかに異質な一台だ。「僕がこの車を買うなんて以前では考えられなかったけれど、数か月前からクールなSUVもいいなと思い始めた。レズヴァニは『S.W.A.T.』にも登場しているからね。タンクは他のどれとも違うSUVなんだ」

 

史上最強の車とも言われるレズヴァニを手に入れたのは、歳を重ね、価値観が変わってきたせいもあるのだろうか。そうであれば今後のシェマーの愛車遍歴はますます変化に富んだ興味深いものになる。まるで人生そのものと言えば大げさか、次はどんな一台が加わるのだろう。

 

 

＜「hollywoodreporter.com」　 5月25日＞