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海外ドラマ最新レポート Vol.647  「ベター・コール・ソウル」のレイ・シーホーン、初の監督エピソードを語る

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シーズンを重ねるTVシリーズにおいて、エピソード監督にチャレンジするレギュラー出演者は珍しくない。「ベター・コール・ソウル」も例外ではなく、レイ・シーホーンとジャンカルロ・エスポジートがメガホンを取っている。
特にレイは同シリーズ初の出演者兼監督であり、当人もメジャー作品初めてのメガホン。傑作シリーズを監督するいきさつについて、レイが米誌に明かしている。
 
もともと制作に興味のあったレイが初めて監督したのは短編作品『How Not to Buy a Couch(原題)』。当時「ベター・コール・ソウル」のADだったアンナ・ラミー・ボーデンと共同で監督した。
他のスタッフらも協力して作り上げた8分間の小品。レイは出来栄えには満足したが、心の中に秘めていた野望「ベター・コール・ソウル」を手がけるにふさわしいレベルではないと認めていた。
「(『ベター・コール・ソウル』クリエーターの)ヴィンス・ギリガン、ピーター・グールドにその話をするにも勇気が必要でした。というのも監督枠は通常埋まっているからです。『ブレイキング・バッド』からの監督もいれば、脚本を書いている人たちも順番を待っています。だから、とりあえず彼らに話だけしてみようと思いました。それで自分に何が必要か教えてもらえることもできると」
実際、ギリガンやグールドにとっても難しい選択だったに違いない。レイが短編作品を監督したのは、2017年。それから「ベター・コール・ソウル」のメガホンを任されるまで実に5年の年月が過ぎていたからだ。
 
ついに届いた「ベター・コール・ソウル」の監督オファー。しかしレイは飛び上がって喜んだわけではなかった。
「怖かったです。頭のどこかで『断りなさいよ、失敗するに決まってるじゃない』って声が聞こえてきました。けれど、小道具からメーキャップ、撮影、脚本までそれぞれ最高の才能と仕事をするのは恐ろしい一方、本物のプロと仕事をする絶好の機会にもなる。監督のイスを一つ空けてもらえたとしたら、これほどレベルの高いサポートを得る機会はないと思ったのです」
新人監督の自分がメガホンを取るなら、誰よりもプロ集団の手を借りることになるだろう。それでもレイだって演技のプロ、ビビる気持ちを抑え込んで監督業を引き受けたに違いない。
 
レイの監督としての初仕事は、ロケ地の下見だったとか。
「初めてロケ地に訪れた時、いろいろな部門から30人くらいのスタッフがメモ帳を片手に押し寄せてきました。自分の仕事を進めるのに必要なことを質問しに来たのです。私は自分の顔を真っ赤にしながら汗をかきかき、『どうしよう、こんなにたくさんのスタッフの質問に答えなくちゃならないなんて』とどんよりしたものです」
カメラの前に立って、俳優の演技を指導するだけが監督の仕事ではない。その前に、登場人物が運転するトラックはどこに停めるのか、カメラの邪魔をしないように昼食のケータリングはどこに置けばいいかなど、細々としたことまで全て監督の自分が指示を出さなければならなかったという。
 
自ら望んだことといえ、エンドレスに仕事が続く日々。そんな時、ギリガンとグールドのアドバイスが役だった。
「凄く大変で夜も眠れず、胃潰瘍になるかもしれない、と言われました。だけど、その中で少しでもいいから楽しみを見つけなさいと」
たくさんの努力と苦労、そしておそらくはちょっぴりの楽しみから成し遂げた「ベター・コール・ソウル」のエピソード監督。自身の才能に加え、たくさんのことを教えてくれたプロ集団のおかげで、レイは監督業にすっかりはまったらしい。
「ベター・コール・ソウル」後に主演したドラマシリーズ「Cooper's Bar(原題)」では、2シーズンで4エピソードもの監督を手がけているのだ。
 
「ベター・コール・ソウル」では女優として高い評価を受けたレイ。新しい視点を学んだこととで、さらにその演技力に磨きがかかることだろう。
 
 
<「hollywoodreporter.com」 2022年5月2日>