4月のスーパー!ドラマTVの目玉は「
グッド・ファイト シーズン5」の独占日本初放送開始だ。常盤貴子主演で日本版も作られた人気リーガルドラマ「グッド・ワイフ」のスピンオフであり続編でもある「グッド・ファイト」に、“シーズン5から見ても間に合うの?”と思う人もいるだろうが、番組自体が再スタートを切るような内容で、このシーズン5から見てみることをぜひお薦めしたい。
筆者は導入部をお先に拝見したが、第1話にまず仰天。邦題“これまでの話は…”は、米国の連続ドラマが日本で放送される際、冒頭に出る“前回までのあらすじ”を意味する英語の和訳だが、なんとまるまる一話を使い、シーズン4とシーズン5の間の展開を疾風怒涛の勢いでおさらいする。海外ドラマ視聴歴40年強の筆者だが、こんな米国ドラマは見たことがない。さらにシーズン4が全米放送された2020年はコロナ禍が始まった年で、このシーズンは計7エピソードしか作られず。そしてシーズン5第1話は、米国とレディック・ボーズマン・ロックハート事務所、両方の2020年をたった1話で、信じられないほどの密度で描写。これから見る人のために詳述はしないが、2020年の米国大統領選挙が米国にもたらした影響まで猛スピードで振り返り、かなり驚かされる。
そして第2話からは通常の「グッド・ファイト」に戻る。ルッカ(クーシュ・ジャンボ)とエイドリアン(デルロイ・リンドー)がいきなり去ってしまった感はいなめないが、「シカゴホープ」でジェフリー・ガイガー役を、「クリミナル・マインド」でギデオン役を演じ、その後の「HOMELAND/ホームランド」も好評だった演技派マンディ・パティンキンが、“疑似裁判所”(?)のワックナー判事の役を演じ、ほかにも新キャラ陣が加わるのも大きな見どころだ。
登場人物たちが人生の次章に踏み出す姿と、コロナ禍から復活をめざす世界が重なり、ここにしかないフィクションの面白さに満ちている。
【アメリカTVライター 池田敏 2023/3/31】
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。