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ブラックリスト」に出演中のハリー・レニックスは、イリノイ州シカゴ出身の俳優。地元の公立学校で数年間教鞭をとった後、俳優に転向という変わり種だ。
TVでの当たり役となった「ブラックリスト」のハロルド・クーパー役の他に「ドールハウス」「24 TWENTY FOUR」、映画『マトリックス』シリーズ、『スーパーマン』シリーズにも出演と、恵まれたキャリアを積んできたハリー。ハリウッドでの活動以外にも、黒人俳優で構成されるシカゴの演劇集団コンゴ・スクエア・シアターのアドバイザーを務めており、今も地元とのつながりは深い。
愛するシカゴを“黒人文化の故郷”と呼ぶハリーには夢がある。コンゴ・スクエア・シアターの本拠地となる劇場を建設することだ。1999年に設立された同シアターは、これまで積極的な演劇活動を続けてきたが、本拠地を持たないため、公演のたびに会場探しは難航した。米誌のインタビューを受けたハリーによれば、この問題は黒人のアート・演劇にとって珍しくないらしい。
「本拠地となる劇場を所有する黒人の演劇集団は数えるほどしかない。ショッキングではあるけれど、これが現実なんだ」 黒人演劇事情を知るにつけ、シカゴに本格的な劇場があれば、黒人のパフォーマーにとって、ハブ的な役割を果たせるのではないかと、ハリーは考えるようになったという。この夢を叶える第一歩となる吉報が、ハリーの元に届いた。イリノイ州知事が州の助成金2,600万ドル(33億円)をねん出することを認可したのだ。
新しい劇場は、コンゴ・スクエア・シアターの本拠地となるだけでなく、他の黒人パフォーマーにも広く門戸を開く。さらに黒人パフォーミングアートの歴史をたどる博物館も併設する予定だという。ハリーによれば、劇場建設の予算は8000万ドル(104億円)。夢の第一歩は踏み出せたが、実現にはもう一押しも二押しも必要だ。
一般に向けたキャンペーンに加え、篤志家の寄付にも期待しているという。寛大な寄付に対し、ハリーは「私たちは公の僕(しもべ)として責任を果たします。このプロジェクトは個人の利益追求ではありません。全世界に対して利益となりうるものなのです」と訴える。芸術を通して社会を豊かに、ハリーの夢のゴールはそこにある。
<「chicagotribune.com」 4月19日>