俳優のウィリアム・シャトナーは、2021年10月、Amazon.comの前CEOジェフ・ベゾス氏が設立したブルーオリジン社の宇宙船に搭乗、宇宙旅行に成功した。ウィリアムの代表作は「
宇宙大作戦/スタートレック」。U.S.S.エンタープライズ号船長、ジェームズ・T・カークを演じた、宇宙とは縁の深い人物だ。
しかし、実際に宇宙を経験した感想は決してポジティブなものではなかったと、発売したばかりの自著「Boldly Go: Reflections on a Life of Awe(原題)」(大胆に行こう:畏敬の念に満ちた人生の考察)及び英紙への寄稿で明かした。
宇宙旅行で感じたのは「人生で経験したことのない深い悲しみ」であり、宇宙船から宇宙を眺めたとき、ウィリアムの目には“死”が映ったのだという。「私が感じたのは、私たちの住んでいる小さなオアシス(地球)は巨大な死に囲まれているということです。宇宙は、探検すべき場所でも冒険すべき場所でもありませんでした。触れ合いを求めていた生物もいなかったのです。そこには想像を絶する深い闇があっただけです。それに対し、私たちの住む母なる地球はなんと温かいことでしょう」
つまり宇宙を経験したことで、ウィリアムは地球の素晴らしさを心より実感したというのだ。それなのに人間は地球の環境破壊を進める一方、闇のような宇宙に目を向ける愚行を冒していると。 「私は宇宙が最後の未開拓地であるという考えを広める役割を果たしてきました。けれど、宇宙を経験して、やっと地球こそが私たち人類のとどまるべき場所だと気づきました。それでもなお、私たちは容赦なく地球を破壊し、住み続けることを困難にしているのです」
90歳にして宇宙旅行の夢を叶えたウィリアム。宇宙と関わりの深い人生を歩んできたが、これからは違う。「私たちにとって唯一の家を守るため、これから自分にできることは何でもします」 かつてカーク船長が人々に宇宙へのロマンを煽り立てたように、今後はそのカリスマをもって環境保護に一役買うつもりだ。
<「futurism.com」 12月9日>