今年3月、映画界が大きく揺れ動いた。ジョージャウ役のミシェル・ヨーが映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(『エブエブ』)での熱演を評価され、アカデミー賞の主演女優賞に輝いたのだ。男女問わず、アジア系が主演賞を受賞するのは史上初。ヨーは映画史に大きな足跡を残した。それにしても面白いのは、『エブエブ』でヨーが並行宇宙に何人もいるヒロインを一人で演じたこと。まさにジョーシャウの一人二役のようで、『エブエブ』のリハーサルになったかもしれない。
さてヨーも引き続いて出演するこのシーズン3だが、以前からお伝えしている通り、従来の「スタートレック」は一話完結形式が基本だったが、「~ディスカバリー」は連続ドラマ形式。シーズン3は最終話に向かって物語がぐんぐんと盛り上がるのがお楽しみだ。シーズン2の終盤、ワームホールに飛び込んだマイケル(ソネクア・マーティン=グリーン)とディスカバリーだが、着いたのは何と32世紀の3188年。マイケルは単身ある星に到着するが、彼女がディスカバリーの面々と再会できるかが見もの。この惑星のシーンは遠く北欧のアイスランドでロケ。「スタートレック」史上でも屈指かという素晴らしい風景が見られる。さらにディスカバリーの面々は32世紀より前に起きた衝撃的大事件を知るが、そのためにある犯罪組織と戦うことに。壮大な宇宙SFであると同時に、ノンストップアクションとしても秀逸なシーズンだ。
「スタートレック」というと他のシリーズとのつながりが重視されることが多いが、舞台が32世紀となってかなり自由なムードにリフレッシュ。シーズン1・2のアンコール放送もあるので、「スタートレック」初心者にはうってつけだ。引き続いて映像のクオリティも高く、第11話は第73回エミー賞で特別視覚効果賞に輝いた。
【アメリカTVライター 池田敏 2023/4/28】
池田敏:海外ドラマ評論家。映画誌「スクリーン」などに寄稿し、TV・ラジオで出演や監修をすることも。著書は「『今』こそ見るべき海外ドラマ」(星海社新書)など。