このコラム、今回で第200回(始まってから16年と8カ月!)。今後もよろしくお願いします。さて12月のスーパー!ドラマTVの目玉は、CSベーシック初放送となる「
プロディガル・サン 殺人鬼の系譜」。
主人公のプロファイラー、マルコム(トム・ペイン)だが、父親マーティン(マイケル・シーン)はなんとシリアルキラー(連続殺人鬼)。毎回起きる凶悪事件の捜査にマルコムが挑む一話完結形式のクライムスリラーだが、型破りな父子を描く連続ドラマとしても楽しめる。マルコム自身、心に闇を抱えるからか、犯罪者の心理を読み解く才能の持ち主。そして彼もその妹エインズリー(ハルストン・セイジ)も、精神科病院に収監されているマーティンとよく会いたくなる。マーティンを溺愛する母親ジェシカ(ベラミー・ヤング)も謎めいていて、ダークなユーモアがふんだんなホームドラマのようでもある。
俳優にとっては演じるのが難しそうな世界観だが、キャスティングが冴えている。「ウォーキング・デッド」でジーザスを演じたペインは、長かったヒゲを本作では短くし、まなざしはよりシャープに。一方、マーティン役のシーンは、熱心な海外ドラマ好きなら「グッド・オーメンズ」の天使アジラフェルでファンになった人も多いだろう。もっともシーンは以前から実力派として活躍し、実在の司会者デイヴィッド・フロストを演じた映画「デービッド・フロスト」は特に素晴らしかった。ちなみにペインもシーンも英国出身。後輩ペインと先輩シーンだからこそ、本作の父子関係はより盛り上がる。また、マルコムのもう1人の父親のような警部補ギルを演じるのはルー・ダイアモンド・フィリップス。やはり1980年代から活躍するベテランだが、かつて映画で共演したキーファー・サザーランドと仲がよく、「24」シーズン1にゲスト出演した。独自のムードが漂う「プロディガル・サン~」だが、はまり役のキャスト陣が魅力を高めている。
【アメリカTVライター 池田敏 2021/12/1】
池田敏:海外ドラマ評論家。海外ドラマのビギナーからマニアまで楽しめる初の新書「『今』こそ見るべき海外ドラマ」 (星海社新書) 発売中。